チェコが中心となってウクライナ向け砲弾を調達

砲弾入手の目途が立ったウクライナ
砲弾不足は切実な問題
アウディイウカ陥落
「多用途かつ高威力」
「M109 パラディン」の威力
心理的な効果も高い
砲弾不足に悩まされるウクライナ軍
BBC放送の指摘
支援強化に動いたチェコ
チェコ国防省副大臣のコメント
砲弾は「非欧米諸国にある」
直接支援に消極的な国々
13ヵ国が参加
3週間で資金調達
砲弾節約の必要がなくなったウクライナ
ロシア軍の進撃を阻止
ふたたび足止めされるロシア軍
砲弾入手の目途が立ったウクライナ

プーチン政権によるウクライナ侵攻が勃発してから2年あまり。この間、ウクライナの戦場でもっとも存在感を発揮してきたのは大砲だ。ドローンをはじめとする新兵器が登場する中、相変わらず猛威を振るっているのだ。

砲弾不足は切実な問題

『タイム』誌いわく、両軍の死傷者のうち砲撃によるものはおよそ80%を占めるそうだ。ウクライナはこのところ慢性的な砲弾不足に悩まされているが、大砲の有無が戦況を左右することから前線のウクライナ軍兵士たちにとって切実な問題となっていた。

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アウディイウカ陥落

実際、ウクライナ軍は今年2月に同国東部の街アウディイウカからの撤退を強いられたが、これは進軍するロシア軍に対して十分な砲撃を加えられなかったことが原因だと見られている。

「多用途かつ高威力」

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャック・ワトリング上級研究員は『タイム』誌の記事中で、「大砲は多用途で威力もあります」と指摘。同研究員はこの種の兵器の一例として、米国製の自走榴弾砲「M109 パラディン」を挙げている。

 

「M109 パラディン」の威力

「M109 パラディン」の射程距離はおよそ24キロメートル。わずか2~3分で戦場に展開し、敵の陣地に230キログラムもの爆薬を降らせることができる。要塞を攻撃したり、迫りくる敵の部隊を撃退したりする上で有効だ。

写真:Wiki Commons By АрміяInform, CC BY 4.0

心理的な効果も高い

ワトリング研究員いわく:「大砲は物理的なダメージを与えるだけではありません。兵士たちに心理的な恐怖を引き起すため、敵軍はこれに対処する作戦を立てなくてはならないのです」

 

砲弾不足に悩まされるウクライナ軍

しかし、メディア各社の報道によれば、ウクライナ軍は昨年12月以降、砲弾不足によって行動を制限されてしまっているようだ。BBC放送はこれについて、ウクライナ軍に深刻な影響を与えかねないと懸念を示している。

BBC放送の指摘

BBC放送によれば、「砲弾がなければ、ウクライナは領土奪還を諦めざるを得ないばかりか、ロシア軍の攻撃を押しとどめることができず、最終的に敗戦に至ってしまう可能性もある」というのだ。

支援強化に動いたチェコ

しかし、ウクライナの望みが完全に断たれたわけではない。米国のバイデン政権がウクライナ支援法案の通過に手間取る中、欧州連合、とくにチェコが支援強化に乗り出したのだ。チェコ国防省のヤン・イレシュ副大臣は2月18日、ウクライナ向けの砲弾80万発を調達する目途が立ったと発表。

 

 

チェコ国防省副大臣のコメント

ニュースメディア「ポリティコ」のポール・マクラリー記者のX投稿によれば、ミュンヘン安全保障会議で講演したイレシュ副大臣は「膨大な数の既存の砲弾について、そのありかを突き止めました」と述べたそうだ。

砲弾は「非欧米諸国にある」

イレシュ副大臣いわく、これらの砲弾は「非欧米諸国にある」とされ、韓国や南アフリカ、トルコといった国々から総額15億ドルで購入できる見込みだという。そして、チェコはその資金援助をするわけだ。

直接支援に消極的な国々

イレシュ副大臣は「これらの国々は多くの場合、政治的理由からウクライナに対する直接支援に消極的であり、仲介が必要になります」と説明。この案は欧米諸国から賛意をもって迎えられ、複数の国が資金援助に名乗りを上げることとなった。

13ヵ国が参加

『テレグラフ』紙によれば、真っ先に参加を表明したのはベルギー、カナダ、デンマーク、オランダ。さらに、13ヵ国がこの動きに続いたという。

3週間で資金調達

チェコはイレシュ副大臣の発言からわずか3週間で、砲弾の購入に必要な資金を調達。数週間以内にはウクライナに向けて砲弾の輸送が始まることになっており、少なくとも短期的にはウクライナを窮地から救うことになりそうだ。

 

砲弾節約の必要がなくなったウクライナ

『テレグラフ』紙の記事の中でデイヴィッド・アックス記者は、「数ヵ月分の砲弾が届けられることになり、ウクライナ軍の部隊は緊急事態に備えて砲弾を温存する必要がひとまずなくなりました。実際、3月初めにはウクライナ軍の砲兵部隊が大砲を発射しています」と説明。

ロシア軍の進撃を阻止

アックス記者によれば、ウクライナ軍はアウディイウカから8キロメートルの地点で退却をやめ、砲兵部隊による火力支援のもと反撃に転じて「ロシア軍の攻勢を途中で阻止」したという。

 

ふたたび足止めされるロシア軍

アックス氏いわく、「この冬から春にかけてウクライナ軍がドネツク州全体を失いかけた」のは砲弾不足が原因だそうだ。しかし、アウディイウカ陥落後にロシア軍がふたたび足止めを食らっているのは、ウクライナ軍に砲弾が届き始めたからだろう。

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