手に汗を握る、スパイ映画・ドラマ20選
日常を忘れさせてくれるスリルにあふれたスパイ映画やドラマは数多い。今回はトップ20を画像付きでご紹介しよう。
1979年のイスラム革命下のイランを舞台とした、ベン・アフレック主演・監督の『アルゴ』。テヘランで発生したイランアメリカ大使館人質事件が題材になっている。歴史的事件に完全に忠実というわけではないものの、大ヒット作となり、2013年のアカデミー最優秀作品賞を受賞した。
ド・ゴール政権と当時の諜報機関に対する痛烈な風刺ドラマ、それが『シークレットサービス マル秘ミッション』。3シリーズを通して、シークレットサービスに入局したばかりの若者、アンドレ・メルロー(ヒューゴ・ベッカー)が、冷戦やアルジェリア戦争、旧アフリカ植民地との関係に翻弄されながら、諜報機関の現実を目の当たりにする物語だ。
不穏な空気が漂う1920年代のベルリンで暗闘するトロツキストと政治警察を3シーズンにわたって描いた『バビロン・ベルリン』。ナショナリズムの台頭で徐々に息苦しさを増す当時のドイツを背景に、犯罪と政治的陰謀の目まぐるしい応酬が繰り広げらる。
優れたスパイ物としての地位を確立した『The Bureau』。2015年から2020年にかけて5シーズンがリリースされた。主役の二重スパイ「マロトル」役をマチュー・カソヴィッツが務め、複雑かつ斬新、手に汗を握る展開を演じきった。この作品でフランスのスパイドラマはついに世界レベルに達した感がある。
アルコール中毒でCIAを解雇され、妻に浮気された元エージェントに降りかかる災難を、豪華キャスト(ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジョン・マルコビッチ)で描いたコーエン兄弟制作のブラックコメディ、『バーン・アフター・リーディング』。スパイ物とコメディがマッチすることを証明してくれた。
1960年代英国の名作、『オシャレ㊙探偵』。ジョン・スティード(パトリック・マクニー)とエマ・ピール(ダイアナ・リグ)のコンビが洗練されたスパイを演じた。イギリスらしいユーモアに満ちた、紆余曲折のストーリーは観る者を幻想的な気分にさせてくれる。
イギリス人作家ジョン・ル・カレの小説を映画化した『ナイロビの蜂』。エイズの流行が激しさを増すアフリカで幅を利かせる製薬業界を相手どって、腐敗と暴力の世界で奮闘するイギリス人外交官の物語だ。
2019年にリリースされたミニシリーズ『The Sleerpers』。見過ごされがちだが、精緻な時代考証でソ連崩壊時のチェコを再現している。主人公たちの本当の狙いが明かされる最後まで目が離せない。
2011年から2020年にかけて8シーズンがリリースされた『HOMELAND』。主人公は人知れず双極性障害に悩まされるCIAエージェントで、アルカイダに同調した元アメリカ兵が米国に攻撃を仕掛けてくると確信している。米国で繰り広げられる執拗なまでの追跡劇は、いまだに過激派テロの記憶に取りつかれている米国社会を浮き彫りにしている。
数々の秘密兵器や心強い仲間とともに、女王陛下のため困難なミッションをこなす世界一有名なスパイ、ジェームズ・ボンド。60年近くにわたって25作が制作され、6人の俳優がボンド役を務めた。ダニエル・クレイグの後継者は誰になるのか、そもそも、続編は作られるのかについては、まったく不明だ。
『ボーン・アイデンティティー』(2002)でスタートした映画シリーズ。マット・デイモンが主役のスパイ、ジェイソン・ボーンを演じた。記憶を失った元CIAヒットマンのリアルな冒険物語だ。
2005年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の『ミュンヘン』。1972年のミュンヘンオリンピックで自国選手を殺害されたイスラエルが、諜報機関モサドを駆使して犯人グループに執拗な復讐を行う。主役はエリック・バナ。
スパイ物のさきがけ、『0088/ワイルド・ウエスト』。19世紀終わりに米国で活躍した架空のスパイコンビが主役だ。ウエスタンにファンタジー、スパイがミックスされた独特な世界が魅力。
リュック・ベッソン監督が独特な美学を披露するスパイ映画の傑作、『ニキータ』(1990)。スパイ映画は地味だと思われがちだが、アンヌ・パリロー、チェッキー・カリョ、ジャン=ユーグ・アングラード、ジャン・レノなど大物俳優が多数出演している。フランス政府に暗殺者としてスカウトされた、ニキータを名乗る少女の成長物語。
仏語圏ではよく知られる『OSS 117』シリーズ。少々間抜けで差別と偏見に満ちたスパイ「OSS117」にまつわるコメディをジャン・デュジャルダンが好演。ナセル政権下のエジプトが舞台の『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』(2006年)、1960年代のブラジルが舞台の『OSS 117 リオデジャネイロ応答なし』に続き、最新作の『OSS 117 From Africa with Love』(2021年)では、ピエール・ニネとデュジャルダンのコンビが、独立を果たしたアフリカ旧植民地を舞台に活躍。このシリーズは1957年以来、何度も映画化されており、様々な俳優たちが演じている。
ロバート・デ・ニーロ監督の長編映画、『グッド・シェパード』。米国映画界の大物が多数出演しており、デ・ニーロ監督自身のほか、スコセッシ監督の映画でデ・ニーロと並ぶ常連のジョー・ペシ、さらにマット・デイモンやアンジェリーナ・ジョリーも名を連ねる。冷戦下のピッグス湾事件を背景に、主役のCIAエージェントの活躍とためらい、犠牲を描いた。
2016年にオリバー・ストーン監督が撮影した『スノーデン』。米国当局が展開する盗聴網を暴露し、世界的スキャンダルを引き起したアメリカ国家安全保障局(NSA)の元情報スパイ、エドワード・スノーデンの半生を辿った。
2012年にフランスで出版されたジョン・ル・カレの小説の映画化。冷戦の真っ只中、イギリス諜報機関の心臓部にもぐりこんだソ連スパイの捜査がテーマ。二重スパイの洗い出しに取り組むMI6元幹部役をゲイリー・オールドマンが好演、最後までハラハラさせてくれる。
スパイ映画に挑戦したエリック・ロメール監督が生み出したのが『三重スパイ』。スペイン内戦とヨーロッパ全体で台頭するファシズムを背景に、1930年代にパリに亡命したロシア人の物語だ。ヒーローに憧れる主人公だったが、彼の夢は無残にも歴史に打ち砕かれてゆく。
冷戦時代、東ドイツ社会全体に不信の種をまいた監視システムを素晴らしい筆致で描き出した『善き人のためのソナタ』。熱心な協力者までスパイ容疑がかけられる当時の有様を、ぞっとするほどリアルに再現したこの作品。公開は2006年だが、すでに名作の仲間入りをしている。
写真は主演俳優、ウルリッヒ・ミューエ。