ゴールデングローブ主演男優賞を受賞した真田広之:ジャパンアクションクラブ時代からのキャリアを追う
第82回ゴールデングローブ賞の授賞式が今月5日に開催され、ディズニープラスのドラマ『SHOGUN 将軍』で主役を務めた真田広之(64歳)が、テレビドラマ部門の主演男優賞をみごと受賞した
同作品は1980年に三船敏郎が出演した米ドラマのリメイクで、英国のジェームズ・クラヴェルによる小説『将軍』を原作としている。この作品で真田は徳川家康をモデルにした主役を演じるだけでなく、プロデューサーも兼任している。
『SHOGUN 将軍』はゴールデングローブ賞の作品賞、主演男優賞(真田広之)、主演女優賞(アンナ・サワイ)、助演男優賞(浅野忠信)を受賞。ノミネートされた全ての賞を制し、4冠を達成した。なお、日本人俳優がゴールデングローブ賞で主演男優賞、そして助演男優賞を獲得するのは、いずれも史上初の快挙だった。
「BBCニュース」によれば、同作品でプロデューサーも務めた真田は、日本文化を「正しく伝統的な形で」伝えるため、「日本人の視点を脚本に埋め込み」、時代劇の専門家を起用したという。撮影当初はセリフの7割が日本語という作品が、世界に受け入れてもらえるのか不安もあった。
しかし、そんな心配は杞憂に終わり、『SHOGUN 将軍』の第1話は配信開始から6日間で全世界900万回再生を記録する大ヒットとなった。真田をはじめ俳優陣の熱演は、回を重ねるごとに大きな評判を呼んだ。
また、2024年9月15日に開催された米テレビ界最高の栄誉「エミー賞」では、同作が主要部門を総なめにして大きな話題となった。作品賞、主演男優賞、主演女優賞をはじめ、18の賞を制し、エミー賞史上最多の受賞記録を打ち立てたのだ。
「スカパー!」によれば、真田は「日本人の納得するかたちで海外に日本の時代劇を紹介したい」という思いが強かったのだという。自身のこだわりやキャリア、総力をあげて「とにかく王道でいこう」と『SHOGUN 将軍』を製作したという。
そんな真田の俳優としてのキャリアは5歳の時に始まった。「劇団ひまわり」に入り、中学入学と同時に国際的アクション俳優の故千葉真一が主宰する「ジャパンアクションクラブ(JAC)」に入団した。
千葉は「肉体によってどんな表現でもできるように準備していることが演技の基本であり、その中には危険な動きもこなせることが含まれる」とし、アクション=演技と考えていた。そのためJACからは、真田を筆頭にアクションができる上に演技力も高い俳優が多数輩出したと「JIJI.COM」が伝えている。
エンタメサイト「ナタリー」によれば、真田は13歳の時にJACの最年少メンバーとなり、16年間在籍した。その間に、俳優としての基礎と師である千葉との特別な絆を築き上げたという。
同サイトによれば、千葉はこう語っていたという:「僕はアクションが好きで、俳優として東映に入社したときから本格的なアクション映画を創りたいと念じていた。だがそれが果たせないままに年月が流れ、ようやく機会が訪れたとき、体は若い頃のようにどうしても動けない......果たせなかった夢を広之で果たしたい。広之は僕の分身なんです」
真田は『GQ』誌でこう語っている:「他の仕事はしたいとも思いませんでしたし、考えたこともありませんでした。私にとって俳優を目指すのは、とてもシンプルで自然なことでした」
真田がブレイクしたのは『里見八犬伝』(1983年)がきっかけだ。当時、人気を博していた薬師丸ひろ子とのラブシーンを演じたことも大きな話題となった。以降、さまざまな映画やテレビ作品で主役を務め、一躍人気俳優となった。
俳優として知られる真田だが歌手としての一面も持ち合わせている。『東京スポーツ』紙によれば、かつて一世を風靡したアイドルグループ、チェッカーズのデビュー曲「ギザギザハートの子守唄」は真田が歌うはずだった。しかし、事務所から「真田には合わない」と却下されたという。
真田は日本舞踊で名取となり、「玉川大輔」の名も持っている。母の勧めにより中学生のときに入門した玉川流のサイトでこう語っている:「......時代劇で役を演じる上で、着付けや所作、殺陣に至るまで日本舞踊は不可欠です。また技術だけでは無く、稽古や訓話を通して得た、芸事に関わる者としての”志”。それは私の精神の礎となり、今現在も活動の原動力となっております」
近年はアクション俳優のイメージからの脱皮も図っていた。『産経新聞』にその理由をこう語っている:「世界が求めるアジアはジャッキー・チェンであったり、ジェット・リーであったり、もしくはサムライ。すごく限られているじゃないですか。そうじゃなくて、時間がかかっても本業の芝居で世界に通用する役者になりたかった」
真田は1999年に、史上初、そして唯一の日本人キャストとしてイギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニーと日本の共同制作による舞台『リア王』に出演。両国で高い評価を受けただけでなく、英国文化の普及に貢献したとして、イギリスから名誉大英帝国勲章第5位を授与されている。『四国新聞』が報じた。
『産経新聞』によれば、『リア王』に出演する前の真田の英語力は、日常会話程度だった。半年間日本とロンドンを行き来し、5人のコーチから猛特訓してもらい舞台に挑んだという。
そして2003年、身に着けた英語力を生かしてハリウッドの大作映画『ラスト サムライ』への出演を果たす。同作は大きな成功を収め、それを機に真田はロサンゼルスに拠点を移し、数々の映画で名立たるスター達と共演するようになる。
米国に拠点に移してから約20年。集大成として臨んだ『SHOGUN 将軍』で、真田は役者としてだけでなく、プロデューサーとしても大きな成功を収めた。
米「Deadline」によれば、同作はすでにシーズン2、およびシーズン3の制作が決定している。今のところシーズン2で真田が主役兼プロデューサーを続投するのは確定だが、その他のキャストは未定だという。いずれにせよ、再び大きな話題となる作品となるに違いない。