映画『アウトサイダー』の出演者は今どうしている?
フランシス・フォード・コッポラが監督した青春映画、『アウトサイダー』(The Outsiders)。両親を失った主人公が兄と4人の仲間とともに「グリース」というグループを結成、富裕層の少年グループ「ソッシュ」と激しく対立するという青春と友情、社会問題を描いた優れたドラマだ。
『アウトサイダー』は、1980年代に数多くの映画で共演した若手スターの総称、いわゆる「ブラット・パック」が見出される機会になった。エミリオ・エステベスやロブ・ロウを始めとする将来有望な「小僧っ子たち」たちは、映画界の期待に応えて、輝かしいキャリアを積んでいった。しかし、この映画の主な出演者たちは今どうしているのだろう?
C・トーマス・ハウエルは1982年にスティーブン・スピルバーグの『E.T.』にタイラー役で参加、一躍人気を博した(写真右がC・トーマス・ハウエル、左がラルフ・マッチオ)。そのわずか一年後にフランシス・フォード・コッポラ監督の『アウトサイダー』に参加、「ポニーボーイ」カーティス役に起用され俳優として決定的な飛躍を遂げる。続いて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティ・マクフライ役にも推されたが、こちらは最終的にマイケル・J・フォックスが演じることになった。
C・トーマス・ハウエルは、そのキャリアを通じて90以上の映画プロジェクトに参加している。映画に加えてテレビや舞台作品でも高い評価を得たほか、監督、脚本、製作も行っている。ただし、コッポラ監督の『アウトサイダー』に出演した若手俳優の中ではいちばん成功に遠かったと言えるだろう。21世紀に入りロブ・ライナー監督の『LBJ』(2016年)、『ウォーキング・デッド』(2018年)にカメオ出演する姿が見られた。
ブラット・パックの中心メンバーの一人。幼い頃からモデルとして活躍し、演劇界にも身を置いていたロブ・ロウ。『アウトサイダー』でポニーボーイの兄であるソーダポップ・カーティス役を演じ、俳優として大きな飛躍を遂げた。本作をきっかけに数多くの作品に出演し、世界中のティーンエイジャーの心を奪うイケメン俳優として活躍するようになった。
1988年にスキャンダラスなビデオを巡ってトラブルに見舞われ、その後も不祥事を起こしたロブ・ロウはしばらく人気が低迷。ふたたびスターダムに返り咲くためには苦難の道を歩かねばならなかった。やがてテレビシリーズ『ザ・スタンド』(1994)のニック・アンドロス役で評価を取り戻し、『ザ・ホワイトハウス』のサム・シーボーン役などで名声を博してエミー賞主演男優賞にノミネートされた。その後も『9-1-1: Lone Star』にも出演するなど活躍の場を広げている。
80年代から90年代にかけてのイケメン俳優の代表といえばパトリック・スウェイジ。『ダーティ・ダンシング』(1987年)や『ゴースト』(1990年)といったハリウッドの伝説作品に出演、ゴールデングローブ賞にノミネートされるなど時代の寵児となった。それより以前の作品となるのがテレビシリーズ『南北戦争物語 愛と自由への大地』(1985年)、そしてカーティス兄弟の三男ダレルを好演した『アウトサイダー』だ。
人気俳優パトリック・スウェイジの生涯には突然終わりが訪れた。2007年にすい臓がんが見つかり、2年の闘病生活を経て2009年に逝去した。キャリア最盛期にあたる80年代と90年代に数多くの作品に出演、その後は出演作が減ったものの、闘病期間中もテレビドラマ『BEAST』に出演するなど晩年まで積極的に活動を続けた。
マット・ディロンは1979年から6本の映画に出演、その後1983年にフランシス・フォード・コッポラが監督した『アウトサイダー』に参加。続いて『ランブルフィッシュ』(Rumble Fish)で主役ラスティ・ジェイムスを演じ、揺るぎないスターの座を手に入れた。『アウトサイダー』ではダラス・ウィンストン役で映画のタイトル通り「反逆児」のキャラクターを確立、多くの作品で独自のスタイルを披露した。
