人工太陽の夢、実現なるか?:中国の核融合炉
「人工太陽」を生み出し、恒星が輝くメカニズムを再現することができれば、人類は無尽蔵のエネルギー源を手にすることになるでしょう。中国では何年も前からこのプロジェクトを推し進めてきましたが、ついに実験に成功したと伝えられています。
中国の「人工太陽」はExperimental Advanced Superconducting Tokamak、略してEASTと呼ばれる核融合炉で、太陽の温度を超えることができます。
新華社通信の発表および、『インデペンデント』紙や『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙が伝えたところによると、「人工太陽」EASTは摂氏7000万度を17分間維持することに成功したといいます。これは、太陽の温度の5倍に達したことを意味しています。
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現在、原子力発電に用いられているのは核分裂ですが、いよいよ核融合への移行が視野に入ってきました。ウィキペディアによれば、核融合とは「電荷の近い複数の原子核が融合し、より重い原子核を形成すること」であり「同時に、大量のエネルギーが放出または吸収される」といいます。これが太陽の仕組みであり、EASTはこれを再現しようとしているのです。
国際報道機関によると、中国はこの人工太陽に約10億ドルを投資したといいます。
太陽のメカニズムを再現できれば、人類は無尽蔵のクリーンエネルギーを手にすることになります。化石燃料およびその他の燃料が必要なくなるのです。さらに、核融合に賭ける科学者たちによれば、廃棄物も出ないといいます。
このプロジェクトを進めているのは中国だけではありません。中国がかなり先行しているのは事実ですが、韓国も同様の計画に取り組んでおり、ヨーロッパではITERと呼ばれる国家間プロジェクトが実施されています。
このプロジェクトを支持する人々によれば、核融合は核分裂と違って連鎖反応を引き起こさないため、爆発や放射能漏れの恐れがない、より安全な原子力だといいます。しかし……
しかし、この種のプロジェクトに懐疑的な科学者もいます。カナダのサスカチュワン大学の核物理学者、Chary Rangacharyulu博士はBBCのインタビューにこうコメントしました:「私はあまり期待していない」
前述の専門家のように核融合に批判的な人々は、いまのところ人工太陽は生み出すエネルギーより消費するエネルギーの方が大きいことを問題視しています。
もう一つの批判は、核融合によって生じたエネルギーを家庭で利用できる電力に変換する技術が確立されていないというものです。
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こういった批判にもかかわらず、中国は人工太陽の成功を確信し、研究を続けています。実際、プロジェクトが成功した場合、中国はエネルギーを他国に依存する必要がなくなるのです。
とはいえ、課題はたくさんあります。最も楽観的な予測では、2050年頃には人工太陽が地上を照らし、商用電源として一般に利用されるようになるだろうとしています。
最近、独自の核融合炉を持つ計画を打ち出したのが英国です。英国もまた、中国のような人口太陽を建設するために候補地を探し始めたのです。
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経済情報サイト『ブルームバーグ』によると、投資家たちは核融合に手ごたえを感じており、2020年には関連の民間企業に3億ドルもの投資をしたとのことです。
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数年前まで夢物語として映画やSFのテーマでしかなかった人口太陽ですが、近い将来、実現することになるかもしれません。世界各国が自前の太陽を持つようになるかもしれないのです。