裁判待ち! ジャスティン・ビーバーのモンキービジネス(いんちき商売)
暗号通貨市場がバブルの頂点にあったころ、NFTコレクション、BAYC(Bored Ape Yacht Club)をジャスティン・ビーバーが130万ドルで購入したというニュースが報じられた。今では、その価値は購入時のおよそ5%にまで減り、たったの69,000ドルで取引されている。その価値暴落だけでも十分驚くに値するが、裏にはさらに奇っ怪な事情がある。
腕の立つネット探偵たちが多大な時間を費やし、昨年2月のジャスティン・ビーバーによるBAYC購入を調べ上げたところ、一つの事実に行き着いた。くだんのBAYC購入を実際に行なったのは、とある“国際的なクラウドソーシングコミュニティー”、その名も「仲介者」だった。
ある訴訟でジャスティン・ビーバーの名が挙げられ、ようやく事の全貌が見えてきた。その訴訟は、投資家たちがBAYCの親会社であるYuga Labsに対して起こしたものである。会社はジャスティンのような著名人にお金を払い、自発的な発言にみせかけてBAYCを宣伝させたり、購入させたりしていた、というのが投資家たちの主張だった。……話の筋、見えてきただろうか?
どうやらジャスティン・ビーバーはそのきわめて高価なBAYCを「贈られた」らしい。これは納得のいく話だ。まともな考え方をする人間であれば、いくぶん退屈そうな類人猿のイラストであるNFTコレクションに、100万ドルもの大金を払うことはないだろう。では、購入であれプレゼントであれ、裏にはどんな事情があったのか?
ジャスティンが「購入」したとき、Rug Radio社の共同創立者でパーソナリティのフロク・サーマド(Farokh Sarmad)は次のようにツイートしている:「NFTの購入をジャスティン・ビーバーに勧めたのは誰?僕もNFTを500ETH(暗号資産の一つ)で売りつけたいよ」
ジャスティンが買ったNFTの大幅な下落は、最近起きた、サム・バンクマン=フリードの暗号通貨取引所FTXの崩壊に関連しているらしい。
FTX崩落の結果、暗号通貨の価値は急落した。パニックに陥ったNFTの主要な“投資者”たちが、損失を少しでも取り戻そうと大量の売り注文を出したためである。この影響をもろに受けた有名人はジャスティンだけではなかった。
ブラジルのサッカースター、ネイマールも昨年1月にデジタル・ゴールドラッシュの波に呑まれていた。2つのBAYCを彼のデジタル・アート・コレクションに加えるため、100万ドル以上を費やしたのだ。
哀れ、ネイマールのNFTの価値も購入以来大幅に下落しており、「イブニング・スタンダード」紙のZi Wang記者によれば、サッカー界の寵児はおよそ70万ドルの損失を被っている。
「ラップ・ゴッド」として知られ、あらゆる成功を手にしたエミネムことマーシャル・ブルース・マザーズ3世は、BAYCを約46万2千ドルで購入した。1月以降、損失はほんの30万ドル程度。
BAYCに大金を振り込んだセレブ投資家はほかに、ローガン・ポール、スティーブ・アオキ、シャキール・オニール、ジミー・ファロン、ステフィン・カリー、マーク・キューバン、マドンナなどがいる。彼らの損失額について現時点では推測にとどまるが、うち何人かの名前は対Yuga Labs訴訟にも出てきている。なかでも最大は、ジミー・ファロンと彼の制作会社である。(写真はジミー・ファロン)
巨額の損失、あからさまな買収を前に、ファンたちは首をひねることになった。どうしてジャスティン・ビーバーや他の多くのセレブたちは、NFT熱に浮かされたのだろう。これって大掛かりな詐欺なのでは?
ジャスティンのNFT購入について、暗号通貨の専門家の“Punk9059”は「Artnet News」に次のように語っている:「イラストの独特なタッチが彼を捉えた、というのが一般的な見方です。その頃、悲しい気持ちを歌った楽曲をリリースしていますよね」
一方、ジャスティン・ビーバーをはじめとする多くの有名人がBAYCを同じタイミングで購入した理由について、異なる論を持つ人もいた。彼らの論では、それはお金と深い縁がある。
アメリカのソーシャルサイト、「Reddit」のユーザーのなかには、探偵顔負けの推理力を発揮したものもあった。有名人による相次ぐNFT購入は、その発端にBAYCのオーナーによる大規模な宣伝キャンペーンがあったというのである。この推理はどうやら正鵠を射ていたようだ。
「ジャスティンはたぶん宣伝の見返りとして、それを退屈な猿たちから受け取ったのだろう」というユーザー“ttylyl”の投稿をきっかけに、この宣伝への関与が疑われる有名人についての長い議論が巻き起こった。
「間違いなく、ステフィン・カリーもやっていた」と、ユーザー“ValjeanLucPicard”は指摘している。「僕の記憶が正しければ、彼が支払ったのはトークンやコインのたぐいで、サイトのみで有効な支払い方法だった。サイト内通貨を受け取って、それを支払いに充てたとみてまず間違いないと思う。会社の側は、セレブもこの商品を買ってますよと見せびらかせるわけだ」
いたるところ暗号だらけで確かなことは言えないが、BAYCのNFTは大掛かりな詐欺のように思われる。ジャスティンのようなセレブたちは、宣伝と引き換えにお金を積まれていたのだ。この詐欺がどこまで根深いものだったのか、その全体を知るには対Yuga Labs訴訟の進展を待たなければならない。