現在も存続している世界各国の王家とは
日本の天皇家はもちろん、イギリスやオランダの王族を含め、世界には44の君主が存続しています。有名な国からあまり知られていない国まで、固有の歴史をもつ君主制国家を見てゆきましょう。
すでに政治権力を振るうことはなくなりましたが、デンマーク王家は今も健在。1863年以来、リュクスボー家が王座についており、現女王マルグレーテ2世は1972年に即位しました。2022年1月14日に即位50周年を迎えた彼女はデンマーク史上2番目に長い在位期間を誇り、いまだに国民に愛されています。後継者はフレデリック皇太子。
ポリネシアに位置する島国、トンガ。3つの主要な島からなる王国で、13世紀までは無人でした。1845年に統一王国が成立したものの、すぐにイギリスの保護国化。その後、1970年に独立を果たしました。現在の主権者は2012年に即位したトゥポウ6世。前国王で兄のジョージ・トゥポウ5世は2008年に国王の統治権を首相に譲り、民主化の先鞭をつけたことで知られます。現国王トゥポウ6世には3人の子供がいます。
ペルシャ湾のサウジアラビア沖に浮かぶ島国、バーレーン。話題になることが少ないため、ご存じない方も多いかもしれません。ポルトガルによる植民地化を経験したのち、アール・ハリファ家が再征服。19世紀にはイギリスの保護領になり、1971年に独立。立憲君主制に移行しました。主権者は2002年に従来の絶対王政から立憲君主制への移行をおこなったハマド国王です。
ヴァイキング時代に統一国家となったノルウェー。初代国王は、900年頃この地を治め、「美髪王」の異名をとったハーラル1世であるとされています。現在の王家はデンマーク王室と同じグリュックスブルク家。主権者は1991年に即位したハーラル5世です。実質的には議員内閣制をとっており、国王は儀礼的な存在です。一般市民のソニア・ハーラルセンと結婚、子供はマッタ・ルイーセ王女とホーコン・マグナス皇太子の2人。
フランスとスペインの間に横たわるピレネー山脈に位置するアンドラは、2人の主権者が共同統治するという独特なシステムを持っています。その2人とはスペインのウルジェイ司教とフランスの大統領であり、憲法の規定によれば両者の統治権は完全に同等であるとされています。この不思議なシステムは、その昔、ウルジェイ司教と南フランスのフォワ伯がアンドラの支配権をめぐってたびたび衝突した結果、1278年にパラギウム(共同統治に関する合意)が結ばれたことで生まれました。
フランス領西インド諸島にほど近い群島で、アンティグア島とバーブーダ島を中心に成り立っています。1981年に完全な独立を果たしましたが、イギリス連邦に留まったため国家元首は英国女王であり、現地には総督が女王代理として派遣されています。ただし、行政権は現地政府の首相が握っています。
中国とインドの間、ヒマラヤ山中に位置するブータン。1949年にインドから分離独立。現在の主権者は2006年12月に28歳で即位したジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王。現国王は近代化と開放政策の象徴であり10歳年下の一般市民、ジェツン・ペマ・ワンチュクを王妃に迎えました。
ボルネオ島のマレーシア領に囲まれた飛び地、ブルネイ・ダルサラーム。イギリス連邦に加盟する国家としては珍しく、独立した君主を擁します。ブルネイ王家には1000年以上の歴史がありますが、イスラム教に改宗した16世紀以来、スルタンがこの地を治めています。スルタンが国家元首と宗教指導者を兼任するという保守的な統治スタイルを維持しています。
ポルポト政権による圧政とベトナム軍侵攻の後、王政が復活したカンボジア。20世紀半ばにカンボジア王を務めたノロドム・シハヌークが1993年に再即位。2004年に彼が退位すると、ポール・モニク・イッジ妃との子、ノロドム・シハモニが王位を継承しました。舞踊家の彼はカンボジアのユネスコ親善大使を務めるかたわら、パリで長年、古典舞踊を教えていました。
南アフリカとモザンビークの間に位置する小国、エスワティニ(旧名スワジランド)。1968年にイギリスから独立。1986年に即位したムスワティ3世がアフリカ大陸最後の絶対君主として君臨しています。独立50周年にあたる2018年に国名を旧来のスワジランドからエスワティニに変更しましたが、これは旧国名が植民地時代の呼び名のままだったためです。
立憲君主制をとるヨルダン。1999年の即位以来、アブドゥッラー2世が主権を握っています。前国王フセイン1世が、亡くなる直前に次期国王に彼を指名しました。アブドゥッラー2世にはフセイン皇太子をはじめ4人の子供がいるほか、妻のラーニア王妃も良く知られています。
産油国として重きをなすクウェート。政体は首長国で議会も存在しますが、重要なポストは王室メンバーが独占しています。しかし、自由選挙が行われる数少ない湾岸諸国であり、2005年からは女性にも選挙権が認められることになりました。2020年に就任したナワーフ新首長には、5人の子供と20人以上の孫がいます。
エスワティニにほど近いレソト。四方を南アフリカに取り囲まれており、国名は多数派民族「ソト族」に由来します。立憲君主制をとっており、1996年以来、レツィエ3世が王位にありますが、王の役目は多分に儀式的なものです。2000年にはマセナテ・モハト・セーイッソと結婚。国王夫婦には2人の娘と王位継承者のレロソリ王子がいます。
スイスとオーストリアの間に位置する小さな山国、リヒテンシュタイン。ドイツ語圏では最も裕福な国家です。 1989年に即位したハンス・アダム2世が第15代リヒテンシュタイン公を務めています。妻のマリー・キンスキー・フォン・ヴヒニッツ・ウント・テッタウ(2021年に逝去)との間には4人の子供(アロイス、マクシミリアン、コンスタンティン、タチアナ)がいます。2004年に摂政に就任した長男、アロイスが次期リヒテンシュタイン公として公務を指揮しています。
君主制と言えば世襲が多い中、風変わりなのがマレーシアです。「ヤン・ディ=ペルトゥアン・アゴン」と呼ばれるマレーシア国王は、各州のスルタン(君主)による互選で選ばれるのです。実際には、各州のスルタンが5年ごとに輪番で即位することになっています。現在の国王は、前国王ムハンマド5世の跡を継ぎ2019年に即位したアブドラ・スルタン・アフマド・シャーです。
長い間イギリスの支配下にあったオマーンは、1970年に父王をクーデターで追い落としたカーブース・ビン・サイード王が半世紀統治を続けていました。しかし、2020年に彼がこの世を去ると、いとこのハイサム・ビン・ターリクが65歳でスルタン位を継承。憲法も改正され、スルタンの長男が後継者になることが定められました。妻のアハド・ビント・アブドラ・ビン・ハマド・アル・サイードとの間に2人の息子がいます。
南太平洋に浮かぶサモア諸島。1962年に独立を果たしました。英国の立憲君主制をもとにした憲法に則り、伝統的な首長たちが統治にあたっています。1963年から2007年に亡くなるまで、マリエトア・タヌマフィリ2世が国家元首の座にありましたが、現在は弁護士で首長の一人でもあるトゥイマレアリッイファノ・ヴァアレトア・スアラウヴィ2世が新たな選挙制度に基づく5年間の任期を任されています。