マーゴット・ロビーの華麗なるキャリア:オーストラリア時代から『バービー』まで
マーゴット・ロビーは1990年7月2日、オーストラリアのダルビー生まれ。いまでこそ女優として有名だが、最初はモデルとしてキャリアをスタート。8人でのシェアハウス時代からハリウッドの大スターまで、彼女の歩みを振り返ってみよう。
マーゴットは2009年の映画『WATCH』で映画デビュー。撮影は二年前の2007年に行われており、当時18歳だった。
写真:『WATCH』の一場面
マーゴット・ロビーが最初に注目を集めたのはオーストラリアのソープ・オペラ『ネイバーズ』。1985年から続く長寿シリーズで、マーゴットは2010年の第5,466話から参加した。
写真:『ネイバーズ』の一場面
『ネイバーズ』2011年1月26日放送回で、マーゴット・ロビー演じるドナ・フリードマンはファッション・デザイナーになるためにニューヨークに行く決断をする。マーゴットはこの回で卒業となった。
驚きなのは、マーゴットも現実で同じ決断をしたこと。本人もニューヨークに移ったのだ。ただしファッション・デザイナーとしてではなく、女優として。そうして渡ったアメリカではドラマ『PAN AM/パンナム』(2011)でローラ・キャメロンを演じた。ドラマは1シーズンで打ち切りとなってしまったが、マーゴットは生涯の友を得た。撮影中ルームシェアしていた、クリスティーナ・リッチだ。
あまり知られていないかもしれないが、マーゴットはハリウッドでブレイクする前、サブウェイの店員や秘書などさまざまな仕事をしていた。
写真:『アニー・イン・ザ・ターミナル』の一場面
しかも、マーゴットはたいへんな倹約家としても有名。ハリウッドで巨額の稼ぎを得てからも、数年前まで8人でシェアハウスしていたというのだ。
2010年代はマーゴット・ロビーのブレイクの時期となった。マーティン・スコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)でレオナルド・ディカプリオ演じるジョーダン・ベルフォートの妻ナオミ・ベルフォートを演じた。他にもジョナ・ヒルなどとも共演したこの映画は2013年を代表する作品となり、アカデミー賞でも5部門にノミネートされた。
続く2014年には『フランス組曲』が公開。暗めの色でウェーブのかかった髪が印象的だ。
写真:『フランス組曲』の一場面
同時期に、当時から付き合っていたトム・アッカーリーや、他にもソフィア・カー、ジョシー・マクナマラらとともに製作会社のラッキー・チャップ・エンターテインメントを設立した。
写真:『フランス組曲』の一場面
トム・アッカーリーはイギリスの映画監督で、マーゴット・ロビーとの関係は2014年から。2016年の冬には結婚し、オーストラリアのバイロンベイで式を挙げた。
マーゴット・ロビーの趣味はエクストリーム・スポーツ。サーフィングやスキーに始まり、バイクでのオフロード・トレッキングまで。イノシシ狩りもするし、子どものころには空中ブランコの訓練も受けていた。
さらに、自分がやるだけでなくスポーツ観戦も大好き。ニューヨークに着いてすぐに地元のホッケーチーム、ニューヨーク・レンジャースのファンになり、予定が許すときはいつも試合を見に行っているとか。
ほかにもマーゴットには変わったところがあり、スニーカーが好きなのもその一つ。ヒールの高い靴はあまり好きではなく、レッドカーペットでもスニーカーを履いたことがあるほど。
意外かもしれないが、マーゴット・ロビーはファッションの流行には無頓着。大きなイベントのある時にはスタイリストやデザイナーからアドバイスを受けている。
2015年には『フォーカス』でウィル・スミスと共演。ジェス役でロマコメを好演した。
写真:『フォーカス』の一場面
2015年には『死の谷間』が公開される。だが、マーゴット・ロビーを筆頭にクリス・パインやキウェテル・イジョフォーなどの豪華な出演者にもかかわらず、この映画は興行的には今一つで、興収はわずか12万ドル強(約1600万円)ほどだった。
写真:『死の谷間』の一場面
それとは対照的に大ヒットとなったのがDC映画『スーサイド・スクワッド』(2016)。批評家受けこそ悪かったものの、世界興収7億4600万ドル(約970億円)を記録し、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインは多くの観衆に愛された。映画ではマーゴーの運動神経も大活躍だった。
