ロシアのデフォルト危機で一体何が起こる?
各国から課された経済制裁の影響でロシアが「デフォルト」を宣言する可能性は高まりつつある。『エコノミスト』誌はこれについて、IMF(国際通貨基金)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事が3月13日に述べた言葉を引用している:「ロシアのデフォルトは考えられないものではなくなった」
米国や欧州連合(EU)をはじめとする国々が実施している制裁パッケージには、厳しい経済封鎖やロシア政権エリート(プーチン大統領やセルゲイ・ラブロフ外相、政権に近いオリガルヒなど)を対象とした制裁に加え、いくつかの外交措置が含まれている。
経済分野に関する制裁で重要な項目は2つある。1つ目はロシアの7銀行およびベラルーシの3銀行をSWIFTシステムから排除する措置だ。
2つ目はロシア連邦中央銀行の資産凍結だ。これにより、中央銀行や外国の民間企業は保有する資産にアクセスすることができなくなる。
欧州連合理事会のウェブサイトによれば、「2022年2月、ロシアの外貨準備高は643億ドルに達した」という。
また、欧州連合理事会のウェブページによれば、EUや米国、カナダ、英国およびその他の同盟国が課した制裁措置により、ロシアは外貨準備に対するアクセスを失うこととなった。これはすなわち、ルーブルの為替レートを安定させるのが徐々に困難になることを意味する。
各国に課された資産凍結および戦争の継続に必要な莫大な軍事費によって、ロシアが直面することとなった経済危機はいまだ解消されていないようだ。4月はじめに何とかデフォルトを回避したかに見えたロシアだが、その恐れは再び高まっている。実際、ロイター通信は4月22日にロシアはデフォルト寸前だと報じた。
写真:Jon Tyson / Unsplash
プーチン大統領は債務不履行の恐れとルーブルの切り下げを避けるため、「敵対的」な国々に対し天然ガス代金をルーブル建てで払うよう求める法令に署名、4月1日に発効した。
ロシアのイタルタス通信によれば、プーチン大統領は天然ガスのルーブル払いこそ「ロシアの財政的主権への第一歩」だと主張しているという。しかし、ニュースサイト「Il Sole 24 Ore」によれば、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は「ロシアは天然ガスを利用して我々を恫喝しようとしている」と述べている。
この法令の影響を最初に受けたのはポーランドとブルガリアだ。両国がルーブルでの支払いを拒否したため、ロシアのガスプロムが天然ガスの供給を停止したのだ。
主要紙のアナリストたちによれば、天然ガスのルーブル払い強制は通貨価値の切り下げを防ぐ手段だという。
欧州中央銀行(ECB)が発表した為替レートによれば、ルーブルはとりわけ開戦直後に制裁の影響を大きく受けたことがわかる。ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2月24日 の相場では1ユーロ約96ルーブルだったが、3月1日には117ルーブルに達したのだ。
プーチン大統領の政策、とりわけロシア連邦中央銀行のエリヴィラ・ナビウリナ総裁が実施した措置が功を奏し、ルーブルの通貨価値は開戦前を上回っている。金利を20%に引き上げ、資産を国内で積み立てる金融政策は間違っていなかった。
しかし『フォーチュン』誌をはじめ、ロシア経済が危機を脱したという見方に懐疑的なメディアも多い。『フォーチュン』誌は「ルーブルには反映されていないかもしれないが、ロシアに対する西側の経済制裁は機能している」と強調している(2022年4月22日)。
ロシア連保中央銀行のナビウリナ総裁は、4月18日にロシア下院で行った演説で次のように発言している:「ロシアに対して課された制裁によって金融業界に影響が出ている。外貨の需要が高まったほか、金融資産の売却、銀行からの現金流出、商品需要の高まりなどが発生している。今後は金融市場だけでなく実体経済にも重大な影響が出はじめるだろう」デフォルトの恐れは再び高まっているのだ。
ロシア連邦中央銀行総裁の発言は、楽観的な発表を繰り返すクレムリンとは対照的だ。しかし、ナビウリナ総裁は演説の翌日、ロシアは対応手段を持っており、デフォルトに陥ることはないと述べた。
「デフォルト」とは、経済用語で企業や国家が債務を履行できなくなった状態を指す。
デフォルトに陥るのは、支出額が収入額を上回り、債権者が求める支払期日までに債務を果たせなくなった場合などである。
国債発行の目的は公共政策や経済成長支援など様々だが、赤字の補填のために行われることも珍しくない。こういったものは「普通国債」と呼ばれている。
国家は民間・公的機関や銀行を通して、個人から他国まであらゆる相手と債務契約を結ぶことができる。
戦争や経済危機、過剰債務など様々な要因が積み重なることで国家はデフォルトに陥ってしまうのだ。
デフォルトに陥った場合、国家は債権者と交渉を行い、支払い条件(いわゆる「債務リストラ」)を整えることになる。
一方、デフォルトの影響は国内ではっきり表れることになる。デフォルトに陥った国家が債務を果たすには歳入を増やさなくてはならないため、税負担の大幅増加や公共支出の減少は避けられないのだ。
前例のない状況に陥ったように見えるロシアだが、デフォルト危機は何も珍しいことではない。実際、カーメン・M・ラインハートとケネス・S・ロゴフの共著『A Decade of Debt』によれば、デフォルトが起きた例は全世界でこれまでに200件を超えるという。
良く知られているデフォルトの例では、第一次世界大戦後のドイツ(ヴァイマル共和国)や2011年のアルゼンチン、2009年のギリシャなどが挙げられる。
しかし、ロシアが置かれている状況は前例とはかなり異なっている。通常の場合なら、国際市場へのアクセスが失われるのはデフォルトに陥ってからだが、ロシアはすでに追放されてしまっているのだ。しかし、とりわけ深刻な影響が出るのは、ロシアが外国の債権者に対し債務不履行を宣言した場合だろう。しかも、ロシア当局だけでなくロシア企業も同様の措置を取る可能性があるのだ。CNN放送によれば、JPモルガン・チェースはロシア政府の対外債務を昨年末時点で400億ドルと見積もっているという。
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