世界一リッチな猫:故カール・ラガーフェルドの愛猫、シュペット
青い目をした優雅な白猫、シュペット。ファッションデザイナーだった故カール・ラガーフェルドの愛猫で、主人の遺産1億6,000万ドルの相続者だ。
しかし、この猫が相続したのはそれだけではない。シュペットの姿が使われている広告や雑誌の表紙、さらにはワインブランドや化粧品ブランドによって生じる収入もまた、彼女のものだ。猫の身でありながら、ファッション業界のミリオネアになってしまったのだ。
旅行の際はもちろん高級ホテル(写真はベルリンにて)に宿泊。それどころか、専属コックや専属獣医まで抱えているという噂まである。
「シュペットに私の財産を相続させることができないとしても、彼女の世話係がみじめな生活を送るようなことはないように取り計らいます」ラガーフェルドは生前そう宣言していた。
シュペットは白毛と青い瞳が印象的なバーマン種のメスで、年齢はおよそ11歳。しかし、彼女を特別な存在たらしめているのは、なんといっても猫でありながらミリオネアだということだ。
シュペットは2011年8月15日生まれ。
シュペットは、モデルで恋人だったバティスト・ジャンビコーニからカール・ラガーフェルドにクリスマスプレゼントとして贈られた猫だ。2011年、新たな飼い主の手に渡った彼女はまだ生後3ヶ月だった。
以来、ラガーフェルドはシュペットといつも一緒。謎めいたサングラスに加えて、シュペットの可愛らしい姿がトレードマークとなった。
シュペットには24時間世話をしてくれるアシスタントが2人もいる。ブラッシングは1日4回、専用テーブルにおかれた銀の皿で食事するという。
『ヴォーグ』誌のブラジル版ではトップモデル、ジゼル・ブンチェンとともに表紙を飾った。
2016年、今度は飼い主のラガーフェルドと一緒にフランスの『Madame Figaro』誌の表紙を飾った。
2019年2月19日、カール・ラガーフェルドは膵臓ガンにより、パリ近郊のヌイイ=シュル=セーヌにあるアメリカン・ホスピタルでこの世を去った。彼が病院に運び込まれたのはその前日であり、ファッションの帝王は最期の瞬間まで猫と一緒に暮らしていたことになる。
飼い主が贅沢な暮らしをさせてくれたことや、メディアを通して何度も注目を浴びたことで、大物インフルエンサーに成長したシュペット。
SNS上で拡散しているシュペットのイラストがこちら。
シュペットが開設した最初のインスタグラムアカウントは@Choupettesdiary。ラガーフェルドの雇ったデジタル・マーケティング・エージェントのアシュレイ・チュダンが監修を行ったことで人気爆発。現在、このアカウントのフォワーは23万人となっている。
シュペットが表紙を飾ったのは雑誌だけではない。飼い主の伝記でも表紙に登場したのだ。
しかし、カール・ラガーフェルドがこの世を去ると、シュペットのアカウントは投稿をストップ。アカウントのマーケティング担当者はハッシュタグ#WhereIsChoupetteを拡散し、猫の将来を案じた。しかし、すぐに新たなアカウントが登場(現在のフォロワー数は11万人)。この新アカウントを管理しているのはシュペットの世話係だとされている。一方、化粧品業界ではシュペットに着想を得たブランドが2016年に登場。シュペットはセレブキャットの道を突き進んでいた。
バッグや財布、パスポートカバーなど、シュペットの姿をあしらったアイテム。このコレクションは2018年のクリスマスにラガーフェルドが発表したものだ。
すると、世界中のモデルやインフルエンサーたちがこのコレクションのアイテムを身に着け、インスタグラムに投稿を行った。
『ヴォーグ』誌のルポではアメリカのトップモデル、カイリー・ジェンナーと共演したことも。
シュペットにメロメロだったラガーフェルドは、2014年に世話係と共著で『Choupette: la vie enchantée d'un chat fashion』を出版。セレブキャットの豪華な日常を世界に発信した。
飼い主が亡くなったあと、シュペットはどうなってしまうのだろうと案じる人々は多かった。しかし、長い間その答えは謎に包まれていた。
その後、『ニューヨーク・タイムズ』紙のインタビューで、ラガーフェルドのブランドで広報を務めるキャロライン・レバーが、シュペットは故人の遺言通り、きちんと世話されているとコメント。それによると、シュペットは、ラガーフェルドが信頼を寄せていた世話係のフランソワーズ・キャソットとともに、パリで暮らしているという。また、キャロラインは「シュペットは健康でたくさん愛されている」と付け加えた。
シュペットが広告やプロモーションに登場し、モデルとして活躍しつづけるのは間違いない。愛する飼い主が出来栄えを事細かにチェックしてくれることはもうなくなってしまったが。