混迷を極めるミャンマー情勢:反政府同盟が台頭、軍事独裁政権は兵役実施で対抗
非常事態宣言の延長を繰り返して政権を維持してきたミャンマーの軍部がいま、窮地に陥っている。2023年6月、同政権は中国の支援を受けた武装勢力と和平交渉の場を持ったがたちまち決裂、国内の混乱は深まる一方となっている。
現在の軍事政権は2021年にクーデターで政権を奪取、指導者だったアウン・サン・スー・チーを拘束した。だが、国内の反軍政派勢力の対処には苦労しており、全土を掌握できずにいる。
民主的な統治を望む人々は当然現在の軍事政権に抗議しているが、反軍政派勢力はそれだけではなく、国内の少数民族から構成される武装勢力も存在する。その代表が同胞同盟だ。
BBCによると、同胞同盟を結成しているのは「ミャンマー民族民主同盟軍」「タアン民族解放軍」「アラカン軍」の3つの武装勢力だ。
この同胞同盟が2023年10月に「1027作戦」を開始、ミャンマー北部の中国国境に近い地域で一斉に攻勢に出た。
その作戦で同胞同盟は予期されていなかったほどの戦果を挙げて大きく支配地域を広げ、ミャンマーの首都ネピドーが存在するマンダレー地方域から中国へとつながる主要道路などを掌握した。人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のフィル・ロバートソンが独放送局ドイチェ・ヴェレに語っている。
Image: alschim / Unsplash
香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、「1027作戦」で同胞同盟はミャンマー北部の数十の集落を掌握、中国国境付近の軍事基地も多く手中に収めたという。
こういった事態を受けて軍事政権は強硬な手段に出たと見られており、人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は国軍による過剰な報復が行われていないか慎重な調査が必要だとしている。
しかも、他の地域に存在する同胞同盟以外の軍事勢力もこの動きに参加したり、少なくとも協調する姿勢を示したりしている。
軍事政権によって権力の座を追われた国民民主連盟の議員が設立した「国民統一政府」(NUG)に近しい民兵組織「国民防衛隊」もそういった動きを示した勢力のひとつだ。
国連のレポートによると、今回の武力衝突によって避難を余儀なくされた人の数は50万人以上にものぼるという。
窮地に立たされた軍事政権の最大の味方は中国だが、その中国もいよいよしびれを切らしつつあるという。ロイター通信が報じている。
中国の態度が硬化しつつある背景にはミャンマーを拠点とするインターネット詐欺集団の存在がある。ミャンマー北部の100以上の拠点に人身売買の被害者となった中国人などが収容されて無理やり詐欺行為に加担させられており、その数は2万人以上に及ぶとされる。
中国政府はこの問題について2023年9月に最後通牒を送っており、軍事政権がこの問題に対処しないならば中国が関与すると表明している。
カタールの放送局「アルジャジーラ」によると、中国の仲介によって軍事政権と同胞同盟の間に一時的休戦が持たれたという。
Image: alschim / Unsplash
それでも、いまだ全土で他の反軍政派勢力による武装蜂起は続いており、この休戦もいつまで保つかわからない。一方、メディア各社は軍事政権側が徴兵制を実施して戦力確保に動いたと伝えており、混乱が収まる気配はない。
Image: sebastiengoldberg / Unsplash