チャールズ三世の孫ジョージ王子:王座に就かない可能性とは
5月6日に行われた新国王チャールズ三世の戴冠式でジョージ王子が重要な役割を果たした。ジョージ王子はウィリアム王太子とキャサリン公妃の長男。現在9歳だが、戴冠式ではページ・オブ・オナー(侍者)という大役を担ったのだ。
王太子と公妃夫妻の広報によると、「(ジョージ王子の)ご両親は大変よろこび、胸を躍らせています」ということだ。『ピープル』誌が伝えた。ジョージ王子といえば現在イギリスの王位継承権第二位にあることでも知られているが、はたして実際に王子の頭に王冠が載る可能性はあるのだろうか。
現国王のチャールズ三世はジョージ王子の祖父であり、次の王位継承者は父親にあたるウィリアム王太子だ。したがってジョージ王子が王位を継承する日はまだまだ先だろうが、世間ではすでにジョージ王子が戴冠する日のことを想像し、そのころの英王室がどうなっているかについて想像をたくましくしている。ジョージ王子は未来の王室になにをもたらすだろうか。
『デイリー・ミラー』紙によると、ジョージ王子の両親は、王子がやがて王になるということを本人に伝えるためにタイミングや方法などを熟慮していたという。王位継承者であるということは大変な責任であり、王子が「ぐうぜん知って混乱する」ようなことがないようにしたかったとのことだ。そのように時期が見計らわれていた情報だったが、ジョージ王子も最近ついにそのことを教えられたらしい。
『バトル・オブ・ブラザーズ:ウィリアム対ハリー 家族間の確執の裏側』の著者である、王室歴史家のロバート・レイシーによると、ジョージ王子が自分の将来について教えられたのは2020年、7歳の誕生日でのことだったという。その日、「両親はジョージ王子の将来について踏み込んだ話をし、とくに王室の人間としての『義務と責任』について説明した」という。『マリ・クレール』誌が報じた。
今日ではSNSは生活に欠かせないが、王室にとってもそれは同じ。先ごろ亡くなったエリザベス女王でさえ、2009年にツイッターに登録しているのだから! 王室関係者によるSNSの活用は英王室に対する世間の関心を呼び覚ましており、ジョージ王子もいずれSNSを使って、王室をますます身近なものにしてくれると期待されている。
写真:Duke and Duchess of Cambridge (instagram)
『デイリー・エクスプレス』紙によると、起業家でメディア・コメンテーターのアム・ゴラーはこう語ったという:「王室やジョージ王子の未来について考えるとき、まったく新たな形のSNSがでてくることを予想すべきです。我々を取り巻くデジタル世界は日進月歩ですから」
また、アム・ゴラーは続けて、ジョージ王子はSNSの管理自体は周囲の人間に任せるだろうが、投稿されるコンテンツには「王子らしさ」がにじみ出るようにもするだろう、とも述べた。ともかく、若き王子が将来担うことになる「義務と責任」は多岐にわたることが予想されるわけだ。いまや王族も数多の「セレブ」たちの一員なのだろうか。
2021年、エリザベス女王在位時に、小説家のヒラリー・マンテルが『タイムズ』紙上でエリザベス前女王は王族の人間として尊敬を集めた最後の人物になるだろうと述べている。マンテルはこう語っている:「いまでは王族がただのセレブとして扱われています。いったい王室の人々はどう考えているのか、理解しがたいです」
マンテルは最近の王族を「セレブ」と同類とみなしたわけだが、同じ記事でジョージ王子の将来についても物議をかもす主張を述べている。マンテルによると、英王室はもはや二世代しか続かないだろうというのだ。この記事はエリザベス女王在位時のものなので、つまりチャールズ三世の息子であるウィリアム王太子やその息子ジョージ王子は決して王にならないということになる。
マンテルが王室に関する発言をするのはこれが初めてではない。2013年にはキャサリン公妃のことを「ぼろ布をひっかけたお人形」と呼んで話題となった。この発言は炎上し、以来マンテルの評判は芳しいとは言えないものだった。最近ではアイルランド市民権の取得を検討していることを公表し、反イギリス的だとしてさらなる反感を集めている。デイムの称号(女性版のサーにあたる)を受けているわりにはなかなか大胆だ。
もちろん、マンテルが言おうとしているのは世界が変わりつつあり、王室制度もその寿命が近いということだ。それはそれとしつつ、マンテルは故エリザベス二世前女王の決断力は尊敬していたとも述べている。とはいえ、王室の将来についてこのように予想するのはマンテルだけではない。
クライブ・アーヴィング(『最後の女王:エリザベス二世はいかにして君主制を守ったか』の著者)もまた、ジョージ王子が王座に就く前に王政が廃止されることは十分あり得るとしている。
