ウクライナ軍、ヘルソン州とクリミアを繋ぐ橋を攻撃したと発表
ウクライナ軍が同国南部にある戦略上重要な橋を攻撃、成功したと発表した。この戦果は今回の反転攻勢の成功にとっても非常に重要なのだという。
ウクライナ軍戦略情報局がテレグラム上で行なった発表によると、同軍は7月29日にロシアが占領しているクリミア地域とヘルソン州を結ぶチョンガル橋を攻撃、成功したという。『The New Voices of Ukraine』が報じた。
軍公式の発表は次のようなショートメッセージだった:「2023年7月29日朝、ウクライナ軍がチョンガル橋を攻撃、成功した。ウクライナ軍に栄光あれ!」これ以上の詳細は明らかにされず、橋がどの程度破壊されたのかについても触れられなかった。
オンライン新聞『ウクライナ・プラウダ』によると、テレグラムチャンネル「クリミアの風」がロシアの観光客がテレグラム上で橋が損傷したせいで迂回する必要があったと述べていると報告しており、攻撃の成功が示唆されるという。
ウクライナ軍による攻撃や損傷の程度は第三者による検証はされていなかった。だが、ロシアが任命したヘルソン州知事ヴォロディーミル・サルドは、ウクライナ軍が7月29日に同地域の鉄道を破壊しようとした、と述べている。
また、『ウクライナ・プラウダ』紙の別の報道によれば、サルド知事はウクライナ軍が12発の「ストーム・シャドウ」ミサイルを発射、すべてロシアの防空システムにより撃墜されたが、破片のせいで防衛拠点や電線が損傷したと述べたという。
Photo Credit: Telegram @SALDO_VGA
ロシアの軍事ブロガーたちは今回の攻撃やサルド知事のコメントについて奇妙なほどの沈黙を守っている。アメリカを拠点とするシンクタンク「戦争研究所」の分析では、これはロシア政府からの指示の可能性があるという。
同シンクタンクが7月30日に発表した続報にはこうある:「6月22日にウクライナ軍がチョンガル橋を攻撃した際には、軍事ブロガーたちは広く怒りと懸念を表明していた」さらに、軍事ブロガーたちは通常ロシアの補給線への攻撃についてはその成否にかかわらずほとんど毎回コメントしているのだという。
同シンクタンクのアナリストはこうも述べている:「政府からの漠然とした圧力程度では、今回の攻撃ほどインパクトのある出来事がこれほど徹底的に無視されるはずはありません。地上の補給線に致命的な障害が出ていることに触れないよう政府から命じられている可能性があります」
CNNが報じたロシア政府の発表によると、チョンガル橋は6月22日にも攻撃されている。その時はサルド知事がSNSに橋の道路や線路が被ったダメージの動画を投稿している。
サルド知事は「これは今回の特別軍事作戦の成否にかかわるようなものではない」と前置きしてから、この攻撃のせいで食料の輸送が困難になったが、補給物資はより前線に近い代替ルートで運ばれると述べており、結果的にチョンガル橋の重要性が明らかになった形だ。
CNNのニック・ペイトン・ウォルシュは前回のチョンガル橋攻撃について、同じくヘルソンにあるアントノフスキー橋への攻撃を思い出させるという見解を示している。ウォルシュはさらに、アントノフスキー橋への攻撃の結果「やがてロシアがドニプロ川西岸から撤退することになった」とも述べている。また、ウクライナ軍はほかにも同様にクリミアから伸びるヘニチェスク橋を攻撃しており、補給路への攻撃を継続している様子もうかがえる。
ロイター通信によると、チョンガル橋は道路橋と鉄道橋からなり、クリミアとウクライナ南部の占領地域をつなぐ数少ない橋のひとつだという。
ロイター通信のアンドリュー・オズボーンとオルザス・オイゾフはこう述べている:「チョンガル橋はクリミアからアクセスできる数少ないルートのひとつで、代替ルートを取ろうとすると何時間もかかる劣悪な環境の道路を通らなくてはならない」
サルド知事も述べていたように、チョンガル橋の道路や線路が使用不能になれば、ロシア軍はより時間がかかり、ウクライナ軍にも近いルートを通って補給せねばならなくなる。そして、ロシア軍の補給線を断つことはウクライナ側の攻勢にとって非常に重要だ。
6月22日の攻撃に際して、AP通信はこう述べている:「ロシア軍は、一部を実効支配するヘルソン地域への補給をチョンガル橋に強く依存している」
もしウクライナ軍がチョンガル橋への攻撃を成功させているのなら、まさにウクライナが反転攻勢の勢いを強めるこのタイミングでロシアの補給が制限されることになり、作戦の趨勢にも大きな影響を及ぼすだろう。