2002年に数本の映画で監督業に挑戦したほか、『クラッシュ』(2005)、『ワイルドシングス』(1998)、『イン&アウト』(1997)、『誘う女』 (To Die For)(1995)を始めとして合計50本以上の作品に出演。キャリアを通じ多数の賞を受賞、中でも『クラッシュ』ではインディペンデント・スピリット賞、全米映画俳優組合賞キャスト賞を受賞し、ゴールデングローブ賞とアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされた。ほか2006年にはドノスティア賞を受賞。
『アウトサイダー』に登場する黒髪で幼い顔立ちのジョニー・ケイドが、翌年には『ベスト・キッド』(1984年、1986年、1989年)のダニエル・ラルッソ役を手にし、ミスター・ミヤギに師事することになるとはだれが考えただろう。フランシス・フォード・コッポラ作品への出演が彼のキャリアに幸運をもたらし、『ベスト・キッド』のジョン・G・アヴィルドセン監督が彼を抜擢するきっかけになったことは確かだ。
『ベスト・キッド』のダニエル・ラルッソ役で高い人気を博したラルフ・マッチオは、2018年『ベスト・キッド』の続編『コブラ会』に出演(監督ジョン・G・アヴィルドセン、製作ジェリー・ワイントローブ)。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主役マーティ・マクフライにも取りざたされたがこちらは叶わなかった。ともあれ映画とテレビで充実したキャリアを重ね、舞台でも成功を収めた。現在はNetflixのドラマ『コブラ会』でふたたびラルッソとしてファンを楽しませてくれる。
スペイン系の名前をもつニューヨーク出身のエミリオ・エステベスは、ハリウッドのベテラン俳優マーティン・シーンの息子(マーティン・シーンはの本名はラモン・アントニオ・ジェラルド・エステベス)。エミリオ・エステベスはフランシス・フォード・コッポラのもとで『アポカリプシス・ナウ』(1979年)にエキストラ出演した後、同監督の『アウトサイダー』のツー・ビット役に抜擢された。当時人気を博したブラット・パックのリーダーとされ、その後も『ブレックファスト・クラブ』(1985年)等の重要な作品に出演している。
父(マーティン・シーン)や兄(チャーリー・シーン)のように芸名を使わず、はつねに本名エミリオ・エステベスで活躍。また、ワーナー・ブラザースの子会社としてエステベス・シーン・プロダクションズを設立、俳優だけではなく監督、脚本家としても高い評価を得てその名を知らしめた。監督を務めた2006年の『ボビー』はヴェネチア国際映画祭などで喝さいを浴びるなど、数々の賞にノミネートされている。『パブリック 図書館の奇跡』(2018年)では監督として、Disney+シリーズ『We Are the Best』(2020年)では俳優兼エグゼクティブプロデューサーとして活躍。
トム・クルーズは1981年にフランコ・ゼフィレッリ監督の『エンドレス・ラブ』で映画デビューし、同年に『タップス』にも参加、やはり将来を有望視されていた若手俳優ショーン・ペンと共演した。続いて第3の出演作となった『アウトサイダー』(1983年)で一気に名声を挙げることになる。本作では貧困層の少年グループ「グリース」のスティーヴ・ランドルを担当した。キャリアの前半はティーンエイジャー向けの作品に参加し、徐々に輝かしいキャリアを積んでいった。
宗教哲学サイエントロジーに熱心だという話や、シェール、レベッカ・デモーネイ、ニコール・キッドマン、ケイティ・ホームズといった有名歌手や女優との恋愛も有名だが、トム・クルーズの俳優としての輝かしいキャリアは文句のつけようがない。初期の代表作は『レインマン』(1988年)、『7月4日に生まれて』(1989年)、『アイズ ワイド シャット』(1999年)。これらがプロローグに思えるほど2000年以降も精力的に活動している。『7月4日に生まれて』(1989年)、『ザ・エージェント』(1996年)、『マグノリア』(1999年)の3作はゴールデングローブ賞を受賞し、オスカーにもノミネートされている。