兵士不足に苦しむロシア、最大70歳まで従軍可能年齢の引き上げを検討

従軍可能年齢の上限引き上げを検討するロシア
現在の51歳から最大70歳まで大幅引き上げ
昨年動員された兵にも有効
ロシアの平均寿命を上回る
男性の平均寿命は62.4歳
作戦行動への影響もあり得る
実質的な終身契約
以前にも一度引き上げられている
5歳ずつ上限を引き上げ
死傷者数の増加が背景か
ウクライナの発表では、ロシアは40万人を失う
ロシアによる発表はない
アメリカの推計
侵攻前の全構成員の87%
イギリスの推計
およそ35万人の死傷者
従軍可能年齢の上限引き上げを検討するロシア

イギリス国防省のレポートによると、ロシアで新たな法律が提案され、将校及び下士官の年齢上限を引き上げることが検討されているという。このニュースの背景や今後の展望をチェックしてみよう。

現在の51歳から最大70歳まで大幅引き上げ

ロシアの徴兵規則が改訂され、年齢上限が下士官で65歳、将校で70歳にまで引き上げられる見込みだという。現在はすべての下士官の年齢上限が51歳であることを考えると、かなり大幅な引き上げだ。

昨年動員された兵にも有効

英国防省のレポートによると、今回の新法は今後徴兵される人々に適用されるのはもちろん、2023年6月以前に徴兵されたり契約を結んだりした人々も対象だという。多くの兵士の兵役期間が大幅に延長されることになる。

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ロシアの平均寿命を上回る

注目に値するのが、同省のレポートでも指摘されている通り、今回の年齢上限の引き上げの結果将校も下士官も上限がロシアの男性平均寿命を上回ることになる、という点だ。

男性の平均寿命は62.4歳

「WorldData.info」によると、2021年時点でのロシアの男性平均寿命は62.4歳だという。これほどの規模の上限引き上げはロシアにとってダメージとなるだろうというのが英国防省の見立てだ。

作戦行動への影響もあり得る

レポートではこう述べられている:「このような措置は確かに追加動員の必要性を弱めるだろうが、51歳以上の軍人の数を増やすことは、とりわけ高機動な攻撃作戦などにおいては作戦効率を高めるとは考えづらい」

実質的な終身契約

また、同省は契約軍人の年齢上限をこの年代まで引き上げるということは、実質的に「終身契約」と同等になるとも指摘している。しかも、ロシアが兵隊の年齢上限を引き上げるのは今回が最初ではないのだ。

以前にも一度引き上げられている

2023年7月、ロシア議会はすでに兵役義務を一度終えた人をもう一度動員する法律を可決。職種によっては最大55歳までの人物が再び徴兵されることになった。

5歳ずつ上限を引き上げ

今回の法律ではその上限が全職種で5歳ずつ引き上げられ、上級将校の場合は最大70歳、下級将校は60歳、下士官は55歳まで再び徴兵される。

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死傷者数の増加が背景か

このような措置が取られた背景には、ウクライナでの戦闘の激しさが高まっており、死傷者数も増え続けていることがあるだろう。

ウクライナの発表では、ロシアは40万人を失う

2024年2月16日、ウクライナ軍参謀本部はロシア軍が全面侵攻開始以来の2年間で40万人の兵を失っていると発表した。ただし、この数字はウクライナ側による発表である事には注意が必要だ。

ロシアによる発表はない

『ニューズウィーク』誌のエフゲニー・ククリチェフ記者はこう書いている:「ロシアは自軍の死傷者の数を公表しておらず、いつものことだがウクライナ側の発表についてもなにも述べていない」ただし、西側の専門家や各国政府はおおむね、2023年末時点でロシア側の死傷者数は30万人を下らないという見解で一致しているとも述べている。

アメリカの推計

2023年12月、アメリカ国防省のレポートが機密解除され、アメリカはロシア側の死傷者をおよそ31万5,000人と見積もっていることがあきらかとなった。『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じている。

侵攻前の全構成員の87%

機密解除された文書ではこう述べられている:「ウクライナでの戦争は、ロシアがここ15年間試みてきていた地上軍の近代化という目標を大幅に後退させた」さらに、ウクライナへの全面侵攻におけるロシア軍の死傷者数は侵攻前の全構成員の87%に達しているという。複数のメディアが報じている。

イギリスの推計

また、イギリスでも同様の推計がジェームズ・ヒーピー国軍担当閣外大臣によって明らかにされており、その数字は米国の出したものと非常に近いものだったという。『ニューズウィーク』誌が報じている。

およそ35万人の死傷者

ヒーピー閣外大臣はこう語っている:「全面侵攻の開始以来、ロシア軍ではおよそ35万人の死傷者が出ていると見積もっている」また、ロシアが兵士の上限年齢を引き上げようとしているのは死傷者数が多いことも理由のひとつだろうとも述べられている。

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