ロシアの新兵器「ポセイドン」は窮地に立たされたプーチン大統領の切り札となるか?
ロシアの国有通信社「RIAノーボスチ(ロシアの今日)」の6月23日の報道によると、ロシア政府は核魚雷「ポセイドン」の実験を成功裡に終えたという。これはウクライナでの戦争の趨勢を決めるかもしれないとしてロシア政府も期待する「最終兵器」だ。
この兵器のことを公表したのもプーチン大統領その人だ。2018年に、既存のあらゆる艦艇や潜水艦を凌駕する速度の無人潜水兵器を開発中だと述べている。
ロシア軍はその後複数の核魚雷「ポセイドン」を製造、それらは原子力潜水艦「ベルゴロド」に搭載予定だという。今年1月にロシア国営タス通信が報じた。
「ポセイドン」ははいまだかつてない規模の兵器だ。『Popular Mechanics』誌によると、搭載している核弾頭は広島型原爆の100倍近い威力があるという。
仮にこのようなものが水中で爆発したら、巨大な放射性の津波を引き起こすことができる。
写真:Todd Turner / Unsplash
それだけではない。この魚雷は非常に遠距離から攻撃可能なため、西ヨーロッパや北アメリカを含む、広範な沿岸地域が脅威にさらされることになる。
『Popular Mechanics』誌によると、「ポセイドン」は長さ約20m、幅約2mとサイズも最大級だ。しかも、水中では自律走行しいわばドローンのように振る舞うのだという。
「ポセイドン」魚雷はそれぞれに原子炉が搭載されており、ほぼ無尽蔵の動力が供給されるのだという。ロイター通信がロシア国営タス通信をもとに報じている。
これはすなわち、「ポセイドン」は原理的にはロシア国内の海軍基地から世界中のどこへでも発射可能だということになる。
ロイター通信によると、ロシア国内からアメリカ沿岸地域に向けて発射可能なミサイルという構想はスターリン時代のソ連にまで遡るという。
『Popular Mechanics』誌によると、「ポセイドン」魚雷の開発は2015年から始まっていたという。そして2018年のプーチン大統領による発表以降、大きな注目を集めてきた。
一方で、『ニューズウィーク』誌は同じくタス通信をソースに、「ポセイドン」魚雷発射専用の艦艇が2025年に太平洋艦隊に加入するとも報じている。
昨年から続くウクライナ侵攻が明らかな失敗となり、ロシアにとって頭痛の種なのは間違いない。政府としては、こういった新兵器が状況を打開することを願っているかもしれない。
侵攻前は圧倒的な権力をふるっていたプーチン大統領だが、いまでは国際社会からは爪弾きにされ、国内からも強い圧力にさらされている。傭兵組織ワグネルによる反乱劇はまさにそれを象徴するような出来事だった。
ウクライナでの戦争が泥沼に陥り出口が見えなくなってきたいま、プーチン大統領が戦争に勝って権威を保ち、ロシアにおける絶対的な権力者として再び君臨するためには奇跡が必要とされているようだ。
だが、いかな新兵器といえどももはや手遅れなのではないか、という観測が優勢なようだ。