68歳で代理出産したアナ・オブレゴン:亡き息子の精子から誕生した孫
代理出産を利用し、68歳にして子供を授かったスペインの女優兼TV司会者、アナ・オブレゴン。しかし、ただならぬ経緯から、世界的な議論の的となっているようだ。
このニュースを真っ先に伝えたのは『¡HOLA!』誌による独占取材だ。同誌の表紙には、アナが赤ちゃんを腕に抱えてマイアミの病院を退院する様子が掲載されていた。
画像:『¡HOLA!』
アナが2人目の赤ちゃんを授かったのは息子のアレスが亡くなってから3年後のこと。 アレスは2020年5月、ユーイング肉腫でこの世を去っていた。享年27。
赤ちゃんの父親については様々な憶測がなされていたが、アナ本人がついに『¡HOLA!』誌に驚くべき事実を打ち明けた。なんと、凍結保存されていた亡き息子の精子を利用したというのだ。つまり、アナは母でなく祖母だったということになる。
アナが同誌に語ったところによれば、息子アレス・レキオの最期の望みを叶えるためだったというのだが……
赤ちゃんはアナ・サンドラ・レキオ・オブレゴンと名付けられたが、これは亡きアレスの希望だったということらしい。サンドラというのはアレス(アレハンドロ)の女性形だ。一方、アナは母方の曾祖母(2021年に95歳で他界)の名前であるほか、祖母に当たる女優自身の名前でもある。
アナは生まれたばかりのサンドラの写真をInstagramに投稿。そこにはこのようなコメントが付されていた:「私のアレス。あなたをガンから守ると約束したのに、失敗してしまいました。でも、あなたの娘をこの世に連れてくるという約束は果たしました。現に、こうして私の腕の中で眠っています」
アナはさらに「彼女を抱きしめていると、あなた(アレス)をまた抱きしめているような、言いようもない気分になります」とコメント。
そして、亡き息子に宛てて「限りない愛をもってサンドラの面倒を見ることを約束します。そして、あなたは天国から私たちを支えてくれるでしょう。あの世ではあなたが、この世ではあなたの娘が私の人生です」と述べている。
『¡HOLA!』誌や『El Mundo』紙の報道によれば、赤ちゃんが誕生したのは3月20日。出産数日前には「赤ちゃんが人生最初の数日を過ごすため」の場所として、アナ・オブレゴンがマイアミのアパートを借りたと話題になっていた。
3月22日、アナ・オブレゴンは赤ちゃんを腕に抱いて退院。病院の方針に従って車椅子で出てきたという。
パパラッチに撮影された写真について、アナ・オブレゴンはInstagram上でコメントを発表。いわく:「キャッチされちゃった!愛に満ちた光が私の闇に差し込んでいます。もう独りぼっちじゃないわ」
アナ・オブレゴンの代理出産は極秘に進められており、計画を聞かされていたのはアナの姉妹と元パートナーでサンドラの祖父にあたるアレッサンドロ・レキオだけだった。
画像:アナ・オブレゴンのInstagramアカウントより。計画を知っていた人々も、誰一人としてメディアにリークしなかったという。
アナ・オブレゴンの妹、セリアは『El Mundo』紙に対し「アナは元気でとても幸せです」とコメント。しかし、赤ちゃんの誕生で、一家はまだ「衝撃」の最中にあるとしている。
アナ・オブレゴンは赤ちゃんを連れてスペインに帰国するまで、数週間フロリダで過ごすことになっているという。CNN放送が伝えたところによれば、サンドラは米国のパスポートを保有しているが、「スペインに帰国する前にマイアミのスペイン領事館で出生登録を行う」のだそうだ。
アナ・オブレゴンは以前から審査員として参加していたTV番組『Mask Singer: Adivina quién canta』(『ザ・マスクド・シンガー』のスペイン版)で、スクリーンに復帰する予定だ。
画像:Antena 3
さらに、ガンとの闘いを推進するアレス・レキオ財団の活動や、息子が未完で遺した書籍『トガリネズミの少年(El choco de las muserañas)』の出版といった作業にも取り組んでいる。
アナは亡き息子に宛てて、「私はこの作品を通して、子供を失った母親が直面する感情の嵐と、あなたの娘アニータ(アナ・サンドラのこと)の誕生という奇跡に至る道のりを語ります」とコメント。
しかし、アナ・オブレゴンのただならぬ代理出産劇は、スペインメディアで大きな議論を呼ぶこととなってしまった。68歳という年齢や代理出産という手段、メディアとの関わり方が問題視されたのだ。
CNN放送が伝えているように、スペインでは代理出産が法律で禁止されているほか、英国をはじめとする国々でも多くの制限が課されている。一方、メキシコや米国では経済的に余裕があれば、プロセスそのものは「シンプル」だ。スペイン紙『El País』は、裕福な人々が自分たちの子供を代わりに妊娠してくれる女性を探しに海外に向かう傾向が高まっていると指摘。「出産のグローバル産業化」と呼んで批判した。
CNN放送によれば、スペインメディアはサンドラの誕生がわかると、その代理母を追跡し始めたという。そして、同局は『Letras』誌が件の代理母について「フロリダに住むキューバ出身の女性だと突き止め、表紙に写真を掲載した」と報道している。
CNN放送はまた、スペイン政治コミュニケーション協会(ACOP)のベロニカ・フマナル会長が「(アナ・オブレゴンによる)告知はディストピアを描いたTVドラマ『ブラック・ミラー』を想起させる」と批判の言葉を口にしたと伝えた。
CNN放送の報道によれば、フマナル会長は「(アナ・オブレゴンは)亡き息子の精子を使って孫を買ったんです。そして、赤ちゃんの顔にカメラをフォーカスすると、メディアに売りつけたわけです」と述べたという。
スペインでは議会の場でも代理出産が議題になっており、イレーネ・モンテロ平等相はこれについて次のようにコメント。
モンテロ平等相いわく、セクシュアリティと出産に関する新法によれば、代理出産は「女性に対する暴力の一形態」に分類されるのだ。
また、マリア・ヘスス・モンテロ財務相も、スペイン社会労働党は代理出産に反対の立場だとコメント。RTVE放送が伝えたところによれば、声明の中で「女性の身体に対する搾取の一形態」に他ならないとした。
一方、アナ・オブレゴンは、スペイン国内からの批判の声を「ばかげている」と一蹴。CNN放送によれば、アナは「米国当局によって赤ちゃんの母親であると認められたことを示す書類を保持しており、海外で生まれた子供を養子にするのはスペインでも合法」だという。
『¡HOLA!』誌とのインタビューの中で、米国では代理出産が「とても一般的」だと主張したアナ・オブレゴン。実際、米国のメディアはスペイン国内で巻き起こった議論については報じたものの、米国における代理出産の是非については触れようとしなかった。
ところで、亡きアレス・レキオの父でTVパーソナリティのアレッサンドロ・レキオ(つまり、サンドラの祖父)は何と言っているのだろう?今のところ彼の立場は不明であり、今回の件に関するコメントもなされていないという。
ただし、『Semana』誌をはじめ、アナ・オブレゴンとアレッサンドロ・レキオの間に溝があることを仄めかす報道も流れ始めている。同誌はアレッサンドロの言葉として、「自分は知らされていなかった事実に直面している」という表現を掲載したのだ。