モナコ公妃の出費は年間2億4,000万円……明るみに出た放漫財政
なかなか外に漏れることがないモナコ公室の事情だが、最近、その放漫財政が明るみに出たせいで批判が噴出している。とりわけモナコ公アルベール2世の妻、シャルレーヌ公妃は贅沢三昧な暮らしぶりを送っているようだ。
2023年6月、アルベール2世に20年以上仕えた会計士クロード・パルメロが賄賂や横領の罪を問われて解任された。本人は容疑を否定しており、意趣返しのつもりか公室の財政状況を暴露、さまざまな事実が明るみに出された。
クロード・パルメロは仏紙『ル・モンド』にノートにして5冊分の記録を提供、そこには20年ぶんの会計記録が記されていた。同紙の記者らはこの記録を精査し、その結果を特集記事「モナコのシークレット・ノート」として今年1月末に発表した。
その記事によると、シャルレーヌ公妃は8年間で「約1500万ユーロ(約24億円)も使っていたという。しかも、使う金額は毎年増え続けているというのだ。
同紙によると、公妃に割り当てられた歳費はアルベール2世との結婚(2011年)当初から70万ユーロ(約1億1,000万円)も増大、いまでは毎年150万ユーロ(約2億4,000万円)も使っているのだという。
他国の王族と比較してみるとその多額さが際立っている。たとえばスペイン王室公式サイトによると、2023年に国王フェリペ6世が使った金額は26万9,296ユーロ(約4360万円)、レティシア王妃は14万8,105ユーロ(約2,400万円)だったとされている。
しかも、これほど多額の歳費を受け取っていながら、公妃は常に金欠なようだ。『ル・モンド』紙によると、パルメロは2017年に公妃による歳出超過を穴埋めするために60万ユーロもの資産を取り崩さねばならなかったという。さらに、パルメロは2020年2月にこう記してもいたという:「公妃の個人口座に20万ユーロ振り込み、現金でも5,000ユーロ」
公妃はこれほどの金額をいったいなにに使っているのだろうか。同紙の調査記事では、大型ヨットやコルシカ島のヴィラの賃貸料、自身のオフィスの内装などに100万ユーロ以上かかっていたとされている。これらの支出はすべてアルベール2世が承認している。
公妃は家族にも多額の金銭を渡している。たとえば、2022年12月14日には弟のショーン・ウィットストックに「家のため」に90万ユーロ(約1億4,500万円)送金したという記録が残っている。
弟でこれなのだから、自分の子どものための出費に歯止めがかかるわけもない。2014年にアルベール2世との間に双子のガブリエラとジャックが生まれた際には、洗礼式などのために68万3,000ユーロ(約1億1,000万円)が費やされた。
パルメロは記録の中でなんども懸念を表明していたという。2010年6月にはこう書いている:「Ch. ウィットストックの費用:『国家予算』にまで手をつけ始めており、これは正しくないと思える。予算は分離して殿下に個人的にお渡ししたほうがよいだろう」さらに数ページ後にはこう書いてある:「公妃殿下はドレスをご所望とのことだったが、そのような個人的な出費のための予算はないとお伝えした」
また、同紙いわくパルメロは公妃がスタッフを増員することにも反対していたという。公妃はすでに8人ものスタッフを「従えていた」ため、人数は十分だと考えていたのだ。
加えて、同紙によると、公妃の擁していたスタッフのうち幾人かは特殊な条件で雇用されているという。たとえば、2012年にパルメロはこう記している:「公妃殿下は規則に適わない人物を働かせている」そして、公妃の料理人は1日あたり300ユーロ(約4万8,000円)受け取っており、その予算は申請されていないとも記している。
ノートではパルメロはこうも書いている:「ひと月ぶんの観光ビザで入国して5年も不法滞在し、一度もフィリピンに帰っていない(人物がいる)」さらに、公妃の身辺の世話をしている女性たちについてはこう述べている:「彼女たちは不法滞在しているどころか、そもそも偽造パスポートで入国している」
だが、放漫財政を続けているのは公妃だけではない。『ル・モンド』紙の記事では、アルベール2世もまた、愛人との間にできたふたりの非嫡出子に多額の金銭を費やしていることも明らかにされている。たとえば、非嫡出子のひとり、ジャズミン・グリマルディに対しては3か月分の生活費として8万ユーロ(約1,300万円)を渡していたという。しかも、住んでいる家はニューヨークにあり、その値段は300万ユーロ(約4億8,500万円)相当とされる。
さらに、もうひとりの非嫡出子、アレクサンドル・コステには多額の「誘拐保険」をかけているほか、同様に高額の不動産を買い与えてもいるという。
アレクサンドル・コステの母、ニコール・コステも当然黙ってはおらず、ロンドンに構えた店の資金や人件費をアルベール2世に出してもらっているのだという。同じく『ル・モンド』紙が伝えている。
同紙によると、公家のほかのメンバーも同様に多額の歳費を濫用しているのだという。アルベール2世の姉と妹であるカロリーヌとステファニーも、それぞれ年90万ユーロ(約1億4,500万円)および80万ユーロ(約1億3,000万円)を消費しているとされる。
パルメロは公家の歳費や公の個人予算ではこういった出費を賄いきれず、国家予算にも手をつけていたと『ル・モンド』紙では述べられている。
画像:Sharon Mccutcheon / Unsplash