名作映画に登場した、ストーリーのカギを握るアイテムたち:いくつ知ってる?
この宝石を覚えている人も多いだろう。ジェームズ・キャメロン監督の映画『タイタニック』(1997)でヒロインが身に着けていた「碧洋のハート」だ。映画のラストでヒロインがこの宝石を海に投げたときには息をのんだ観客も多かっただろう。撮影で使われた宝石はジルコニア製だったが、後に本当のブルーサファイアとダイヤモンドを使ったものが製作されチャリティーオークションにかけられた。宝石は220万ドル(当時のレートで約2億7500万円)で匿名のバイヤーが落札したが、落札者の許可を得たセリーヌ・ディオンが1998年のアカデミー賞授賞式にこの宝石を着用して臨んだ。
1977年に公開されるやいなや、『スター・ウォーズ』はその特殊効果やストーリーで観客を魅了、映画界を席巻した。その映画の繰り広げるSF世界の中で、ジェダイの騎士が持つ武器がライトセーバーだ。発案者は装置監督のロジャー・クリスチャンで、これぞという武器を探し求めていた時にハンドル付の撮影用フラッシュを見たことがきっかけとか。こうして、映画史に残る伝説的なアイテムが誕生した。
『オズの魔法使い』(1939)でドロシーが履いているルビーレッドの靴はおそらく映画史上最も有名な靴だろう。ドロシーがこの靴を履いて黄色いレンガ道を歩くシーンはオズの不思議な世界の幕開けと終わりを告げる印象的なシーンだ。その不思議な世界でドロシーはかかしとブリキ男、そしてライオンとともに冒険することになる。
ディズニーの作品にでてくるアイテムといえば、『アラジン』(1992)のランプに触れないわけにはいかない。磨くと魔人が出てきて願いをかなえてくれるというのはおなじみだ。もちろん、自分の意思を持った魔法の絨毯のことも忘れずに。
『ジュラシック・パーク』(1993)では、恐竜を蘇らせるために大富豪のジョン・ハモンドがあるものを使った。中に蚊が閉じ込められた琥珀だ。その蚊からさまざまな過去の生物の血を採取、その遺伝子情報から現代に恐竜を蘇らせたという設定だ。琥珀は映画を通じて非常に重要で象徴的なキーアイテムとなり、それはハモンドの携行する杖にもデザインとして組み込まれるほどだった。
J. R. R. トールキン原作、ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)ではストーリーを貫く重要アイテムがある。それはなんと……指輪だ。闇の冥王サウロンが作った「一つの指輪」はほかの力の指輪を支配する力を持ち、サウロンはこれを用いて中つ国(ミドル・アース)の自由な地を支配した。普段は何の変哲もない指輪だが、火にくべるとエルフ語で次のような文章が現れるとされている:「一つの指輪は全てを統べ、一つの指輪は全てを見つけ、一つの指輪は全てを捕らえて、暗闇の中に繋ぎとめる」
ムンクの『叫び』も髣髴とさせるこのマスクを見ると、数々の恐怖がよみがえるという人も多いだろう。ホラー映画『スクリーム』(1996)は傑作と呼ぶのは憚られるが、90年代を代表するホラー映画ではあり、登場する殺人鬼とこのマスクは多くの人の記憶に残った。このマスクは長く綿密な調査のすえに採用されており、最初に発見されたのは倉庫の片隅の箱の中だったという。製造会社のファンタスティック・フェイシズ社から権利を獲得して映画で活用、誰もが知るトレードマークと化した。
クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』(2010)でレオナルド・ディカプリオが使うコマも重要なアイテムだ。この映画ではディカプリオらが他人の夢に侵入。その際自分が夢にいるのか現実世界にいるのかを判断するために各々が携行する「トーテム」と呼ばれるアイテムがあり、ディカプリオ演じるキャラクターはこのコマを持ち歩いているのだ。自然と回転が止まれば現実世界、いつまでも回り続ければ夢の中というわけだが、夢と現実を区別するのは劇中のキャラクターにとっても、観客にとっても難しい。
『マトリックス』(1999)でモーフィアスがネオに提示する赤い薬と青い薬は近作の『マトリックス レザレクションズ』(2021)でも再登場した。赤い薬を飲んで全く新たな現実に向き合うか、青い薬を飲んでいままでの単調な生活を続けるかという問いは多くの人に難問を突き付けた。
