訪日客にも人気:パウダースノーで知られるスキー場
近年、冬になるとSNS上で「#japow」というハッシュタグが飛び交うようになった。「Japow(ジャパウ)」とは、「Japan」と「Powder Snow」を掛け合わせた造語で、「日本のパウダースノー」を意味する。日本のスキー場が、世界中のスノースポーツ愛好家の憧れの地となっているのだ。
ジャパウとはどんな雪なのだろうか。サラサラした粉雪で、その上を滑ると独特な浮遊感を味わうことができる。またスピードも出やすい。雪があまりにもサラサラで、雪だるまがつくれないことに驚く人も多い。
雪の質だけが日本のスキー場の魅力ではない。森林限界を超えない低い標高に質の良い雪が大量に降るため、高山病などの心配をすることなく、森林を眺めながらパウダースノーを楽しむことができる。さらには毎日のように雪が降るので、トレースが翌朝には綺麗に無くなっている。そんな夢のような好条件が重なるスキー場は、世界的にとても珍しいのだ。
また樹々の間を滑走するツリーランコースも充実している。圧雪されていない自然に積もった状態の雪の上を滑走できるコースも多いため、パウダースノー信者から絶大な人気を誇る。
今回は、世界が注目する日本の極上パウダースノー「ジャパウ」で有名なスキー場を紹介していこう。
毎日のように降り続く雪がゲレンデをつねにリセットすることで有名な夏油高原スキー場。本州で最も早く全面オープンするスキー場で、積雪量日本一を記録したこともある。パウダースノーに加えて豪雪、さらには起伏に富んだ広大なツリーランエリアで、近年めきめきと人気をあげているスキー場だ。
単独のスキー場としては日本最大級の大きさを誇り、最長滑走距離も10km近くある。極上のパウダースノーのほか西暦110年頃に開湯した温泉も楽しめ、さらには世界的にとても珍しい樹氷群をみることができる。
水蒸気を含んだ風が、樹の枝や葉にぶつかり凍りつく。その氷の層に雪が付着し、樹木を覆い尽くす現象が樹氷だ。蔵王温泉スキー場では、大きいもので30mに達する「スノーモンスター」と呼ばれる樹氷が、コース沿いに並んでいる。
最高地点の標高が2300mを超える日本で一番高いところにあるスキー場。標高1330mから2307mのエリアに、パウダースノーで有名な18のスキー場がある。リフト券が共通化されており、スキー場間はリフトや無料シャトルバスで連結されているため、スキー場をはしごしながら楽しむことができる。18のスキー場の面積を合わせると日本最大級だ。
ツリーランコースの設置数日本一を誇るのが斑尾高原スキー場。地形をいかしたツリーランコースが充実しているほか、日本屈指の豪雪地帯のため最上級のパウダースノーが降る。そのため斑尾高原の雪は「Madapow」とも呼ばれている。
傾斜の緩い初心者コースから急斜面の非圧雪コースまで、44の多彩なコースがある。そのうちのひとつは全長10kmで標高差も1000mある、日本最長のコースだ。スキーの後はいにしえの歴史をもつ温泉を楽しむことができる。
アスピリンの結晶のようなサラサラした雪「アスピリンスノー」で有名な安比高原スキー場。太陽が当たらないスキー場なので雪が溶けにくく、5月上旬までスノースポーツを楽しむことができるのも大きな魅力のひとつだ。
水分が極めて少ない下倉スキー場の雪は「ウルトラライトパウダー」と呼ばれている。そんな極上のパウダースノーを思う存分楽しむために、タイプの異なる4つのツリーランエリアが設定されている。そのうちのひとつは最大斜度が37度あり、膝上までパウダースノーが達する深雪になることから中上級者から大人気だ。
最後に紹介するのは、ジャポウ発祥の地として有名な北海道のニセコ。シーズン中に90日前後、10m近い積雪を観測する圧倒的な降雪量が、世界を魅了するパウダースノーを作り出している。軽さでいえば北海道内部のスキー場の雪の方が軽いが、ニセコのパウダースノーは水分量のバランスが絶妙だという。
ニセコは4つの広大なスキーリゾートからなり、合計すると総滑走距離が47kmにも及ぶ。一番人気のコースは、富士山によく似た羊蹄山を眺めながら滑走するコースだ。またニセコでは通常のスキー場では滑走禁止となるバックカントリーが、上級者に限り開放されている。
スキーだけでなく、源泉かけ流しの温泉でも有名。また、ショップ、居酒屋からミシュランの星付きレストランまで、アフタースキーも充実している。