80年代の英ニュー・ウェーヴ・バンド、デュラン・デュランはどうしてる?
英バーミンガム州の学校仲間だったジョン・テイラーとニック・ローズは、デヴィッド・ボウイやロキシー・ミュージックの洗練されたスタイルに憧れてダンサブルでエネルギーにあふれた音楽づくりを目指すポップバンドを結成した。こうして生まれたデュラン・デュランは、さまざまな変遷をたどりながら現在まで50年近く活躍を続けている。今回は80年代にブレイクしたデュラン・デュランのキャリアと現在をチェックしてみよう。
ジョン・テイラーとニック・ローズによるデュラン・デュラン結成後、1979年にロジャー・テイラー(ドラム)、アンディ・テイラー(ギター)、サイモン・ル・ボン(ヴォーカル)が加入。バンドはこのオリジナルメンバーで1980年代に大きな成功を手にする。
1981年、デュラン・デュランはファーストアルバム『デュラン・デュラン』を発表。シングルカットされた「プラネット・アース」や「グラビアの美少女(Girls on Film)」で大きな成功を収め、独特のニュー・ウェーブ・スタイルを確立した。
1982年にはセカンドアルバム『リオ』を発表、「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」や「セイヴ・ア・プレイヤー」等のシングルがヒットし国内屈指のバンドとしての地位を固めたほか、北米ツアーや初来日公演を開催するなど国際的なバンドへと成長した。
1983年にリリースした3枚目のアルバム『セブン・アンド・ザ・ラグド・タイガー』は全英アルバムチャートで初登場1位を記録。シングル「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」や「リオ」は革新的でスタイリッシュなミュージックビデオが話題となり、当時のMTVで数えきれないほど放映された。
1985年にはフィラデルフィアのJFKスタジアムで開催された20世紀最大のチャリティーコンサート、「ライヴエイド(LIVE AID)」に参加。世界最高のアーティストたちと肩を並べた。
同じく1985年、サイモン・ル・ボンとニック・ローズ、ロジャー・テイラーが新バンド「アーケイディア」を結成、アルバム『情熱の赤い薔薇(So red the rose)』をリリースした。デュラン・デュランと平行したこのプロジェクトでは、実験音楽への関心が追及された。
ジョン・テイラーとアンディ・テイラーも新バンド「パワー・ステーション」を結成、ボーカルにはロバート・パーマー、ドラムにトニー・トンプソンを迎えた。1985年にバンド名を冠したアルバム『ザ・パワー・ステーション』を発表しシングル「サム・ライク・イット・ホット」などロック寄りのサウンドで人気を得た。こうした2つのプロジェクトを通じてメンバーの音楽的方向性の違いが明らかになり、1986年にロジャー・テイラーとアンディ・テイラーがデュラン・デュランを脱退。
1986年、デュラン・デュランは3人のメンバーでアルバム『Notorious / ノトーリアス』を発表。より大人向けのファンキーなサウンドでシングル曲「Notorious / ノトーリアス」が世界的ヒットを収めた。
90年代に入ると音楽のトレンドは変わり、イギリスではブリットポップが、アメリカではグランジが台頭して80年代に成功したバンドの多くが失速。デュラン・デュランの人気も低迷したが、93年に7枚目のアルバム『デュラン・デュラン(ザ・ウェディング・アルバム)』を発表、シングルカットされた「オーディナリー・ワールド」が全米チャート3位となり見事に復活を果たした。ル・ボンはこの曲を通じ、それまで手にしていた「当たり前の日常」を失っても前向きに生きていくことを歌った。
1993年に成功を収めた『デュラン・デュラン(ザ・ウェディング・アルバム)』から11年後の2004年、オリジナルメンバー5人が再結集してアルバム『アストロノート』をリリース。シングルヒット「(リーチ・アップ・フォー・ザ・)サンライズ」を含むこの復活アルバムは、ファンからも批評家からも高い支持を得て大きな成功を収めた。
2006年にアンディ・テイラーが脱退。バンドは4人になったものの活動を継続し、2007年にティンバランドとジャスティン・ティンバーレイクが参加した『Red Carpet Massacre』を発表。2010年にはクラシックなサウンドに戻ったと評される『All You Need Is Now』を、2015年には元レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテ、歌手で俳優のジャネール・モネイとのコラボを含む『Paper Gods』をリリースした。
2021年、結成から40年を超えたたデュラン・デュランは、キャリアの集大成と未来への思いを込めた16枚目のアルバム『フューチャー・パスト』をリリース。英ロックバンド「ブラー」のグラハム・コクソン、デヴィッド・ボウイのピアニストを務めていたマイク・ガーソンとのコラボを行った。2022年、デュラン・デュランはロックの殿堂入りを果たす。
2024年、サイモン・ル・ボンは音楽活動に加え、ブルーマリン基金やセンターポイント等の団体を通じた慈善活動が認められ、チャールズ3世国王の誕生日を祝した叙勲で大英帝国勲章(MBE)を授与された。
1980年代当時、デュラン・デュランは音楽もさることながら、そのルックスでティーンの少女たちを虜にした。ベーシストのジョン・テイラーを始めイケメンぞろいのメンバーがメイクをして舞台に立つと、興奮のあまり失神する観客もいたほどだ。
2023年10月に最新アルバム『Danse Macabre』を発表。ニック・ローズを中心とする4人のメンバーは今年、「Cruel World 2024」ツアーでギリシャやスイス、イタリアをまわっている。結成40年を超え、メンバーが60代に入った今も疾走を続けるデュラン・デュランにこれからも注目だ。