ウクライナ侵攻を批判するロシア人富豪:オレグ・デリパスカ

ロシアの財閥が当局を批判
侵攻の大義名分に疑問
刑事訴追の恐れ
ロシア政府は制裁にうまく対処できていない
例のない厳しい批判
政権交代には懐疑的
資産の半分を失う
軍用車製造元の株主
オレグ・デリパスカは一体何者なのか?
エネルギー産業の要
不信感を募らせるプーチン政権
プーチン政権の一部
プーチン政権との繋がりは?
EU側の配慮
リストから外された理由は?
ヨーロッパ企業への大規模な投資
英国・米国との繋がり
2018年の制裁
エリツィン元大統領との関係
不満を募らせるオリガルヒ
ロシアの財閥が当局を批判

ロシアによるウクライナ侵攻について批判的なコメントを行い、波紋を広げたオリガルヒ(ロシアの有力財閥)の重鎮、オレグ・デリパスカ。彼はプーチン大統領とも近いとされる億万長者だが、ウクライナ侵攻による経済的損失は甚大であり、誰も得しないだろうと述べたのだ。

 

侵攻の大義名分に疑問

モスクワで行われたインタビューの中でデリパスカはウクライナ侵攻についてロシア当局が掲げる大義名分に疑問を呈し、政府の公式見解に異議を唱える形となった。しかし、慎重に言葉を選び、プーチン大統領を直接批判することは避けたという。

 

 

刑事訴追の恐れ

ドイツ誌『デア・シュピーゲル』によれば、ルサール(ロシア・アルミニウム)社の創業者デリパスカはロシアの行為を「大きな間違い」だと言い切ったほか、ロシア当局が避け続ている「戦争」という表現を用いたという。同誌によれば、これによってデリパスカは刑事訴追される恐れもあるという。

 

ロシア政府は制裁にうまく対処できていない

デリパスカはまた、ウクライナ侵略に対して西側諸国が発動した制裁措置について、ロシア側の対応を批判している。彼によると「紛争開始から120日が経ったにもかかわらず、制裁によってロシア経済が被る影響を緩和するために必要な決断を当局はいまだに下していない」というのだ。

例のない厳しい批判

世界的にも影響力の大きいロシア人実業家が、このように率直な政府批判を繰り広げるのは例のないことである。

 

政権交代には懐疑的

ロイター通信によれば、デリパスカはロシアで近い将来、政権交代が起こる可能性については懐疑的だ。というのも、反対派の多くが亡命したり投獄されたりしているためだ。

 

資産の半分を失う

米国および欧州連合(EU)が課した制裁措置はプーチン派のオリガルヒに大きな影響を与えており、デリパスカも例外ではない。『フォーブス』誌によれば、2021には38億ドルを誇ったデリパスカの純資産は2022年現在、17億ドルまで減少しているという。

(写真はシチリア島にあるデリパスカの別荘)

軍用車製造元の株主

ドイツのニュース番組『ターゲスシャウ(Tagesschau)』によると、デリパスカは軍用車を製造する自動車メーカーGAZ社の大株主であるため、彼の発言は各国の外交筋から驚きをもって受け取られることとなった。ウクライナ侵攻の恩恵を直接受ける立場にあるためだ。軍事専門家のグスタフ・グレッセルはGAZ社について、装甲車をはじめとする軍用車両を供給するロシア軍の屋台骨だと説明している。

 

オレグ・デリパスカは一体何者なのか?

