いつか歩いてみたい世界各の巡礼路:熊野古道からサンティアゴ巡礼まで
宗教聖地への巡礼は数千年前から行われており、今も世界各地にさまざまな巡礼路が存在する。古い歴史をもつものから最近つくられたルートまで、世界各地の巡礼路をみていこう。
世界最古の都市のひとつとされるエルサレムにはユダヤ教の聖地「嘆きの壁」、キリスト教の聖地「聖墳墓(せいふんぼ)教会」、イスラム教の聖地「岩のドーム」がある。3つの宗教の聖地があるエルサレムには、世界中から毎年数多くの巡礼者が訪れている。
エルサレム市近郊にも数多くの聖地がある。イエス・キリストの生誕地ベツレヘムの町、イエスが祈りをささげたゲッセマネの園、エルサレムの町全体を眺められるオリーブ山などを辿るルートが有名だ。
中世の時代、イギリスからローマへ巡礼に向かう人々がとった主なルートが「ヴィア・フランチジェナ」。イギリス南東部にあるカンタベリー大聖堂(写真)を出発し、フランスとスイスを通ってローマに至るおよそ2,000㎞の行程だ。
写真:Unsplash/Marian Florinel Condru
ヴィア・フランチジェナの目的地はバチカン市国にあるサン・ピエトロ寺院(写真)。イエス・キリストの十二使徒の長である聖ペテロの墓所があった場所に建てられたとされる、カトリック教会の総本山だ。
サン・ピエトロ寺院に詣でたあと、聖地エルサレムを目指すために、船が発着するイタリア南東部のプッリャ州あるいはシチリア島に向かう南イタリアルートも「ヴィア・フランチジェナ」とされている。写真はのプッリャ州の目の前に広がるアドリア海。
写真:Massimo Virgilio /Unsplash
イエスの十二使徒のひとり、聖ヤコブ(スペイン語で「サンティアゴ」)を称える大聖堂があるスペイン北部の都市、サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼路。フランスから入るルート、ポルトガルから北上するルート、スペインのアンダルシアから出発する道などさまざまある。写真はフランスルートの町、ル・ピュイ=アン=ヴレ。
「ペレグリーノ」と呼ばれる巡礼者は聖ヤコブのシンボルであるホタテ貝を身に着け、巡礼手帳「クレデンシャル」を携帯する習わしだ。目的地サンティアゴ・デ・コンポステーラについた巡礼者は11世紀に起源をさかのぼる大聖堂に向かい、荘厳なミサで祈りを捧げる。
写真:Unsplash/Victoriano Izquierdo
トルコには比較的新しい巡礼路、「聖パウロ・トレイル」がある。これはトルコ在住の英国人女性、ケイト・クロウが郊外エリアへの観光誘致を目的に2008年に提唱したものだ。キリストの使徒パウロが小アジアを旅した足跡を訪ねることができる。
「聖パウロ・トレイル」は地中海にほど近いペルゲの町を出発し、内陸のエイルディル湖畔に至る約500㎞のコース。27のステップに分かれており、途中で標高2,000m級の山を超えるという比較的難易度の高いコースだ。
讃岐に生まれた空海(弘法大師)にゆかりのある88か所の仏教寺院、「四国八十八箇所霊場」を訪ねる巡礼路が「四国遍路」。空海が活躍した1200年前(平安時代)に修行僧が歩き始め、江戸時代には一般庶民の間にも広まった。
1番から88番の札所まで全行程を結ぶと約1,200㎞を超え、徒歩で回ると約40日かかるとされる。四国4県に点在する聖地を巡る中で、のどかな田園から峻険な山までさまざまな風景に出会えるのも大きな魅力だ。
ジーザス・トレイルはイスラエルにある巡礼路で、全長65㎞のハイキングコースを通じてイエス・キリストの故郷ナザレからガリラヤ湖畔の町カペナウムまで、キリスト教ゆかりの地を巡ることができる。
写真:Unsplash/Phil Goodwin
この巡礼路は比較的歴史が浅く、2007年に二人のハイカーによって提唱されたものだ。「ジーザス・トレイル」公式ホームページによれば、イエスが歩いたとされるルートを4日間で巡ることができる。
写真:Unsplash/Thalia Tran
エチオピア北部のラリベラにはエチオピア正教会の岩窟教会群がある。巨大な一枚岩を穿って築かれた11の聖堂からなり、12世紀から13世紀にかけて建造されたとみられている。
エチオピア正教会の信者が一生に一度は訪れることを願う国内最大の聖地、それがラリベラの岩窟教会群だ。ユリウス暦のクリスマスにあたる1月7日には全国から5万人を超える人々が集まり、夜を徹して祈りを捧げるという幻想的な光景が繰り広げられる。
写真:Unsplash/Jorge Tung
ラリベラの岩窟教会群は、世界で最初に登録された12の世界遺産のひとつ。しかしエチオピアでは内乱が続き、ラリベラも2021年にらティグレ人民解放戦線に占領されるなど予断を許さない状況が続いている。
熊野古道は、和歌山県にある熊野三山(熊野本宮大社・熊野那智大社・熊野速玉大社)へ通じる参詣道を指す。古代から中世にかけて熊野信仰が高まり、京都や高野山、伊勢神宮を発して多くの人々が詣でたことでさまざまなルートが生まれた。
現在の熊野古道は和歌山、三重、京都、奈良、大阪にまたがる約1,000㎞の行程。山に覆われた紀伊半島を南下する中で、江戸時代の石畳や美しい竹林など日本の原風景に出会えるだろう。2004年、一帯は「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコ世界遺産に登録された。