新海誠監督のキャリアと作品を振り返る:17年前のアニメ作品『秒速5センチメートル』が実写化へ
2024年9月、『君の名は。』や『すずめの戸締り』が大ヒットした新海誠監督の作品『秒速5センチメートル』が、公開から17年の時を経て実写映画化されることが発表された。
画像:Kyodo / Kyodo News Images
新海が監督を務め、2025年秋に公開を予定している。主演は男性アイドルグループSixTONESの北村北斗で、今作が映画としては単独初主演作となる。
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2007年に公開された『秒速5センチメートル』は、背景の美しさ、音楽、何歳の頃にこの作品に出会ったかによって異なる感情移入ができる物語として世界中を魅了した。ちなみにタイトルの『秒速5センチメートル』は、桜の花びらが落ちる速度だという。
『週刊プレイボーイ』誌によれば、新海のアニメ原体験は宮崎駿監督の作品だという:「僕の作品に具体的な影響を与えているとしたら、背景のカラーリングでしょうか。鮮やかな色といい、白い雲といい、景色がこんなにもカッコよくて面白いものなんだと教えてもらったのは、ジブリのような気がします」
J-WAVEの『GOOD NEIGHBORS』に出演した際に、新海はこう語っている:「昔から、特別絵が得意というわけでもなく、美術部に入ったり、漫画を投稿したこともないんです。今でもすごく苦手だなと思いながらやっています」
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『日経新聞』によれば、新海は「絵というよりも言葉、音の人間」だと明かしている。それでも「やるべきことはアニメーション映画」との強い思いを持つという。
「アニメは時間軸を含めすべてを抽象化して表現できる。街並みを描くにしても、美しい部分あるいは不穏な部分だけを抜き出し、情報量を整理して表現できる。物語を伝える器として非常に優れている」
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新海は1973年に長野県で生まれた。中央大学の文学部に在籍中、アルバイトとしてゲーム会社で働き始め、卒業後に正式入社している。
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新海の名を一躍有名にしたのは、初の劇場公開作となった『ほしのこえ』(2002年)だ。それまでは大学卒業後に入社したゲーム会社でオープニングムービーなどを手がけながら、自主制作アニメを作っていたという。
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『ほしのこえ』は日本のアニメ界に大きな衝撃を与えた。監督、脚本、絵コンテ、作画、美術、3DCG、撮影、編集、そして声優に至るまで、新海がほぼ1人で手掛けた作品だからだ。製作に集中するためゲーム会社を辞め、約8ヵ月自宅にひきこもり、パソコン1台で作り上げたという。
自主制作映画界の中には一人で実写映画を作る人もいるが、『ほしのこえ』は手間暇そして費用もかかるアニメーションだ。さらには作品は桁外れの完成度を誇っていた。こうして日本のアニメ界を震撼させた新海は、新世代アニメーション作家として時代を切り開いていく。
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『ほしのこえ』以降はスタッフを集めて制作するようになった。『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』とヒット作を重ね、いずれも国内外で数々の賞を獲得した。
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2011年公開の『星を追う子ども』は、新海の劇場映画の中で唯一赤字となった作品だ。これまでとはかなり異なる作風で、ファンや業界の間に賛否両論を巻き起こした。
2013年公開の『言の葉の庭』では、圧倒的な映像美の中で繊細な恋の物語を描いた。ドイツのシュトゥットガルト国際アニメーション映画祭の最優秀賞を得たほか、最終興行も1憶5,000万円に達したという。
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そして、空前の大ヒットとなる『君の名は。』が2016年に公開された。錚々たるアニメーターを迎え、SF要素をはじめエンターテーメント性に溢れた作品は、アニメファンだけでなく幅広い層の支持を得た。その結果、日本国内における興行収入は250億円を突破し、邦画の収入ランキング史上第3位を記録した。
さらに『君の名は。』は、シッチェス・カタロニア国際映画祭・アニメ作品部門の最優秀長編作品賞をはじめ、国内外で数々の権威ある賞に輝いている。
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2019年には『天気の子』が公開され、142,3億円を超える大ヒットとなった。『君の名は。』を上回る世界140の国と地域で公開され、米アカデミー賞国際長編映画部門の日本代表にも選ばれた。
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2022年に公開された『すずめの戸締り』は東日本大震災から生まれたという:「震災後の私にあったのは、生活必需品ではないエンターティメント作品を作る『後ろめたさ』でした......『自分が被災者だったら』と強く真剣に考えるようになりました」『日本経済新聞』が伝えた。
そんな「後ろめたさ」から、震災をテーマにした『すずめの戸締り』(2022年)が生まれたのだ。「NHKニュース」によれば、新型コロナウィルスに戦争、個人の力ではなすすべもない状況に翻弄される現実世界を描くとき、震災というテーマは避けて通れなかったという。
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しかし、映画公開後は不用意に被災者を傷つけていないか、楽しんでもらえているだろうかと情緒が不安定な時を過ごしたという:「今まで自分の作ったものを世の中にさし出すときは、多かれ少なかれ「怖い」という感情があったのですが、こんなに怖いのは実は初めてです」
新海が自然災害をテーマに選んだのは初めてのことではない。『すずめの戸締まり』は地震だが、『君の名は。』で隕石、『天気の子』では大雨による水害をテーマにしている。そして「シネマトゥディ」のインタビューで自然の驚異を描く理由をこう語っている。
「自然災害というのは、誰の身にも降りかかる可能性がある、自分の生活を左右するような大きな出来事。そういったものを描写することで、物語の世界が自分たちと地続きにあるんだと感じられる。映画自体にもある種の強度が加わると思うんです」
新海はこれまで大体3年ごとに新作を発表している。「観客の人生を変えるような作品を作りたい」とする新海の新作を、世界中が待ち望んでいる。
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