ジル・バイデン米大統領夫人、ウクライナ大統領夫人を訪問
5月8日、欧州を訪問していたジル・バイデン米大統領夫人はウクライナを電撃訪問し、ウクライナのファーストレディ、オレナ・ゼレンスカ夫人と会談した。
両大統領夫人の会談はスロヴァキア国境に近いウジホロドの町で行われた。2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、オレナ・ゼレンスカ夫人が公の場所に姿を現すのは初めてのことだ。
2人のファーストレディは、戦火から避難してきた人々の避難所として使われている学校施設で対面した。
BBCによれば、ジル・バイデン夫人は「米国民はウクライナの人々と共にあることを示したかった」と訪問目的を明らかにし、「この残酷な戦争を終わらせなければならない」と述べた。
それに対しオレナ・ゼレンスカ夫人は、ジル・バイデン夫人の訪問を「勇敢な行為」と讃え、「母の日」を選んでくれたことに感謝すると述べた。オレナ夫人は、「大切な日である今日、皆様の愛と支援を感じています」と語った。
その後、2人の大統領夫人は避難所で暮らす数十人の子供たちと一緒に遊び、ウジホロド市があるザカルパッチャ州のシンボルとされるクマをティッシュペーパーでつくるなどした。
バイデン大統領夫人についてはよく知られているが、ウクライナのファーストレディはどうだろうか。オレナ・ゼレンスカ夫人の生い立ちや経歴を振り返ってみよう。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の妻であるオレナ・ゼレンスカ夫人は、ロシアのウクライナ侵攻における抵抗の象徴のひとつとなっている。
ゼレンスキー大統領夫人と子供たちは国を離れることを望まず、ウクライナの首都キーウの秘密の避難所に身を潜めており、バイデン米大統領夫人を出迎えるにあたり、初めて公に姿を現したのだ。
オレナ夫人はウクライナ侵攻における重要人物の一人であり、プーチン露大統領が付け狙う標的ナンバー2であると、ゼレンスキー大統領は指摘している。
ウクライナ大統領府HPに掲載された声明を通じ、オレナ夫人は、2022年2月24日に開始したロシアによるウクライナ侵略から始まった母国の闘争と悲劇について語っている。
オレナ夫人は2022年3月初旬の声明の中で、「1週間ほど前に信じられないようなことが起こりました」、 「ウクライナは平和な国であり、町や村は活気に満ちていました」と語っている。
オレナ夫人は1978年(2月6日)生まれで旧姓はキヤシュコ、ウクライナで8番目に人口の多い都市クリヴィー・リフ出身だ。夫のウォロディミル・ゼレンスキー大統領も同じ町の出身で、二人とも1978年生まれ。
ゼレンスキー大統領とオレナ夫人は子供の頃に学校で出会い、大学時代に交際をスタートさせた。大学ではヴォロディミール大統領は法学を卒業し、オレナ夫人は建築学を専攻していた。
(写真:2020年10月、バッキンガム宮殿でウィリアム王子とキャサリン妃とともに)
二人は2003年9月に結婚し、2004年にオレクサンドラ、2013年にキリロという二人の子供を授かっている。
(写真:ウクライナ大統領府報道部)
オレナ夫人は建築家であると同時に映画の脚本家でもあり、夫とともに制作会社Kvartal 95を設立、さまざまなプロジェクトに参加した。 実際、政界入りする前のゼレンスキー大統領は本国で有名な俳優だったのだ(しかもロシアでもよく知られる存在だった)。
オレナ夫人自身がさまざまなインタビューで認めているように、夫がウクライナ大統領選への出馬を決めたときにはあまり乗り気ではなかった。しかし、夫が大統領となってからはつねに彼を支え、ファーストレディとしての責務に積極的にかかわってきた。
2019年5月に夫が大統領に就任して以来、オレナ夫人はウクライナのファーストレディとしてさまざまな問題に取り組んでいる:学校食の栄養、男女平等、メンタルヘルスケア、機会均等、ウクライナ文化の普及、ジェンダーに基づく暴力との戦いなど。
(写真:ウクライナ大統領府報道部)
オレナ夫人は数多くのフォロワーを抱えており、身を潜めているウクライナから、SNSを通じて悲惨な戦争について告発を続けている。
かつて、オレナ・ゼレンスカ大統領夫人はインスタグラムでの知名度を活かし、自身が携わるさまざまな支援活動について周知をしたりウクライナ版『VOGUE』の表紙を飾るなど、ファッションやライフスタイルのお手本ともなっていた。
オレナ夫人は国のファッションアイコンであり、公式行事では必ずと言っていいほどウクライナのデザイナーの服を身に着けている。そのスタイルはファーストレディにふさわしく、クラシックが基本だ。
オレナ夫人本人は「裏方にいる方がいい」としているが、事実上、「大統領夫人」の枠をはるかに超えた重要な役割を担っている。
「プライバシー攻撃を始めさまざまな問題とは無縁の以前通りの生活をすることもできましたが、夫を支えることにしました。夫には感情面での支えが必要であり、身近な人のサポートも必要です。また、公式訪問の場で手をつなぐ相手も要りますから」と、ウクライナ版『VOGUE』のインタビューで語っている。
写真は、2020年2月に夫と共にバチカンにローマ法王フランシスコを訪問したときのもの。
2021年4月にはフランスのエリゼ宮でマクロン大統領夫妻に迎えられた。ゼレンスキー大統領は、まさにウクライナのNATO加盟の可能性についてマクロン大統領と討議するために現地に赴いたのだった。
オレナ夫人は母国にとりきわめて重要な存在であり、『FOCUS』誌の「最も影響力のあるウクライナ人100人」で30位にランクされた。
秘密の避難所での生活を余儀なくされながらも、オレナ夫人はウクライナの平和を求めて迷うことなく声を上げており、世界中からウクライナと大統領夫妻を支持する声が上がっている。