ラテンポップの女王：シャキーラのキャリアからスペイン代表ピケとの破局まで

2020年スーパーボウルでハーフタイムにパフォーマンスを披露して観客を熱狂させたシャキーラ。しかし、パートナーとの破局や脱税疑惑というスキャンダルにも見舞われた。コロンビア出身のスーパースターの人生を振り返ってみよう。

本名はシャキーラ・イザベル・メバラク・リポール。シャキーラはアラビア語で「感謝する」という意味を持つ。

1977年2月、シャキーラはコロンビアのバランキージャで生まれた。父親のウィリアム・メバラク・チャディドはニューヨークでレバノン人の両親のもとに生まれ、5歳のときにコロンビアに移住した。シャキーラの母親ニディア・リポール・トラードはスペイン系のコロンビア人だ。

シャキーラはわずか2歳でアルファベットを覚え、よどみなく話すことができた。初めて詩を書いたのは3歳の時で、その後も詩をつくってはそれを歌にしていた。

画像: Instagram, Shakira

シャキーラがベリーダンスを始めたのは4歳のとき。父親に連れられて行った中東料理店で初めてドゥンベック（アラビアのドラム）の音を聞き、そして祖母が幼い彼女にレバノンというルーツを忘れないようダンスを教えたのだ。

ほどなくシャキーラは学校で「ベリーダンス・ガール」として知られるようになり、プロになってからもベリーダンスは彼女のトレードマークとなった。シャキーラは『CBS』でこう語っている。「ベリーダンスは私の遺伝子に刻まれたもの、自分を表現する方法なの。ドラムを聞くと、自然に踊り出すのよ」

シャキーラが初めて歌を作ったのは8歳のときだ。自動車事故で息子を亡くしてしまい悲嘆にくれる自身の父親を表現した、きわめてナイーブな曲だった。

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曲のタイトル「あなたの暗い眼鏡 (Tus gafas oscuras)」は、シャキーラの父親が息子を喪失した悲しみを隠すためによくかけていたサングラスにちなんだものだ。

1991年、「あなたの暗い眼鏡 (Tus gafas oscuras)」を含むファーストアルバムがリリースされた。この時シャキーラはわずか14歳だったが、すでにモデルや歌手として活動をしていた。ただしクラスメートや音楽教師たちは、彼女が大成するとは思っていなかった。シャキーラは複数のメディアを通じ、当時、自分の声は「ヤギの声」だとからかわれていたことを振り返っている。

ファーストアルバムの売上はわずか1,000枚というさんさんたる結果に終わった。一方でコロンビアのメロドラマ『The Oasis』に出演したが、これもひどい出来だったようだ。後年、シャキーラは番組の権利をすべて買い取り、二度と放送できないようにしている。

2枚目のアルバムも売行きは悪く、シャキーラが契約していたソニー・コロンビアは3枚目が最後となることを通告した。そのため一時期シャキーラは、音楽ビジネスを完全に放棄し、大学に進学することさえ考えていた。

1995年、シャキーラは3枚目のアルバム「裸足のままで（Pies descalzos)」をリリース。ここから複数のシングルヒットを飛ばし、ついに南米で大きな成功を収めることができた。

「裸足」という言葉には、シャキーラの個人的な思い入れがある。1985年、父親の経営する宝石店が倒産し、一家は経済的苦境に立たされた。しかし、父親ウィリアムは自分たちの状況を客観的に見るよう子どもたちを孤児院に連れて行き、もっとひどい目に遭う人々がいることを示したのだ。そこから、シャキーラは後にホームレスの人々や孤児を支援する「ピエス・デスカルソス（ベアフット、裸足）財団」を立ち上げることになった。

ラテンアメリカでブレイクして以来、シャキーラはさまざまなヘアスタイルやコスチュームで人々を魅了している。中東のアクセントを持つロックスター、夢見心地にしてくれるブロンドのバラード歌手、セクシーなサルサの女王、あるいはそのすべてを備えたスターとして。

カナダ出身の歌手アラニス・モリセットは、シャキーラが自分のルックスを真似たと考えて、非難の声を挙げた。

シャキーラの音楽にはさまざまなスタイルが融合している。「私はスタイルをミックスするのが好き、カクテルのようにね」『Times of India』誌は、シャキーラがレッド・ツェッペリン、ビートルズ、ニルヴァ―ナをよく聴いていたことを報じている。「私はそういうロックが大好きだったけれど、父が100％レバノン人だから、アラビアのサウンドにも恋に落ちたの」

