古代の哲学に学ぶ幸せに生きる秘訣

幸福を追い求める気持ちは人類誕生以来変わらず存在する。できるだけ幸せな人生を送るためにはいったいどうすればいいのだろうか。人生にはどのような意味を見出すべきなのだろうか。日々加速する現代社会にあって、このような問いのもつ意義はいや増すばかりだ。

だが、人生の問題に正面から取り組もうとしてもいろいろなことに邪魔されてしまうのが現代社会だ。生産性の向上が常に求められ、パンデミック下でひととのつながりもままならない。国際社会は混迷を極め、環境問題も無視できない。

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こういった状況に対処するための処方箋もいろいろと出されていはいる。ヨガ、カウンセリング、適切なコーチに指導してもらうなどなど……だが、この問題への答えが意外なところにもあるかもしれない。古代の哲学も人生の問題について深く考えており、現在のわれわれの生活を改善するための深い教えがたくさん含まれているのだ。

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ニコラ・リジマキオが『昔の人はわかってた Ils avaient tout compris』という本で示そうとしたのもそういうことだ。リジマキオによると、古代の哲学者の思想は「便利な道具箱とでも言うべきもので、調子が悪くなってしまった私たちの生活を直したり改善したりするのにうってつけ」で、「よりよく生きるためには必要不可欠」なのだという。

古代ギリシャやローマの思想家が提唱した生活のあり方は2000年以上前のものだが、いまの私たちにとっても参考となるものがある。その概要を紹介しよう。

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一番最初にやるべきなのは自分自身がどのような存在かを問い直すことだという。こういった自己省察が必要なのは、ソクラテスが言ったように「魂の探究なき生活は生きるに値しない」からだ。

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自分について考えることは外の世界を眺める際にも有用だ。自己への理解を深めると、いままでの自分の偏見や思い込みを認識することができるようになるからだ。他人や環境と自己を調和させる最高の方法だと言えるだろう。

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ストア派の哲学者にとって、幸福であるというのは自らコントロールできないことから自分を解放することだという。具体的には、怖れや渇望といった望ましくない感情を捨て去ることだ。

人間は自分の人生しかコントロールすることはできないのだから、自分について他人がどう考えるかということも気にするべきではない。特に嫉妬や羨望などの他人のネガティブな感情は無視するべきなのだという。

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従って、ストア派的な幸福とはあるべき姿を受け入れることであり、自らの力の及ぶ範囲のことしか望まないことが大事だとされる。なぜなら、エピクテトスが言うように「自由を望むものは自分だけの力でコントロールできないものを望むべきではない。さもなくば、必然的に奴隷となってしまう」のだから。

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それはある種の苦しみを受け入れることでもある。自らの精神的な力を養い、叶わぬ欲望を捨て去ることを学ぶ必要があるのだ。また、そういった欲望を完全に捨て去ることができなくとも、その欲望を適切に方向づけることができれば少なくとも苦しみを減らすことはできる。

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古代の哲学者にとって、友情は健全な生活に必要不可欠なものとされた。紀元後二世紀の思想家にして皇帝のマルクス・アウレリウスはこう書いている：「人間はお互い同士のために創られている。教え諭すか、さもなくば耐えよ」

死は避けがたいものであり、それについて心配していると生そのものが損なわれてしまう。この問題への古代人の解答は、生を満喫することだった。幸福で満たされていれば、死への不安も中和されるだろう。

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日々時間に追われる現代社会には耳の痛いアドバイスかもしれないが、時間が足りないという感覚を避けるためには、逆に時間をたっぷりと使わないといけないとされる。セネカはこう言っている：「私たちの人生は決して短くはない。私たち自身がそれを短くしているのだ」

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幸福な人生には健康が欠かせない。古代人はスポーツが大好きだが、健康的な食生活も不可欠だし、日々自然と親しむことも重要だ。

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最後に、フェイクニュースのはびこる現代に役に立つ助言を一つ：事実と意見を区別しよう。古代の哲学者にとって事実とは真実のあらわれだが、意見それ自体には価値がないとされる。

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