いまさら聞けない?「おせち料理」のつくりと由来をチェック

お正月を彩るおせち料理
多様性の中にも意味や役割が
由来や役割を知ろう
基本の三種
数の子
黒豆
田作り/ごまめ
たたきごぼう
口取り
きんとん
伊達巻
かまぼこや昆布巻きも
紅白なます
酢ばす
コハダの粟漬け
ちょろぎ
焼き物
煮しめ
くわい(慈姑)
立派なおせち
新年を迎える気持ちが大事
お正月を彩るおせち料理

日本の新年を祝う際に欠かせないおせち料理。近年、家庭でつくる料理だけでなく、レストランやデパートからの「お取り寄せ」といった選択肢も豊富になっている。

多様性の中にも意味や役割が

おせち料理は実に多様で、ついあれもこれもと目移りしてしまうが、実はそれぞれの料理に意味や役割がある。その役割に応じて分類すると、おせちは三つ肴、口取り、酢の物、焼き物、煮しめの5種に大別することができる。

画像:南無観自在, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons

由来や役割を知ろう

おせち料理に込められた意味や、担っている役割をあらためて確認してみよう。そうすれば、手作りに挑戦する際の指針も立てやすくなるかもしれない。

基本の三種

三つ肴とは祝い肴とも言い、お正月を祝う料理のもっともシンプルなかたちだ。数の子と黒豆、そして田作りの3品が三つ肴として扱われることが多い。この3つとお雑煮、お煮しめがあれば正月料理として不足はない。

数の子

数の子とはニシンの卵のこと。干したり塩漬けにしたりしたものを水などで戻して食べる。なんといってもそのぷちぷちした食感が身上だ。たくさんの卵からなっていることから、子孫繁栄を願う気持ちが込められている。

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黒豆

黒豆は大豆の品種のひとつ。兵庫県丹波篠山市などが主な産地として知られ、「丹波黒」や「いわいくろ」などさまざまな品種がある。おせち料理では甘く煮たものを食べ、「まめ」に働けるようにとの願いが込められている。つやつやと皮の張りを保ったまま煮るのを不老の象徴と考えて重視する事もあるが、しわが寄ったものを長寿の象徴と捉える事もある。手作りするなら、しわのことはあまり気にしない方が楽にできる。

田作り/ごまめ

三つめの田作りは干したカタクチイワシを甘辛く炒めたもの。関西ではごまめと呼ぶのが一般的だ。かつてカタクチイワシが稲作の肥料として用いられたことなどから、豊作を願う気持ちが込められている。

たたきごぼう

ちなみに、関西では三つ肴としてごまめの代わりにたたきごぼうを入れることが多い。調理する時にごぼうを叩いて身を開くことから、開運を願うものとされる。材料も身近で作り方もシンプルなため、普段の食卓に取り入れてもいい一品。

画像:Ocdp, CC0, via Wikimedia Commons

口取り

続く口取りとは口取り肴の略で、かつてはお酒とともに供された品々だ。現在では役割が変わって甘めの味付けとなり、老若男女に好まれる品も多くおせちを彩る重要なレパートリーを構成している。

きんとん

口取りの代表格がきんとんだ。おせちには、甘く煮たさつまいもを裏漉ししたものに栗をまぜた栗きんとんがよく入れられる。漢字で書くと金団となるため、金運を願っているとされる。裏漉しが必要で家庭で作るのは大変だが、たくさん作っておけば好きなだけ食べられる。

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伊達巻

伊達巻も子供から大人まで人気のメニューのひとつ。彩りが良いだけでなく、形が巻物に似ていることから知識の向上を願う意味もある。魚のすり身を卵に混ぜて焼き上げるが、家庭で作る際は市販のはんぺんを使うと手軽だ。

かまぼこや昆布巻きも

他には、かまぼこや昆布巻きも口取りに分類される。かまぼこはその形が初日の出を連想させる他、伝統的な紅白の縁起良さも重視されている。昆布巻きは「よろこぶ」に通じるという語呂合わせだ。

紅白なます

おせちの酢の物といえば、なんといっても紅白なますだろう。細長くしたにんじんと大根を酢で和えたなますは彩りの縁起良さもさることながら、ともすれば野菜の不足しがちなお正月にありがたい品でもある。いろいろな作り方があるが、野菜に軽く火を通す煮なますにすると水も出ににくく日持ちもしやすい。

画像:Noupro, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

酢ばす

野菜系の酢の物でもう一つの定番が酢ばす。穴の空いた蓮根を使うことで、「先が見通せる」ので縁起がいいとされる。というわけで、穴を残した切り方にするのがおすすめだ。

画像:Ocdp, CC0, via Wikimedia Commons

コハダの粟漬け

江戸の年越しには欠かせないコハダの粟漬けも乙な一品。出世魚のコハダにあやかるという意味があるほか、粟を使うことから五穀豊穣の願いも込められる。東京以外ではあまり一般的ではないかもしれないが、見かけたら試してみて欲しい。

画像:農林水産省Webページ(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/34_21_tokyo.html)より

ちょろぎ

酢の物の変わり種がちょろぎ。不思議な形をしたちょろぎは当て字で「長老木」などと書き、長寿を願う祝いものとしておせちに取り入れられている。焼き物などに添えてアクセントにするのもおすすめだ。

画像:user:takoradee, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, via Wikimedia Commons

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焼き物

一方の焼き物はまさにおせちの花形。エビやタイなどを塩焼きにして詰めた時の見栄えの良さ、縁起の良さはいうまでもないだろう。煮しめで山の素材を多く使うことになるので、海産物を入れると取り合わせも良い。肉類を焼いたものを入れる時も、たとえば山椒を一振りすれば良いアクセントになる。

画像:経済特区, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

煮しめ

最後の煮しめは根菜類やこんにゃく、椎茸、鶏肉などを出汁でゆっくり煮込んだもの。おせちにおける縁の下の力持ち的存在であり、焼き物ほどの華やかさはないかもしれないが、心落ち着く安心感が重要だ。さまざまな材料を炊き合わせることから、家族が一丸となれるようにとの願いが込められている。

画像:経済特区, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

くわい(慈姑)

いつもの作り慣れた煮物でも十分だが、お正月らしさを取り入れるならたとえばくわい(慈姑)のような材料を取り入れてみるのも一興だ。慈姑はその「芽がでる」見た目が縁起が良いとしてお正月に好まれる食材。素揚げにしても美味しく、お酒がすすむ品となる。

立派なおせち

こういった料理を取り揃えれば立派なおせちの完成となる。重箱に詰めるときは一の重(一番上)に三つ肴、一番下のお重に煮しめを基本として、何段重ねかに応じて適宜調整しよう。例えば五段なら一番上に三つ肴、二の重に口取りと酢の物、三の重に焼き物、与の重(四は死に通じて縁起が悪いので「与」の字を使う)に煮物といった具合だ。五段目は「福を詰める」ために空にするか、作りすぎた分を入れて控えにしておこう。

画像:Ocdp, CC0, via Wikimedia Commons

新年を迎える気持ちが大事

とはいえ、あまり気負いすぎることはない。江戸時代、八代将軍徳川吉宗は「正月くらいは貧富の区別なく同じものを食べて祝ってほしい」という思いから当時手頃で安価な食材だった数の子を正月料理に加えるよう推奨したとされている。大事なのは新年を迎える心構えであり、おせちはそれを彩るものに過ぎないのだ。

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