サッカー史上、もっとも物議を醸したゴールとは
近年ではVAR判定が主流になったが、サッカーでは時に物議を醸すようなゴールが生まれてきた。今回は際どい判定で世界中に物議を醸したゴールを紹介していこう。
同世代最高峰の卓越したドリブルとシュートの技術で知られているアリエン・ロッベン。しかし、2014年ワールドカップ・ブラジル大会の決勝トーナメントで披露したのは別の特技だった。
メキシコのジオバニ・ドス・サントス(写真右)のゴールで先制されるも、ヴェスレイ・スナイデルのゴールで同点にしたオランダ。さらに後半の土壇場で、ラファエル・マルケスに倒されたロッベンにペドロ・プロエンサ主審がPKを与え、2-1の逆転勝利をおさめた。本人もダイブだと認めるPK判定にメキシコ国民は憤慨し「PKではなかった」というオンライン・キャンペーンを立ち上げた。このゴールにちなんだ歌まで流行ったという。
ワールドカップ史上最も物議を醸したゴールといえば、1986年メキシコ大会のディエゴ・マラドーナのものだろう。飛び出してきたゴールキーパーのピーター・シルトンより先にマラドーナの左手がボールに到達した。ボールはそのままゴールに吸い込まれ、主審はゴールと認定。最終的にアルゼンチンが試合を制し、国民を大いに熱狂させた。1982年の「フォークランド紛争」でイングランドに敗れたリベンジの象徴となったのだ。
イングランド側は激怒しハンドを主張したが、主審のアリ・ベンナシュールはゴール判定を覆さなかった。アルゼンチンはこの大会で2度目の世界王者となったが、マラドーナのゴールは「神の手」として永遠に語り継がれるようになった。
1966年、ワールドカップの決勝戦で、開催国イングランドが満員となったウェンブリー・スタジアムで西ドイツと対戦した。延長前半の11分、ジェフ・ハースト(写真右)の放ったシュートがクロスバーに直撃しライン上に落ちた。
スイス出身の主審ゴットフリート・ディーンストはゴールに確信が持てず、線審のトフィク・バフラモフに判断をゆだねた。その結果、ゴールと認められイングランドが4-2でワールドカップ初優勝を遂げた。ハーストはこの試合でハットトリックも達成している。
2010年ワールドカップ・アフリカ大会の決勝トーナメント1回戦で、イングランドとドイツが対戦した。ドイツが2-0と先行していたが、イングランドが1点を返し追い上げムードとなったところでフランク・ランパードが同点となるシュートを放った。
ランパードのシュートは、GKのマヌエル・ノイアー(写真)の頭上を抜けクロスバーに当たって地面に落ちた。ボールはラインを割っていたようにみえたがゴールとは判定されず、最終的にイングランドは4-1で敗退してしまった。
ワールドカップ同様大きな盛り上がりをみせるチャンピオンズリーグ。2005年にリヴァプールとチェルシーが準決勝で対戦した時のゴールも大きな論争となった。スタンフォード・ブリッジでの第1戦を0-0で終え、地元で行われた第2戦でリヴァプールのルイス・ガルシアがシュートを放った。チェルシーのウィリアム・ギャラスが、このシュートをクリアしたかに見えたが、主審はゴールの判定を下した。
このゴールが決勝点となり、リヴァプールは決勝へ進出。次のACミランを相手に逆転勝利をおさめた「イスタンブールの奇跡」へとつなげた。しかし、ガルシアの際どい判定のゴールは、後々まで大きな物議を呼んだ。
2006年ワールドカップ・ドイツ大会のラウンド16でオーストラリアと対戦したイタリア。後半にファビオ・グロッソがルーカス・ニールと接触しPKを得た。このPKをフランチェスコ・トッティが冷静に決め、イタリアはベスト8に進出。
最終的にイタリアはドイツ大会で王者となったが、オーストラリア戦でグロッソに与えられたPKが後々まで大きな論争を呼んだ。
2009年、フランスとアイルランドが2010年ワールドカップ・南アフリカ大会の本戦出場をかけたプレーオフを行った。延長前半の終了間際、フランスのティエリ・アンリがマラドーナを彷彿させる「神の手」を披露し大きな論争を呼んだ。
ウィリアム・ギャラスの同点ゴールをアシストしたアンリは、明らかに左手を使ってボールをピッチ内に戻していた。だが審判団はそれを見逃し、アイルランドの選手達の抗議にもかかわらずフランスのゴールが認められた。
2002年、ワールドカップ・日韓大会のグループステージでトルコと対戦したブラジル。その時のリバウドの名演技が、ゲームの流れを変えた。
試合終了間際、トルコのハカン・ウンサルがリバウドに向けてボールを蹴った。ボールが当たったのは足だったが、リバウドは顔面をおさえて悶絶。ウンサルは2枚目のイエローで退場となり、2-1でブラジルが勝利を収めた。
1982年のワールドカップ準決勝で、西ドイツとフランスが対戦した。試合は3-3に終わり、PK戦にもつれこむ。5-4で西ドイツに軍配が上がったが、この試合のハラルト・シューマッハ(写真中央)のラフプレーが、国をあげての論争となった。
GKのシューマッハはゴールから飛び出し、フランスのパトリック・バティストンに体当たりをかました。バティストンは意識を失い、歯が2本折れたほか肋骨と脊椎にも深刻な損傷を負った。現在の基準なら一発レッドのプレーだが、主審は反則をとらなかった。
最近では、チャンピオンズリーグ2023-24のグループステージ第5戦が大きな物議を醸した。パリ・サンジェルマン対ニューカッスル・ユナイテッドの後半アディッショナルタイムに、パリ・サンジェルマンのFWウスマン・デンベレがあげたクロスがDFティノ・リブラメントの手に当たったとされ、VARによってPK判定となったのだ。
VAR(ビデオアシスタントレフェリー)は、複数のアングルの試合映像を見ながら主審をサポートする審判員を意味する。その結果、シモン・マルチニアク主審はパリ・サンジェルマンにPKを与え、キリアン・ムバッペが冷静に決めて1-1となり、重要な勝ち点3を得ることになった。