映画シリーズ『インディー・ジョーンズ』といえば、ハリソン・フォード演じる主人公が身に着けるあの帽子とジャケット、そして鞭が欠かせない。印象的なフェドーラ・ハットは最初は帽子メーカーのハーバート・ジョンソン・ハットのものが用いられ、続編ではエディー・バロンやスティーヴン・デルクなどのデザイナーのものが使われた。また、撮影では30以上の鞭が使われているが、そのすべてがデヴィッド・モーガンによるハンドメイドだ。
『ジュマンジ』(1995)に登場するゲームは驚きの品だが、そのゲームを収めた箱もまた映画を象徴するアイテムだ。ただの色付きの木箱ではなく、「ジュマンジ」と大きく書かれた周りにはジャングルや猿、象、サイ、そしてハンターのヴァン・ペルトなど内側のファンタジー世界をあらわすさまざまな絵柄が書き込まれている。アラン・パリッシュとサラ・ウィットル、そしてジュディとピーターがこれらの危険をくぐりぬけることになる。
『メン・イン・ブラック』(1997)では不幸にもエイリアンを目撃してしまった一般人に対して記憶を消去するニューラライザーが用いられる。ウィル・スミス演じるJやトミー・リー・ジョーンズ演じるKなどのエージェントたちはしばしばニューラライザーが必要な事態に対処しており、「不幸な一般人」はひとりふたりどころではない数になっている。
デロリアン・モーター・カンパニー(DMC)のスポーツカー、DMC-12は1981年から1982年にかけて製造された。1982年10月にDMCが倒産したことで、同社が開発した唯一の車種となった。このレアな車が世間の注目を集めることになったのは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでの活躍のたまものだ。作中でエメット・ブラウン博士(通称ドク)がこの車を改造してタイムマシンを作成、マーティとともに時をかける冒険に臨むことになる。マーティのスケートボードや衣装とならんで映画を象徴するアイテムだ。
印象的な車といえば『ゴーストバスターズ』(1984)も忘れずに。おまけにぶよぶよの緑色のおばけもでてくる。さまざまなガジェットが登場する映画だけに一点だけ選ぶのは難しいが、写真に写っているのはそんなゴーストたちを捕らえるのに使われたゴーストトラップだ。ケーブルのつながった不思議な箱で、バスターズたちがプロトンパックから発生するレーザーを使ってゴーストをこの箱に押し込める。
『スクリーム』に続いてもうひとつマスクの登場だ。『羊たちの沈黙』(1991)でハンニバル・レクターが付けていた口枷は、映画史上もっとも有名な食人者の口元を彩る恐怖アイテムだ。とうぜん多くの観客の印象に残り、ハロウィンの定番アイテムと化した。
今回紹介する最後のマスクは『Vフォー・ヴェンデッタ』(2005)のもの。もともとは実在人物であるガイ・フォークスの顔を模したものだった。フォークスはカトリックの活動家であり、1605年に起きたイングランド国教会体制の転覆を目論む事件「火薬陰謀事件」の一員だった。映画では全体主義体制に反逆する革命の象徴として扱われている。
『ハリー・ポッター』シリーズには多くの象徴的なアイテムが登場する。さまざまな小道具や分霊箱、ホグワーツ各寮の制服などなど……だがあえてどれか一つ代表的なものを選ぶとなれば、主人公ハリー・ポッターの杖ということになるだろう。「柔軟性に富み美しい」杖は長さ28センチ、ヒイラギ製で芯には不死鳥の尾羽根(アルバス・ダンブルドアの不死鳥、フォークスのもの)が入っている。
実を言うと、ジェン=ピエール・ジュネ監督の映画『アメリ』(2001)の主人公アメリ・プーランがここで持っているスプーンは映画内でそれほど重要なアイテムというわけではない。それでも印象的なシーンで登場していることは確かで、これはオドレイ・トトゥ演じるアメリが観客に日々のささいな幸せについて語ろうとしているところ。その幸せのひとつが、「クレーム・ブリュレのカラメルをスプーンで割るとき」というわけだ。
クリプトナイトはスーパーマンの故郷クリプトン星に由来する物質で、緑色に光るグリーンクリプトナイトはクリプトン人であるスーパーマンを弱らせる唯一の弱点となっている。クラーク・ケントにとっては致命的な物質だが、原作であるコミックも含めたシリーズを象徴するアイテムだ。
アニメーション映画にもいくつか印象的なアイテムが登場する。たとえばディズニーの『美女と野獣』(1991)では、枯れるまでに自分を愛する人を見つけねばならないという呪文の期限を示すバラと、何でも映す魔法の鏡が忘れがたい。