「どうでもいい仕事(BSジョブ:Bullshit Jobs)」をしている人は意外に多い?:5つの「無益な」仕事とは
2023年8月に行われた調査によれば、現代社会における「仕事」はかつてのようにそれに従事する人々の心を満たすものではなくなっているという。働き世代の大半の人は、自分の仕事が社会に良い影響を与えているとは思っていないといういささか深刻な結果が提示された。
「無意味な仕事」という考え方は、現代社会における人びとの働き方について調査し定義しようとする専門家たちの間でいささか物議を醸している。
アメリカの人類学者デヴィッド・グレーバーは、著書『ブルシット・ジョブ どうでもいい仕事の理論』を発表、現代の仕事の約半分は無意味であるという論を展開した。
写真:Twitter @davidgraeber
グレーバーは役に立たないと思われる仕事を5種類のカテゴリーにわけた。「取り巻き」、「脅し屋」、「尻ぬぐい」、「書類穴埋め人」、「タスクマスター」だ。
グレーバーの本の説明によれば、「取り巻き」とはアシスタントなど、誰かを偉そうにみせるためだけに存在する仕事。「脅し屋」は雇用主に代わって他人を脅したり欺いたりする仕事でロビイストや顧問弁護士を意味する。
「尻ぬぐい」はあってはならない欠陥を取り繕うためだけに存在している仕事で、トラブルに対処するプログラマーなどを指す。「書類穴埋め人」とは、組織が実際にはやっていないことをやっていると主張するための仕事で、企業コンプライアンス担当者などがあげられる。
そして「タスクマスター」とは、会社にとって不要な従業員のために仕事を探し、割り当てるためだけに存在する仕事のこと。具体的には中間管理職などを指す。
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興味深いことに、グレーバーの大胆な論に同意する人の数はかなり多いことが判明した。スイスの社会学者の調査によれば、働き世代の大半が、自分の仕事が社会に利益を生み出しているとは感じていないというのだ。
スイスのチューリッヒ大学で社会学を研究するシモン・ワロは、多くの労働者が、自分の仕事は社会にとってほとんど、あるいはまったく役に立っていないと感じているという史上初の定量データを発表した。
画像:Twitter @SimonWalo
ワロは学術誌『Work, Employment, and Society』における発表を通じ、グレイバーの 「どうでもいい仕事(BSジョブ:Bullshit Jobs)」論を参考に、現代社会におけるこの問題がいかに深刻であるかを明らかにした。
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同氏は、米国で21種類の異なる職業に従事する1800人以上の労働者に、自分の仕事が役に立つと思うかどうか尋ねた。
同時に、自分の仕事が「地域社会や社会全体に良い影響を与えていると感じているか」どうかも尋ねた。
その結果、調査参加者の5分の1に当たる19%が、それぞれの質問に対して「(役に立っていると)一度も感じたことがない」または「ほとんどない」と回答しており、『ブルシット・ジョブークソどうでもいい仕事の理論』で語られた”無意味な仕事”の存在が浮き彫りになった。
「役に立たない仕事をしている」と考える人々の割合はその分野により大きく異なった。たとえばニュースサイト「PsyPost」によれば、教育や指導、図書館関連の職業に携わる人の間では、自分の仕事が「役に立っていない」と感じる人の割合はわずか4.6%にとどまった。
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しかし、輸送・運搬分野では、31.7%の人々が「役に立たない仕事をしている」と感じていた。また販売、金融、事務、管理職など、グレーバーも予測していたいくつかの職種では「役に立っていない」と考える人の割合が高いという結果が出された。
ニュースサイト「PsyPost」は、グレーバーが著書の中で指摘したいくつかの仕事(営業、事務、アシスタント、財務、管理職など)は、他の仕事と比べて、役に立たない仕事とみなされる可能性が高いと指摘。
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ワロはニュースサイト「PsyPost」にこう説明した:「最も重要な点は、グレーバーが「ブルシット・ジョブ」と表現した職業に就いている人ほど、自分の仕事が社会的に役立たずだと考えることが多いということです」
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さらにこう続けた:「グレーバーのいう職業に就いている人たちは、自分の仕事を社会の役に立っていないと考える人が多いだろうとは予想していました。しかし、その職業のすべてが上位に来るとは思っていませんでした」
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ワロは自身の研究が、職業の中にはそれに従事する人が無意味だと感じるようなものがあるという理論を裏付けるものだとした。そして、地球環境が危機に晒されている今、人々は与えられた時間や人的資源の無駄遣いをやめる方法について真剣に検討を始めるべきだろうと指摘した。