プーチン大統領、ゼレンスキー大統領の正当性を疑問視
ロシアのプーチン大統領が、ウクライナのゼレンスキー大統領の任期は2024年5月に切れているはずだとして立場の正当性に疑義を呈している。和平交渉などにおけるゼレンスキー大統領の資格を揺さぶる狙いがあるようだ。
2022年のロシアによるウクライナ全面侵攻以来、当然ながら両国関係は冷え切っている。ウクライナでは戒厳令に基づいて選挙が停止されたこともあり、ロシアではウクライナの政権に対して疑問を投げかける議論も見られる。今後の趨勢に響いてくるかもしれない態度だ。
プーチン大統領いわく、ゼレンスキー大統領には立場の正当性がなく、和平交渉の相手としての資格もないのだという。プーチン大統領は「ゼレンスキー大統領にはなにも決める資格がない」と述べ、ウクライナ議会の代表なら交渉相手として認められ得るとの見解も示している。France24が報じている。
プーチン大統領は露国営放送のパヴェル・ザルビン記者にこう語ったという:「ゼレンスキー大統領が交渉相手となるなら、私は代理人を送る」『モスクワ・タイムズ』紙が報じた。
プーチン大統領はこうも続けている:「交渉の意思があり、妥協できるなら、誰が交渉を主導しても良い……当然、我々は我々の利益を追求し、我々の関心に応じて対応するが」
プーチン大統領が提示したゼレンスキー大統領の正当性への疑義は、今後の和平交渉において障害となる可能性がある。
一方、ゼレンスキー大統領はプーチン大統領による主張を一蹴。「プーチン大統領は交渉を恐れて」おり、「終わりなき戦争」の遂行を求めていると批難したという。スペインのEFE通信が伝えている。
同じくEFE通信によると、ゼレンスキー大統領はさらに「いまこそ真の平和が実現できるかもしれない」としつつ、プーチン大統領を次のように批判した:「自身の持つ権力を最大限用いて、大量殺害行為を継続しようとしている。停戦に傾いたとしても、それはさらなる大規模侵攻に備える時間稼ぎに過ぎず、ハイブリッド戦は継続される」
そういった議論が行われている間にも、戦闘は続いている。1月28日夜にはロシアの対空戦力が、ロシア9地域でウクライナのドローン計130機を撃墜している。
ロシア国防省によると、ドローンの半数はクルスク州で撃墜されたという。ウクライナは昨年8月からロシアのクルスク州に越境攻撃をしかけており、いまでも一部を実効支配下に置いている。また、27機が隣接するブリヤンスク州で、11機がベラルーシ付近のスモレンスク州で撃墜されたという。EFE通信が伝えている。
地元当局によると、撃墜されたドローン1機が原因となってロシアの石油化学プラントで火災が発生したが、人的被害はなかったという。ブリヤンスク州のアレクサンドル・ボゴマズ知事は後に撃墜数を更新し、同州では計33機が撃墜されたと発表した。
プーチン大統領の主張では、ゼレンスキー大統領の任期は2024年5月に切れており、以降ゼレンスキー大統領の立場には法的正当性がないのだという。ウクライナ憲法には戒厳令下における大統領の任期延長について規定がなく、ゼレンスキー大統領をウクライナの代表とみなさない立場の裏付けとなっているとも述べている。
一方ウクライナ政府は、事態の特異性を考慮すればゼレンスキー大統領の任期延長は正当であるという立場を取っている。
プーチン大統領の主張はウクライナ憲法での規定に基づいている。だが、多くの専門家は戦時中という例外的状況を考慮すればゼレンスキー大統領の任期延長は正当化可能であり、ウクライナの代表として交渉にあたる資格についても疑問視されないとしている。
こういった齟齬はありながらも、宇露両国は対話の意思を表明してきている。だが、条件の面で折り合いがつかず、和平交渉が具体的なレベルまで進展することはなかった。
アメリカ合衆国は1月にトランプ大統領が職に就いて以来、停戦圧力を高め続けている。『モスクワ・タイムズ』紙によると、ゼレンスキー大統領には「ディール」への意思があるとして、ロシアには制裁強化をちらつかせながら交渉を促しているという。
同紙いわく、ウクライナは同国を除外して米ロ間だけで交渉が進むことを懸念しているという。また、プーチン大統領はトランプ大統領を「操って」自国に有利な条件を飲ませようとしているとも批難している。
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