シャキーラはスペイン語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、英語、カタルーニャ語、そしてアラビア語を少々、合計で7か国語を話す。

2001年、シャキーラは初の英語版アルバム「Laundry Service」を発表。全世界で2,720万枚以上を売り上げ、世界的にブレイクを果たした。代表曲は「Whenever Wherever」、「Underneath Your Clothes」、「Objection (タンゴ)」

2006年、シャキーラはフージーズのバンドメンバー、ワイクリフ・ジョンと共に「ヒップス・ドント・ライ」を発表。自身初となる全米No.1ヒットを記録、アルバムは330万枚以上を売り上げた。

一方、純資産3億5千万ドルを有するシャキーラは、母国コロンビアと中東の両方で慈善活動を続けている。この写真は2012年にコロンビア・サミットでオバマ元大統領と対面した時のもの。

シャキーラは2006年、イスラエルにレバノンとの和平を呼びかけた。彼女は頻繁に自身のルーツがあるレバノンを訪問している。

2010年、南アフリカで開催されたFIFAワールドカップで、南アフリカのバンド「Freshly Ground」と大会テーマソング「Waka Waka (This Time for Africa)」を歌った。

「ヒップス・ドント・ライ」のミュージック・ビデオ制作にあたり、シャキーラはヒップラインをきれいに見せるため太ももの脂肪吸引の整形手術を受けたという説がある。

シャキーラが受けたとされるその他の手術は、鼻やあごの整形やフェイスリフトなど。本人はこうした手術について否定も肯定もしていない。

シャキーラは歌手であると同時にギター、ドラム、パーカッション、ハーモニカを演奏する。2013年と2014年にはオーディション番組の『ザ・ヴォイス』で審査員を務めた。

2017年、シャキーラは歌手活動の休止を余儀なくされる。声帯の出血が原因で、声が出なくなったのだ。2017年から2018年にかけて、手術をすることなく声を取り戻せることを祈りながら、子供たちの世話をして過ごした。

シャキーラは『The Guardian』誌に対し「神にすがるしかなかった」と語っている。そしてシャキーラは声を取り戻し、スターとしてさらなる成長を続けている。

2020年、シャキーラはジェニファー・ロペスとスーパーボウルのハーフタイム・ショーで共演し、世界中の人々を魅了した。

しかし、40代半ばにさしかかったシャキーラは、法的にもプライベートでも問題に直面することになった。10年以上住んでいるスペインで、脱税の疑いで起訴されたのだ。

加えて2022年、シャキーラとパートナーのサッカー選手ジェラール・ピケが別居したというニュースが駆け巡った。二人はスペインのバルセロナで2人の息子とと暮らしていたのだが。

2010年に交際をスタートし2人の子どもをもうけていたシャキーラとジェラール・ピケは、2022年6月に共同声明を発表、破局を明らかにした。

シャキーラ側は「破局を発表しなくてはならないのは残念です。子どもたちの幸せを最優先したいので、プライバシーを尊重して下さるようお願いします」とコメントし、具体的な破局の理由に関しては言及しなかった。

以降、シャキーラは沈黙を守っていたが、アメリカ版『ELLE』誌のインタビューで心境を明かした。「（破局については）まだ乗り越えようとしている最中なので、話すのは難しい。私だけでなく子どもたちにとっても大変なことです」

「二人のうちどちらかが努力と犠牲を払わなければならなかった。私が犠牲を払ってキャリアのペースを落とし、彼のタイトル獲得をサポートするためにスペインに移住したの。それは愛の犠牲だった」

シャキーラは自分よりもピケの夢を応援しなくてはいけないように感じていた、とも語っている。破局はピケの浮気が原因ではないかと複数のメディアが報じたが、「あまりに最近のことでまだ生傷だから」とことばを濁した。

「彼を私の関係の終わり方や、お互いどのように感じているかは別として、彼は私の子どもの父親」とも語っており、二人の破局にはさらなる要因があった可能性もある。子どもたちのためにもファンのためにも、シャキーラがこの悲しみを乗り越えることが期待される。