アダルト映画の女王メイトランド・ウォード、数奇な半生を経てビジネスで大成功
「成人向きコンテンツ(Rated X)」とは何やら不穏なタイトルだが、女優メイトランド・ウォードの回顧録はまさに『Rated X: How P*** Liberated Me from Hollywood』と題されている。
この回顧録では、TVドラマで成功を収めた女優が90年代後半のハリウッドの現実に直面し、R-18指定コンテンツに出演するようになった経緯が語られているのだ。
メイトランドの女優キャリアは1998年、TVドラマ『ボーイ・ミーツ・ワールド』にレイチェル・マグワイア役で出演し、視聴者を魅了したときに始まった。
写真:Instagram - @matelandward
このシリーズはABC放送およびディズニー チャンネルで大ヒット、放映は5シーズンにわたった。主人公たちが大人になってゆく様子を、親しみやすいタッチでときにブラックな調子もはさみつつ描いた作品だ。
写真:Instagram - @matelandward
回顧録によれば、当時21歳だったメイトランドは番組制作者による矛盾した要求を前に「とても困惑した」という。というのも、レイチェル・マグワイアという役は男性の視聴者を惹きつけるのと同時に、清純なイメージを保たなくてはならなかったためだ。
ところが、シリーズ全45エピソードで着用させられたのはタイトで露出の多い衣装だった。メイトランドいわく:「矛盾した話でした。おかげで、自分が何者なのかわからず、長いこと苦労する羽目になりました」
2シーズンも撮影をするうちに、メイトランドは持前の「長い脚とスタイルの良さ、赤毛」で人々を魅了していることに気づいた。けれども厄介なことに、視聴者ばかりか撮影現場の共演者まで惹きつけられてしまっていたのだ。
彼らは「アプローチしようとしたり、おしりを触ったりつねったり、胸を指さして素晴らしいと言ってみたり」したのだという。この時になってメイトランドは、ハリウッドが自分の憧れていた世界とは違うことに気づかされた。
ハリウッドで押し付けられた「キュートな女の子」像に失望したものの、めげずに他の役を探し続けたメイトランド。しかし、声がかかることはなく自信は打ち砕かれてしまった、と回想している。
「ハリウッドは女優を作り上げ、それから壊してしまう機械です」と語るメイトランド。このような現実を前に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で脚本を学ぶ決断を下した。
同時に、メイトランドはSNSでビキニを着た写真をシェアし始めたのだが、これが大反響を呼ぶことに。あっという間にフォロワー数が増え、人気インフルエンサーの仲間入りを果たしたのだ。
そして、彼女にアダルトコンテンツ制作を唆したのもフォロワーたちだったという。この誘いに乗ったメイトランドは「クリエイター向けプラットフォーム『Patreon』を利用し始め、1週間後にはフォロワーが何千人もつきました」と語っている。そして、数ヵ月後には、Patreonきってのアダルトコンテンツ・クリエイターになってしまったのだ。
思いもよらない形で始まったPatreon上でのプロジェクトだったが、メイトランドは制作を続けていくうちに自尊心が満たされていったことを打ち明けている:「古臭いハリウッドでは何年かかっても手に入れることができなかったものを、アダルトコンテンツは私に与えてくれたのです」
無論、メイトランドを批判する人々もいるが、これに対し本人は「安っぽい人気を求めていたのは事実です。でも、パリス(ヒルトン)やキム(カーダシアン)のようなホームビデオは作りませんでした。わずか15分の人気よりも、もっと長続きするものが欲しかったんです」と返答。つまり、やりがいのある安定した仕事を求めていたのだが、それをくれたのは皮肉にもPatreonだったというわけだ。
Patreonのクリエイターからアダルト女優への転身は自然な成り行きだった。これは、2006年にメイトランドと結婚した不動産業者テリー・バクスターによる全面的なサポートのもと、2019年に実現することとなった。
持前の魅力を大多数の目に晒したことで知名度を上げたメイトランドのもとには、無論、いかがわしい提案も寄せられるようになっていった。
回顧録の中でメイトランドはあえて個人名も挙げている:「トリ・スペリングの夫がTwitterで私に会いたいと言ってきました。ロック・コレクションの話がしたいというのは口実だったと思います。いや、本当にそうだったのかもしれませんが」
また、アメフトのスター選手テレル・オーウェンズについては、「会いたいと言って何度もメッセージを寄こしました。しかし、返事をせずにいたらフォローを外されました」としている。
とはいえ、何もかもが悪いことばかりではなかった。仕事が認められて安定し、何よりも大きな収入を手にすることができたのだ。
写真:Instagram - @matelandward
ウェブサイト「Celebrity Net Worth」によれば、メイトランドの純資産は400万ドルと推定されており、「かつてないほどの知名度と富、チャンス」を手にしているとのこと。
その上、2022年にはアダルト映画界のゴールデン・グローブ賞ともいうべき「Xbiz賞」を獲得しており、業界トップ女優の地位は揺るぎないものとなっている。
アダルトコンテンツ制作を専門とするヴィクセン・スタジオとの契約で、長年の夢が叶ったというメイトランド。いわく:「役作りもできますし、一筋縄ではいかない長いセリフを話したり脚本を書いたりすることもできます。やりたかったことは全部やるつもりです。誰にも邪魔されずにやりたいことをやる、ということを以前より大切にしているんです」
回顧録が女性たちの自信をアップさせる助けになれば、と語るメイトランド。著書の中でも「自分で道を切り開くのは不安なものですが、幸せになるにはそれしかありません」とコメントしている。
ところで、『ボーイ・ミーツ・ワールド』の元共演者たちはどのような反応を示しているのだろうか?これについて、メイトランドは回想録の中で「彼らに反対されたり当惑させられたりすることはありませんでした。でも、大っぴらに私を擁護してくれたわけでもありません。見て見ぬふりをしているのでしょう」とコメント。
写真:Instagram - @matelandward(写真左は元共演者のウィル・フリードル)
いずれにせよ、素晴らしい同僚や友人、プロジェクトを手にしたメイトランドにとって、20年以上前の元共演者の反応など些細なことに違いない。ハリウッドで手にすることができなかったものをアダルト映画の世界で勝ち取ったからといって、何か問題でもあるだろうか?