汚職まみれのロシアの国防関連組織:国家親衛隊の少将が逮捕される
戦争研究所(ISW)によれば、ロシア当局は11月3日、ロシア国家親衛隊の兵站に関する副責任者、ミルザ・ミルザエフ少将(52)を収賄の容疑で逮捕したという。
ISWいわく、プーチン政権は国防関連組織の内部ではびこる汚職を撲滅しようと試みており、親衛隊の幹部であるミルザエフ少将の逮捕はその最新の例ということになる。
画像:X @Gerashchenko_en
『ニューズウィーク』誌によれば、この事件はロシアメディアやSNSアプリ「Telegram」を通じて大々的に報じられたという。同少将は防衛産業の請負業者から金品を巻き上げていたようだ。
同誌がTelegramチャンネル「Mash」の情報として報じたところによれば、ミルザエフ少将は軍事用プレハブ資材の企業に対し、政府との契約打ち切りをちらつかせて賄賂を要求していたとのこと。
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ミルザエフ少将はプレハブ業者が国防省との間で結んだ4億8,000万ルーブル(490万ドル)の契約を盾に取り、1億4,000万ルーブル(140万ドル)の賄賂を要求。
Telegramチャンネル「マッシュ」によれば、プレハブ業者は仲介者を通じてミルザエフ少将に賄賂を送金したが、当局はこの事実をキャッチし、今回の逮捕劇につながったそうだ。
ロシア国営RIAノーボスチ通信はミルザエフ少将がすでに訴追されていると報道。『ニューズウィーク』誌によれば、同氏は来年1月2日まで拘留されることになっているという。
匿名の情報提供者いわく、ミルザエフ少将の逮捕を受けてロシア国家親衛隊はさらなる逮捕者を出す可能性があり、親衛隊を率いるヴィクトル・ゾロトフ局長の失脚につながるかもしれない。
画像:Wiki Commons By Kremlin.ru, CC BY 4.0
しかし、最近、逮捕された国防関連組織の幹部はミルザエフ少将だけではない。実際、今年10月には、ロシア軍の通信部門責任者だったアレクサンドル・オグロブリン少将が汚職容疑で逮捕されたばかりだ。
『ニューズウィーク』誌によれば、オグロブリン少将は2022年2月にも横領罪で懲役4年6ヵ月の判決を受けたが、当時の上司だったヴァディム・シャマリン参謀副長の汚職事件について、検察側に立って証言を行ったため、身柄を釈放されていたという。
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ロシア紙『コメルサント』いわく:「シャマリン氏は電話機製造会社『Perm Telephone Plant Telta』から不正にキックバックを受け取り、オグロブリン少将と山分けしていた。しかし、オグロブリン少将はその事実を司法取引の中で明かすこととなった」
『ニューズウィーク』誌によれば、「シャマリン氏ばかりか、ウクライナ侵攻におけるロシア軍の司令官だったイワン・ポポフ少将や国防相の人事局長だったユーリー・クズネツォフ中将など、収賄容疑で逮捕される防衛相幹部が後を絶たない」とのこと。
実際、今年4月には、国防次官だったティムール・イワノフ氏が収賄の疑いで逮捕されている。同氏は当時、ウクライナから占領したマリウポリの再建を担当しており、禁固15年の刑を科される可能性もあるという。
プーチン政権がなぜ、今になって国防関連組織の幹部に対する引き締めを図っているのかという疑問については、軍事評論家たちの間でも議論が交わされている。
たとえば、英国防省は「オグロブリン氏に対する2度目の逮捕によって明らかになったのは、いくつかの事件で有罪判決が出された後も、ロシア当局はショイグ元国防相の時代に任命された幹部や元幹部たちに対する汚職追及の手を緩めていないということだ」としている。
同国防省はさらに、「ロシア当局の目標が汚職の撲滅でないことはほぼ間違いない。なぜなら、汚職はプーチン政権が機能する上で欠かせないものだからだ。おそらく、国防部門に与える打撃を抑えつつ、汚職のレベルを管理可能なものへと引き下げようとしているのだろう」と指摘した。