ざわつく観客:ライブ中のアーティストを襲ったトラブルまとめ
メンタルヘルスの悩みを抱えるなかで子どもの親権を争うなど、ブリトニー・スピアーズにとって2007年はつらい年だった。そんな年の9月にMTV Video Music Awardの一貫で行われたライブは散々だった。ブリトニーはステージに立って歌える状態ではなかったうえに、出演前になにか良くないものを摂取していたような雰囲気もある。
2007年、スーパーボウルでの国歌斉唱に臨んだクリスティーナ・アギレラだったが、声が凄すぎてほとんど聞き取れなかった上に、国歌の歌詞を間違えてしまう。即興でごまかそうとしたものの、事態は悪化する一方だった。
1992年に行われた MTV Video Music Awards、このコンサート自体はレジェンド級だが、同時に史上最も笑える「ベース投げ」事件があったことでも知られている。ベーシストのクリス・ノヴォセリックが演奏中にギターを頭上に放り投げたのだが、キャッチに失敗して自身の頭を直撃してしまったのだ。この事件の後、同じコンサート終盤にカート・コバーン(機材壊しで有名)も自身のギターでアンプを壊している。
最高の歌手にもどうしようもない時はある。2010年、オーストラリアでステージに立ったホイットニー・ヒューストンはまるでトランス状態だった。当時は周知の事実だったが、重い依存症に苦しんでいたのだ。コンサートを通じて一曲歌い通すのもしんどそうで、音程を外すこともしばしば。それでも、聴衆は拍手や声援を送り続けた。感動的だが、悲しくもあるライブとなった。ホイットニーが亡くなる2年前の出来事だ。
2016年大晦日にニューヨークで行われたライブでマライア・キャリーは「エモーションズ」を口パクすることになっていたのだが、トラブルで録音がうまく再生されなかった。その後、怒り狂ったマライアは生声で歌うことを拒否、「聴衆に歌ってもらおう」と言いだし、自分は曲の間ずっとぶつぶつ言っていた。残念なことに次の「ウィ・ビロング・トゲザー」でも同じことが起き、ライブはたったの6分で終わってしまった。歴史的長さと言えるだろう。
ラップデュオ「PNL」がヴォコーダー(声を加工するエフェクター類)無しだと大変なことになるのは想像に難くない。実際、2017年にブリュッセルで行われたライブでは「Naha」のパフォーマンス中にヴォコーダーが故障、生声かつアカペラで歌うことを余儀なくされたが、結果はすごいものだった。
ラスベガスのナイトクラブ「Haze」の客はおとなしいタイプではない。そのため(?)、ケリー・ローランドはステージに立ったとき、第一声から全力で絶叫、聴衆は何を歌っているのかまったく聞き取れなかった。そして元デスティニーズ・チャイルドの迫力というべきか、どうしようもないほど調子外れで音程の合わない声のまま歌い通した。さぞ見ものだったことだろう。
2013年に行われたNRJ Music Awardsでのライブでは、ケイティ・ペリーがステージに出てくる10秒前から録音が再生されてしまった。ペリーは必死で追いついて口パクしようとしたものの、完全にずれてしまった。すると、ライブの主催者がステージに出てきて謝罪、こう言った:「ちょっとしたアクシデントがありましたが、これはライブです。もういちどやり直すというのでいかがでしょうか?」そうして仕切り直しとなり、今度はペリーも見事にパフォーマンスしてみせた。なかなかエレガントな解決と言えるだろう。
激しい気性で知られ、かつてのプッシーキャット・ドールズの仲間たちともあまり折り合いが良くないとされるニコール・シャージンガー。2012年、テレビ番組「X-Factor」のトリでホイットニー・ヒューストンの「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」を歌っていたとき、マイクトラブルに見舞われてしまう。ニコールはこのとき、一緒に歌っていたジャーメイン・ダグラスからマイクを奪ってソロパフォーマンスとして続行、力技で問題を「解決」した。これぞニコール!
いまでこそ笑い話だが、一歩間違えば大惨事にもなりかねなかったのがこの出来事。2013年、モントリオールでのライブで聴衆に近づこうとしてステージから降りたビヨンセだったが、自慢の長い金髪が換気扇に巻き込まれてしまったのだ。ビヨンセも必死で逃れようとしたものの、最終的にセキュリティが駆けつけてブレーカーを落として救出した。すごいのは、こんなことが起きてもビヨンセは決してライブを中断しなかったこと。何も起きていないかのように歌い続け、しかも歌声にも狂いがなかったのだから驚きだ。
レジェンド級の出来事をもうひとつ。2019年、ライブでジェイ・Zの「ビッグ・ピンプ」をカバーしフルートを吹いていたケイティ・ペリーだったが、フルートから口を離しても音が流れ続け、いかさまが白日のもとにさらされてしまったのだ。けっきょく、のちにペリーはフルートはぜんぜん吹けないと告白している。
今度は一転して悲しいエピソードだ。特に、エイミー・ワインハウスはこの数週間後に亡くなってしまうことを考えるとなおさらだ。エイミーが酔っ払ってステージに立つことは日常茶飯事だったが、2011年のベルグラードでのライブではエイミーはふらふらで、マイクスタンドを放り投げ、腕を組んで歌うことを拒否。心配になったファンは自分たちが歌うことでエイミーにもその気になってもらおうとしたが、その甲斐もなく、エイミーはステージを後にした。
2018年11月、ローリン・ヒルはパリでのライブに2時間半遅刻。しかもそのことが夜8時にステージ上で告げられた。いざライブが始まってからもブーイングの声は止まず、聴衆の怒りが伝えられた。ライブ自体も凡庸でファンの怒りはさらに強まり、けっきょく1時間も持たずに中止となった。
2008年、NRJ Music Awardsでのライブでヴァネッサ・パラディはマイクを持たずにステージに登場、そのまま口パクが始まってしまう。しかもその口パクが大変お粗末な出来という始末。
この時の様子を収めた映像は必見だ。2002年にテレビ番組に出演したジョルジュ=アラン・ジョーンズだったが、全体的にやる気がない様子で、ラス・ケチャップのケチャップ・ソングのカバーを歌ったときなど声は聞き取れず、体も動かず、サビはミスるとひどい有様だった。
Image: Star Academy Official / YouTube
最後は笑えると同時に見てるこっちも恥ずかしくなってしまうエピソード。2009年、市長などのお偉いさんも臨席しているライブで、ヴェロニク・サンソンが場違いなくらいに下品な歌を歌ったのだ。なんとも長い2分間だったことだろう。