画像で振り返るノーベル文学賞:今年の受賞者、韓江(ハン・ガン)氏と過去の受賞者たち
今年のノーベル文学賞は韓国の女性作家韓江(ハン・ガン)氏が受賞した。韓国人の受賞は金大中大統領(2000年当時)以来2人目で、アジア人女性初の文学賞受賞でもある。
ノーベル委員会は受賞理由について、「韓江氏の文章は詩的で力に満ちており、歴史的トラウマに立ち向かい、人生のはかなさを描き出している」と述べている。仏紙『ル・モンド』が伝えている。
韓江氏は1970年生まれで、90年代に作家デビューをしている。2007年に出版された連作小説集『菜食主義者』では、ある日突然肉食を拒み痩せ細っていく女性と、それを眺める夫の姿などを描き、国際的に評価された。
韓江氏の作品は日本語にも複数訳されている。そんな同氏だが、『ル・モンド』紙によると2013年から2017年の朴槿恵政権時代には左派文化人として非公開のブラックリストに入れられていたこともあるという。
こうして韓江氏が名を連ねることになったノーベル文学賞は長い歴史と錚々たる受賞者たちを誇る、名誉ある賞だ。そんなノーベル文学賞のこれまでを振り返ってみよう。
文学賞の選考はスウェーデン学士院が行っている。候補者の選出にあたっては自薦は認められておらず、学士院が依頼した専門家などから候補が送られてくる。なお、候補者は存命である必要がある。
学士院の審査員はその多数の候補者の中から15人を選び、さらにそこから5人に絞り込む。最終的に受賞者が発表されるのは他の部門と同時だ。
受賞者には1,100万クローナ(約1億5,700万円)の賞金が贈られる。もちろん、作家としての名声が世界的に高まることも言うまでもない。
ノーベル文学賞は初回の1901年以来、「文学の分野において理念をもって創作し、最も傑出した作品を創作した人物に授与」されている。この原則を定めたのは創設者のノーベルその人だ。
歴代受賞者はトーマス・マン(1929年受賞)、サミュエル・ベケット(1969年)、ガブリエル・ガルシア=マルケス(1982年、写真)など、世界的大作家が並んでいる。だが、先述の通り存命であることが条件なので、プルーストやリルケなど早逝した場合は受賞していないこともある。
現在まで、文学賞を辞退した作家はふたりしかいない。ソビエト政府の圧力で辞退したボリス・パステルナーク(1958年)と、個人的信念から拒否したジャン=ポール・サルトル(1964年、写真)だ。
文学賞は基本的には詩や小説など狭義の文学作品の作家に対して与えられるが、ルドルフ・オイケン(1908年)やアンリ・ベルクソン(1927年)のように哲学者に授与された例もある。他に例外的なのは政治家・著作家のウィンストン・チャーチル(1953年)、ミュージシャンのボブ・ディラン(2016年、写真)などだろう。
ノーベル文学賞は自国で迫害されている作家に対して授与されることもある。ソビエトで弾圧されていたアレクサンドル・ソルジェニーツィン(1970年、写真中央)や、チリの詩人パブロ・ネルーダ(1971年)がそうだ。
歴代受賞者のうち最多を誇る国はフランスだ。初回のプリュドム(1901年)から近年のアニー・エルノー(2022)まで、コンスタントに受賞している。ちなみに、他の受賞者はアンドレ・ジッド(1947年)、アルベール・カミュ(1957年、写真)、クロード・シモン(1985年)、パトリック・モディアノ(2014年)などだ。
フランスに次ぐ受賞者数を誇っているのがアメリカで、これまでウィリアム・フォークナー(1949年)やアーネスト・ヘミングウェイ(1954年、写真)など13人が受賞している。続く3位はイギリスで、ラドヤード・キプリング(1907年)やハロルド・ピンター(2005年)などが代表的だ。
執筆言語別に見てみると、英語が32人と最も多く、2位はフランス語の15人、以下ドイツ語14人、スペイン語11人と続いている。そのいっぽうで、フィンランド語やトルコ語、ヘブライ語やセルボ・クロアチア語などを用いる作家からも受賞者が出ている。
こういった統計的傾向に対し、西洋中心的で他の地域をないがしろにしているとの批判も存在する。また、女性受賞者が少なすぎるという点も批判されている(韓江氏は歴代18人目。写真は2022年に受賞したアニー・エルノー)。
ミートゥー運動をきっかけとして、ノーベル文学賞に代わる新しいオルタナティブとしての賞が創設されたこともあったが、短命に終わっている。保守的で時代遅れと批判されることもあるが、ノーベル賞はいまだに世界の作家が憧れる、名誉ある賞としての地位を保っている。
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