即位10周年を迎えたスペイン国王フェリペ6世
フェリペ6世がスペイン国王に即位したのは2014年6月19日。今年6月に即位10周年の節目を迎えることとなった。今回は、その歩みを写真とともに振り返ってみることにしよう。
まずは戴冠式が行われた2014年6月19日、マドリード王宮の正面バルコニーに姿を見せたフェリペ6世。そのかたわらにはレティシア王妃、レオノール王女、ソフィア王女がいる。新国王の姿を一目見ようと、オリエンテ広場付近には数千の市民が集まった。
スペインではクリスマスの夜、国王がテレビ演説をすることが恒例となっている。先代フアン・カルロス1世のクリスマスメッセージを38年にわたって聞いてきたスペイン国民は、2014年にフェリペ6世のテレビ演説に触れることになった。新国王はそこで、政治腐敗を根本的に断つことを約束し、カタルーニャ州独立の機運を前にして国民に結束を呼びかけた。
即位後のフェリペ6世がレティシア王妃とともにまず初めに外遊したのは、バチカンだった。現地ではローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇と再会を果たすことができた。その訪問を皮切りに、新国王は歴史的に関わりの深い各国を訪ね、互いの関係強化を図った。
即位から1年後の2015年9月、フェリペ6世は米国へ向けて出発し、米国第44代大統領バラク・オバマに迎えられた。その面会により、スペインと米国の相互に良好な関係が確かめられ、広くアピールされることになった。
スペインと米国の友好的な関係は、今度はオバマ大統領がスペインを訪れたことであらためて確認された。2016年7月、大統領はマドリード王宮で歓待された。
即位後の最初の数年間でフェリペ6世は諸外国を歴訪したのだが、2017年7月のイギリス訪問もそのひとつである。一行はイギリス女王エリザベス2世とエディンバラ公爵フィリップ王配に厚くもてなされた。スペイン国王がイギリスを公式訪問するのは1986年以来初めてのことであり、その意味でも重要な訪問だった。
2017年8月、バルセロナとカンブリルスでイスラム過激組織によるテロ事件が発生した。バルセロナでは歩行者の群れに車が突っ込んで100人以上が負傷、13人が死亡。カンブリルスでも歩道に車が突っ込み6人が負傷、1人が亡くなった。事件を受けて、バルセロナではテロに抗議する大規模なデモ行進が行われたのだが、フェリペ6世もその行進に加わった。スペイン国王がデモに参加するのは、王室の長い歴史を振り返っても初めてのことである。
そのデモ行進があってから1ヶ月半後、カタルーニャにふたたび注目が集まることになる。2017年10月、カタルーニャ州議会において、カルラス・プッチダモン州首相らが署名した「カタルーニャ独立宣言」が承認されたのだ。これを受けてフェリペ6世は演説を行い、州議会のふるまいを不誠実で許しがたいものとした。
フェリペ6世は2018年6月、ドナルド・トランプ大統領とホワイトハウスで面会を果たした。
この写真は2018年12月、憲法発布40周年の記念式典で勢揃いした国王一家。スペインの憲法は1978年憲法とも呼ばれ、フランコ独裁政権の崩壊後に盛り上がった民主化運動のなかで制定された憲法であり、スペイン市民にとって大事な意味を持っている。
2019年、フェリペ6世はふたたび英国の地を踏むことになった。イングランドの最高勲章である、「最も高貴なガーター勲章」を叙勲されたのだ。
2019年11月にフェリペ6世はキューバを訪れた。これは歴史的訪問である。父のフアン・カルロス1世もかつてハバナを訪れたことがあるが、それは1999年のイベロアメリカ首脳会議に出席するためだった。その訪問を別とすれば、フェリペ6世はこの外遊により、スペイン国王として初めてキューバを訪れたことになる。
2020年、新型コロナウイルスが猛威を振るったころ、フェリペ6世は人々を励まし、元気づけるような演説を行った。国王は人々に団結を呼びかけ、お互いを思いやること、些細な違いはわきにおいて、この危機を乗り越えるという共通の目標のために力を合わせることを訴えた。
2020年夏、それは世界のどの地域に暮らす人々にとっても困難な時期だった。フェリペ6世とレティシア王妃は保健所の職員や医療関係者にさまざまな形で敬意を表し、そして新型コロナウイルスの犠牲者に哀悼の意を表した。各地を周り、スペイン国民に寄り添う姿を見せた。
2021年にカナリア諸島のラ・パルマ島で火山が噴火し、溶岩流が家屋を破壊、果樹園を覆い、約5,000人が避難する事態となったとき、フェリペ6世はすぐに現地に足を運び、被災者の声に熱心に耳を傾けた。
スペインの君主制を守り、維持することを目的としたフェリペ6世の働きも見逃せない。フェリペ6世は2015年、姉にあたるクリスティーナ王女とその夫から、パルマ・デ・マジョルカ公爵夫妻という称号を剥奪している。夫妻について「ノオス事件」と呼ばれるスキャンダルが持ち上がったからだ。また、父のフアン・カルロス1世にも不正な金銭授受疑惑が報じられ、フェリペ6世は父からの相続財産を放棄することを決めた。スペイン王室は、前国王に対する19万4,000ユーロの年金の支払いも中止するという声明を出している。
2023年10月31日、レオノール王女が成年となり、議会で憲法に忠誠を誓う宣誓式に臨んだ。この宣誓により、レオノール王女は国王の法的後継者となった。父としても国王としても、フェリペ6世にとって感慨深い日になったことだろう。
国際政治の場においても、フェリペ6世の存在感は増しつつあり、国際連合総会や欧州議会などに積極的に出席している。
2022年6月、フェリペ6世はバルセロナで開かれたNATO首脳会議のホスト役をつとめた。マドリード王宮で催された晩餐会には、米国大統領ジョー・バイデンや、カナダ首相のジャスティン・トルドー、仏大統領エマニュエル・マクロン、英首相ボリス・ジョンソン、欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエンなどが招かれた。
フェリペ6世がスペイン国王に即位してから10年、いまのところ、フェリペ6世は国民の大部分から支持を集めているようだ。その理由は、王がレティシア王妃とともに、君主制のイメージアップに成功しているからだと考えられる。
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