オレグ・ウラジーミロヴィッチ・デリパスカ(1968年、旧ソ連ゴーリキー州ジェルジンスク生まれ)はロシア屈指のコングロマリット「ベーシック・エレメント」社の創業者だ。2017年まではEn+グループのCEOを務めていたほか、アルミニウム製造メーカー「ルサール(ロシア・アルミニウム)」社の創業者兼共同経営者でもある。

 

エネルギー産業の要

デリパスカは「オリガルヒ」と呼ばれる実業家たちの1人だ。彼らはロシア経済の大部分を占めるエネルギー産業や鉱物資源を牛耳っており、政治に口出ししないことや政府寄りの立場を守ることと引き換えに莫大な富を築き上げている。

 

不信感を募らせるプーチン政権

専門家によれば、デリパスカはエリツィン政権の頃から残っている数少ないオリガルヒの1人であり、プーチン政権は彼に対し不信感を募らせているとされる。遅かれ早かれルサール社は国有化されるだろうと予測されていたのはそのためだ。

 

プーチン政権の一部

しかし、ドイツ政治学術財団のヤニス・クルーゲによれば、デリパスカは2022年3月時点で依然として「プーチン政権の一部として不可欠」だった。アルミニウム産業の巨頭はロシア式の国家資本主義を支持し、恩恵にあずかっていたのだ。

プーチン政権との繋がりは?

デリパスカ自身はプーチン政権との繋がりを否定しているが、国際的な研究は両者の密接な関係を示唆している。

(写真:Kirill Kudryavtsev/AFP via Getty Images)

EU側の配慮

欧州連合(EU)は、オリガルヒに課している制裁措置の一部をデリパスカに対しては免除している。ドイツ誌『Kontraste』および「ディー・ツァイト」紙の報道によれば、今年初めに策定された制裁案リストには、世界的に大きな影響力を誇るデリパスカの名前も含まれていたという。

 

リストから外された理由は?

しかし、最終的な制裁リストにデリパスカの名前はなかった。会議に参加した各国の外相はこの件についてコメントを避けており、誰がこの決定を下したのかは不明だ。

写真:サンクトペテルブルクで恒例の白夜祭に参加するデリパスカ(右、2008年)

ヨーロッパ企業への大規模な投資

デリパスカが全面的な制裁措置の対象外とされたのは、彼がEU諸国に投資を行っているためかもしれない。たとえば、持株会社を通じてオーストリアの建設会社Strabag社の株式のおよそ75%を保有しているほか、『フォーブス』誌によれば、オーストリアのリゾート地レッヒ・アム・アールベルクでも3000万ドルあまりの投資を行い、高級ホテルを経営しているという。

写真:メドヴェージェフ元大統領と工場を視察するデリパスカ

英国・米国との繋がり

一方『ガーディアン』紙はデリパスカを「英国の政界と密接な関係を持つ、プーチンのお気に入り」と表現。同紙によれば、デリパスカは当時のピーター・マンデルソン財務大臣をはじめとする英国の政府高官を豪華クルーザー「クイーン・K」に招待し、迂回献金について話し合ったとされている。また、ドナルド・トランプ元米大統領とも良好な関係を保っていたと言われている。

 

2018年の制裁

しかし、2018年には米国による制裁措置の対象となった。これは「世界中で『悪意ある活動』を展開するロシア政府から恩恵を受けるロシア企業や個人」に制裁を加える大規模な試みの一環だ。これによってルサール社は大きな打撃を受け、同社の株式市場価値は60%下落したほか、アルミニウムの価格は1トンあたり2,500ドルまで上昇した。

エリツィン元大統領との関係

2001年から2017年まで、オレグ・デリパスカはヴァレンチン・ユマシェフの娘、ポリーナ・ユマシェワと結婚生活を送っていた。ヴァレンチン・ユマシェフはエリツィン元大統領の娘婿であり、プーチン大統領の顧問になる前にはエリツィン政権の大統領府長官を務めたこともある人物だ。デリパスカとポリーナ・ユマシェワには息子が1人おり、デリパスカは主にスクワで暮らしているという。

(写真:エリツィン元大統領、プーチン大統領の就任式にて)

不満を募らせるオリガルヒ

プーチン政権を支えるオリガルヒたち。制裁措置で私生活に打撃を受けたロシアの富裕層は不満を募らせている。彼らが海外に所有する別荘や豪華クルーザーはすでに差し押さえられており、子供たちの留学も困難になっているのだ。また、海外製の高級品もロシア国内では入手できない。

(写真:デリパスカがロンドンに所有する別荘を占拠する反戦活動家たち、2022年3月)

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