アーヴィングは『デイリー・エクスプレス』でこう語っている:「ウィリアム王太子やジョージ王子の王としての器について考える前に、まずチャールズ三世の下で王政がどうなるのか、そもそも王政が存続できるのかを確かめねばなりません」
エリザベス二世が亡くなる前から、チャールズは王位の継承を放棄してウィリアム王太子が王座を継ぐべきだという声は大きかった。ウィリアム王太子はまだ若く、英王室を時代に合わせていくこともできるかもしれないというわけだ。だが、チャールズは王位継承を放棄せず、72歳という英王室の歴史上最も高齢での戴冠となった。
存命中の退位は選択肢として存在しない。前女王の伯父エドワード8世が退位して以来、少なくとも前女王にとっては、生前の退位は家名に泥を塗る行為と捉えられていたのだ。それだけではなく、前女王は21歳の時に死ぬまで義務を果たすという誓いを立てている。そしてその日が来たとき、王位は自動的にチャールズに引き継がれた。
もちろん、エリザベス二世とその父ジョージ6世は例外的存在だったということも忘れるわけにはいかない。アーヴィングは次のように語っている:「前女王とその父ジョージ6世はヴィクトリア女王以降始まったウィンザー朝の中でも君主の中でも例外的で、その地位にふさわしい模範的君主であり続けました」真似をするのは難しい存在、というわけだ。
アーヴィングによるとチャールズ新国王には「前女王ほどの卓越した統治能力はない」という。また、エリザベス二世在位時にはこう語っている:「私に言わせれば、チャールズ皇太子(当時)はかつてのできの悪い王族時代を思い出させます。母や祖父(エリザベス二世やジョージ6世)によって大きく高まった期待を満たせる人物では到底ありません」
王室に関連する疑問はもう一つあった。チャールズが王位についた暁には、カミラ妃は「公妃(Queen Consort)」ではなく「王妃・女王(Queen)」と呼ばれるようになるのだろうか? チャールズ王の戴冠式ではカミラ妃も戴冠されることや、王の配偶者は自動的に女王となることはよく知られている。だが、2005年の二人の民事婚を正式な王室のものと認めたくない人もおおかった。
そもそも、カミラ妃はウェールズ公妃の名で呼ばれることも辞退した。イギリスの人々にとって、その称号は常に今は亡きダイアナ・スペンサーのものだったし、これからもそうだろう。エリザベス二世も生前、チャールズの即位後にカミラ妃が王妃と呼ばれることを希望する声明を発表している。
だが、最終的にカミラ妃は「女王(Queen)」の称号を手にしたようだ。BBCの報道によると、イギリス王室が公開した戴冠式の招待状では「女王(Queen)」の称号が使われていたのだ。
「チャールズ王の大伯父であるエドワード8世は離婚経験者と再婚したことで退位したのに、どうして同じことをしたチャールズが王位につくことができるのか」この疑問を抱いた人も多いだろう。答えは簡単だ。いまは時代が違い、離婚も社会的に広く受け入れられるようになった。それに、イングランド国教会にはもはや昔ほどの権威はない。
世間の声も無視できない。データ分析会社「YouGov」による世論調査によると、国民の多くはウィリアム王太子が王位を継ぐことを望んでいたという。また、同じ調査ではエリザベス二世逝去後の王政廃止を求める声も14%あったという。そもそも、エリザベス二世の跡を継ぐのは誰であるべきかという質問に「わからない」と答えた人が15%もいたのだ。
「YouGov」による別の調査結果からも明らかなのは、前女王は国民の期待を大きく超えて見せたということだ。大きく揺れる王政だが、それでもなお過半数の人が在位中の前女王の功績を評価している。
9歳のジョージ王子は王位継承権第二位にいる。祖父のチャールズ三世が退位しなければ、父親のウィリアム王太子の王位継承が現実的になるのは50代になってからだろう。ジョージ王子が王位に就くためには時間も問題となるが、国民の声も立ち塞がる。王政の廃止を望む声は大きい。
ジョージ王子は現在、バークシャーにあるランブルック・スクールに妹のシャーロットや弟のルイとともに通っている。学校ではただのジョージ・ケンブリッジであり、それは妹や弟も同じこと。ただの学生として静かな学校生活を送っている……今のところは。
写真:ケンブリッジ公・公妃(ウィリアム王太子とキャサリン公妃)
王室関係者によると、ウィリアム王太子とキャサリン公妃は「ジョージ王子がいろいろな事情を理解できる年齢に達したことをわかっている」という。『ピープル』誌が伝えた。同誌によると、ウィリアム王太子とキャサリン公妃は「戴冠式はクラスメイトの間で噂になるでしょうが、ジョージ王子が学校に戻った時に平穏な生活が戻るようにと気にかけている」ということだ。