米女優ジーナ・ローランズが死去:『こわれゆく女』や『きみに読む物語』で活躍
映画『きみに読む物語』等に出演した女優ジーナ・ローランズが94歳で死去した。エミー賞を3回受賞、アカデミー賞には3回ノミネートされたベテラン女優の死について。その息子で映画監督のニック・カサヴェテスが明らかにした。
現実は小説よりも奇なりというが、フィクションの中の出来事が現実となることもある。ジーナ・ローランズの場合、代表作のひとつ『きみに読む物語』で演じた主人公アリー(老年期の役)と同じような境遇に陥ってしまったのだ。
画像:New Line Cinema
『きみに読む物語』では主人公アリーの若い頃をカナダ出身の女優レイチェル・アクアダムスが、アルツハイマー症になった老年期をローランズが務めている。
ローランズの息子で『きみに読む物語』を監督したニック・カサヴェテスは以前、母親と主人公アリーの共通点についてや、困難に直面した家族の姿を描く作品を2004年当時に制作したことの意義について語っている。
ニック・カサヴェテス監督は『エンターテインメント・ウィークリー』 誌に対し、「主人公アリーの老年期を母が演じることになり、できるだけリアルな表現をするために互いに長い時間をかけて話し合った」ことを明かした。
「母は5年前にアルツハイマー型認知症を発症し、現在まで続いています。母があの作品で演じたとおり認知症はきわめて困難な病であり、わたしたち家族はまさにそうした状況に直面しています」
ただし、フィクションと現実の間には共通点もあれば相違点もある。『きみに読む物語』でアリーと恋に落ちるノアの若い頃はライアン・ゴズリングが演じ、老年期はジェイムズ・ガーナーが務めた。作品では年老いたノアとアリーが寄り添って死を迎えるが、ガーナー本人は2014年7月に他界している。
また、ジーナ・ローランズの長年の伴侶で映画監督のジョン・カサヴェテスは、1989年に59歳でこの世を去っている。ローランズは2012年に俳優ロバート・フォレストと再婚したものの、ローランズと最初の夫ジョン・カサヴェテスは女優と監督として多くの名作を生み出し、ハリウッド映画史にその名を刻んだ。
ジーナ・ローランズが未来の夫ジョン・カサヴェテスと出会ったのは、二人がニューヨークの演劇学校「アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツ」で学んでいた時のことだ。
二人のラブストーリーには、『きみに読む物語』といくつもの共通点がある。ジョン・カサヴェテスはギリシャ系移民の二世で女性に目がなく、ジーナ・ローランズは裕福な家庭出身のお嬢さまで、学生時代からスターのような輝きを放っていたという。
二人はあっという間に恋に落ち、やがて結婚。カサヴェテスが56歳でこの世を去るまで二人は連れ添ったほか、キャリアにおいては映画『フェイシズ』や『こわれゆく女』『グロリア』など、合計10本の作品でコラボレーションを果たした。
二人の間にはニック、アレクサンダー、ゾエという子どもが生まれ、現在はそれぞれ映画界で活躍している。
2004年、ジーナ・ローランズは『Oマガジン』誌に対し、「息子ニックが監督でなければこの仕事を引き受けていなかったでしょう。とても大変な役でしたからね」と語っている。この意義深い作品を世に送り出したニック・カサヴェテス監督に感謝するとともに、ローランズの冥福を祈りたい。