危険な牛追い祭り:スペインのサン・フェルミン祭
毎年7月6日から開催されるスペインのサン・フェルミン祭は、負傷者そして死者さえもでる危険な祭だ。スペイン北部の小さな街パンプローナの守護聖人であるサン・フェルミンを称える祭で、日本では牛追い祭と呼ばれている。牛追いとは、人々がゴールとなる闘牛場まで牛の前を走る行事で、米作家アーネスト・ヘミングウェイが『日はまた昇る』に反映させたことで世界的に有名になった。毎年数十人、あるいは数百人のランナーたちが、今回紹介する写真のような危険な場面に遭遇する。
牛追いは、中世からの伝統だ。 この危険な行事で、いったい何人の人々が悲劇的な死を遂げたのだろう?公式の記録では、1900年以降16人が亡くなっている。牛の角にかけられたり、牛の蹄の下敷きになったりしたためだ。
牛追いは、気軽な気持ちで参加するものではない。実際、放たれた牛の前を走る人々は練習や経験を積んだ人がほとんどであり、警察が酔っ払いを取り締まる一方、ベテランランナーたちは不適切行為をするランナーたちをコースから追い出している。
以前は今ほど多くの安全対策はとられておらず、警察はただ見守るだけだった。そのため、牛追いをよく知らずに走る人や、徹夜パーティ明けに酩酊状態で参加する人もいた。
サン・フェルミン祭には、悲劇の影がつきまとう。巨大な角をもった体重500キロに達する動物たちの前を、小柄な人間たちが走ろうとするのだから危険を避けることはできない。
牛追いのコース沿いには、ランナーにとって危険なポイントがいくつかある。中でも最も危ないとされているのが、ゴールとあたる闘牛場へと続く道だ。細い道で誰かが転倒すると他のランナーたちも巻き込まれ、地面に折り重なるように倒れる。そこへ牛たちがやってきて、情け容赦なくその上を走っていったり、倒れたランナーを角にかけたりするのだ。写真は1988年のもの。
1988年に撮影されたもう1枚の写真は、闘牛場に無傷で辿り着いたとしても、そこで危険が去るわけではないことを示している。
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牛がランナーに突進することが必ずしも死を意味するとは限らないが、重傷を負うケースもある。写真のランナーは、九死に一生を得た。
牛が放たれる場所から闘牛場までのルートで、ランナーや牛が転倒することもよくある。
近年は、動物愛護の精神からサン・フェルミン祭に批判的な人も多くなった。
牛追いの様子は国内でテレビ中継される。牛に突進されるのを辛うじて逃れたランナーの様子に、不謹慎な好奇心をそそられる人が多い。その一例がこの写真だ。
この写真の人物は、牛から逃げ出さなければならなかったが、かなり肝を冷やしたことだろう。
時には牛の角がランナーの体のすぐわきをかすめていくこともある。
近年は参加者数の多さが問題となっている。走る人があまりに多いと転倒や玉突き事故の危険性が高まる。
サン・フェルミン祭には、世界中から多くの観光客が訪れる。牛追いが大きな魅力の一つではあるが、街全体がお祭モード一色となる素晴らしい祭だからだ。
最悪の状況といえば、牛と牛との間に挟まれてしまうことかもしれない。
経験豊富なランナーほど、地面に倒れこんだときの体勢や、牛が通り過ぎるまで落ち着いてじっとしている方がいいと知っている。すぐに起き上がることは、死を意味することもあるのだ。
牛追い、そして闘牛はスペインに限ったものではない。フランスやポルトガル、ラテンアメリカでも開催されている。