百花繚乱:各国の人々に愛されてきた25の国花
夏になると市場に出回り、フィンランドの夏の風物詩になっているスズラン。フィンランド独立50周年の1967年に、国民の投票によって国花に選定された。清楚で可愛らしい雰囲気とは裏腹に、花や根に猛毒をもつ。
世界最大の花ラフレシアは、インドネシアの数ある国花のひとつ。ボルネオ島近辺にしか分布しない希少な花で、最大で直径90cmほどの花を咲かせる。大きさもさることながら、肥溜めのような強い臭気を放つことでも有名。
夏になると王冠のような大きな花を咲かせることから、キングの名が付けられた。南アフリカでは、食器やテキスタイル、色々なものにキングプロテアのモチーフが使用されている。
ムラサキツメクサの根が持つ菌は、空気中の窒素を吸い込み土壌に供給する。そのためムラサキツメクサが咲く土地は肥沃となり、デンマークの牧畜業を豊かにすることから国花となった。
十字架に架けられたキリストを見送る、聖母マリアの目からこぼれた涙の跡に生えた花とされるので、カトリック教徒の多いスペインで古くから愛されている。母性愛を象徴する花でもあり、世界各国で母の日にカーネーションを贈る習慣ができた。
チューリップといえばオランダが有名だが、その起源はトルコにある。厳密にいうと中央アナトリアで、周辺のイラン、アフガニスタン、カザフスタンなどの国々もチューリップを国花としている。
16世紀にトルコからオランダへ持ち込まれたチューリップ。大人気となり価格が高騰するも、1637年に突然暴落したことから、世界最古のバブルとされる。現在、オランダのチューリップ球根生産量は世界一を誇り、世界シェアは9割に達する。
スモモは中国原産だが、セルビアで何世紀にもわたって親しまれているスリヴォヴィッツと呼ばれる蒸留酒がスモモからできるため国花となった。セルビアには「家を建てる最良の場所は、スモモが最も良く育つ場所」という諺がある。
メキシコ原産のダリアは、古くから食用そして薬用植物として重宝されてきた。18世紀後半にヨーロッパに持ち込まれてから観賞用となり、オランダから日本にも伝わった。
ナミブ砂漠にしか存在しない裸子植物で、被子植物の特徴も多くもつ。2000年近く長生きできる植物だが、現在絶滅危惧種となっている。色々な面で珍しい植物であることから「奇想天外」の別名をもつ。
オーストラリア南東部が原産のアカシアの仲間で、ヨーロッパではミモザの名で親しまれている。オーストラリア国家を象徴する色、すなわちナショナルカラーの緑と黄色からなる花で、オーストラリアの国章や勲章などに描かれている。
バラの品種はとても多く、3万から10万種あるという。そんな中で「バラの女王」と称されるのがダマスクローズ。シリアの首都ダマスカスにちなんで名付けられたとされる。
氷点下以下の気温にも耐えられる生命力にあふれた花。ノルウェーの荒野でも逞しく咲く花は、ノルウェーの人たちの心の象徴となっている。
アフリカおよび熱帯アジア原産の、落葉性の多年生植物。グロリオサの球根には毒が含まれているが、日本ではヤマイモに似ているため誤って食され、死亡したケースも報告されている。
クリスマスの象徴として日本でもお馴染みのポインセチア。原産地は中央アメリカだが、マダガスカルの国花となっている。ポインセチアの葉を半分に折ると、マダガスカルの島の形になることが理由の一つにあげられている。
可憐な白い花であることから「アルプスの妖精」と呼ばれている。低気温で乾燥したアルプス山脈の厳しい環境に耐えるため、産毛に覆われビロードのような花弁、固い葉をもつ。しかし、厳密には白い部分は花ではなく、葉が変化した苞葉で、花は中心にある黄色の部分。
ユリをパリ市のシンボルに採用した最初のフランス王はルイ7世。以降ユリは王家の血筋と繁栄のシンボルとみなされるようになった。
写真:Serafima Lazarenko / Unsplash
白い5枚の花びらをもち、中央が紫色をしているサンタ・カタリーナ州のシンボルとなる花。森林伐採や建物開発により何度か存在と自然繁殖が危険にさらされてきたが、1983年以降ブラジルの国花となっている。
30年にわたる内乱の「薔薇戦争」が由来となりイギリスの国花となった。王位をめぐって争った由緒ある貴族一族の紋章がバラで、赤いバラがランチェスター家の紋章に、白いバラはヨーク家の紋章に描かれている。バラはヘンリー3世の妻エレノアの出身地であるプロヴァンス地方からイギリスにもたらされた。
写真:Jerry Klein / Unsplash
アメリカには国花がなかったので、当時大統領を務めていたレーガン元大統領が署名した決議により、1986年からバラが国花に定められた。バラはワシントンDCのシンボルでもあり、アメリカン・ビューティと呼ばれている。
ウクライナ戦争により、ウクライナの国花であるひまわりは、国境や国を越えた連帯の象徴となる、より強力なシンボルとなった。
写真:Todd Trapani / Unsplash
ナポレオンがドイツへ攻め入った時、退却したヴィルヘルム1世が、ヤグルマギクの花束を編んで子供たちをあやしている母親と出会ったことが由来とされる。この光景に感銘を受けたヴィルヘルム1世は、ヤグルマギクを王国の紋章に採用した。
写真:Maja Erwinsdotter / Unsplash
ポルトガルに広く分布し、さまざまな効能をもつラベンダー。ポルトガルの国花で広大な紫色の花畑を(5月から8月にかけて)鑑賞することができる。
写真:Daiga Ellaby / Unsplash
ロシアの国花は、逆境に立ち向かう強さを象徴するカモミール。さまざまな用途や有効作用をもつことから国花とされた。
写真:Yaroslava Stupnytska / Unsplash
イチゴの木は、青や三色旗と同様、イタリアのナショナルシンボルのひとつ。その理由はまさに、緑の葉、白い花、赤い実が国旗に似ているからだ。