ハーレイ・クインがDCに与えた影響は大きく、ハーレイ単体のスピンオフシリーズの製作が決定。撮影中の逸話にも事欠かなかったが、特に印象的だったのはタトゥー。マーゴットが共演者のカーラ・デルヴィーニュや監督のデヴィッド・エアーに「Skwad」の文字のタトゥーを入れている様子がSNSで話題となった。
また、撮影中にはマーゴットとカーラ・デルヴィーニュのあいだに友情が芽生えた。以来マーゴットは常にカーラの側にいて、最近では鬱病や依存症に苦しんでいるカーラの支えとなっている。
『ターザン:REBORN』(2016)の撮影に際して、プロデューサーはマーゴット・ロビーに体重を落とすよう要求。マーゴットはそれを拒否しただけでなく、映画の役である19世紀の女性としては、むしろ体重がある方がいいはずだと主張。撮影の行われていたロンドンでパブやレストラン巡りを存分に楽しんだようだ。
写真:『ターザン:REBORN』の一場面
マーゴット・ロビーの追求するキャリアは幅広く長期的なもの。出演作はアクション映画だけでなく、スリラーやコメディなど多岐にわたる。『グッバイ・クリストファー・ロビン』(2017)もそういった多様な出演作のひとつだ。
そのうちミュージカルにも出演するかも?
写真:『グッバイ・クリストファー・ロビン』の一場面
フィギュアスケーターのトーニャ・ハーディングを演じた『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)でマーゴットは初のアカデミー賞主演女優賞ノミネートを果たす。助演女優のアリソン・ジャネイもノミネートされたうえ、アリソンは受賞にまでこぎつけた。
写真:『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』の一場面
『アニー・イン・ザ・ターミナル』(2018)はマーゴットが設立した製作会社ラッキー・チャップ・エンターテインメントがはじめて単独で製作した映画。マーゴットは主演も務め、サイモン・ペグやマイク・マイヤーズと共演した。
写真:『アニー・イン・ザ・ターミナル』の一場面
こうして、ハリウッドでの6年間でマーゴットは主演作や助演作であわせて27億ドル(約3,500億円)以上を稼いだ。これはハリウッドでも記録的な数字だ。
写真:『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』の一場面
だが、スターとしての生活には予想外の出費もつきもの。ニューヨークに最初に降り立った時には、ストーカーや殺害予告のせいでセキュリティが必要になるとは考えてもいなかっただろう。
マーゴットが『ハリウッド・リポーター』誌に語ったところでは、殺害予告を受け取るたびにボディガードが調査しており、それには毎回2000ドル(約26万円)かかっているという。「一度こうなると、インディー映画に出てるだけというわけにはいきません」というのも納得だ。
いまや世界的女優となったマーゴット。2019年にはクエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に出演、シャロン・テートを演じてブラッド・ピットやレオナルド・ディカプリオと共演した。
歴史では、シャロン・テートは1969年に他の4人の被害者とともにハリウッドで殺害された。犯人グループはチャールズ・マンソン率いるカルト集団に属していた。当時シャロン・テートは夫の映画監督ロマン・ポランスキーの子を妊娠中、8か月半だった。
写真:『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の一場面
『スキャンダル』(2019)ではマーゴットは、上司のセクハラ問題に巻き込まれるテレビ・ジャーナリストを演じた。ストーリーは実話に基づいており、アメリカの放送局「FOXニュース」で実際にあった出来事をもとにしている。この映画でマーゴットはゴールデン・グローブ賞やアカデミー賞、イギリスアカデミー賞などにノミネートされた。
8人でのシェアハウス時代も遠い過去、いまではマーゴットはニコール・キッドマンやシャーリーズ・セロンとも共演する大女優となった。
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(2020)は主要登場人物が全員女性のアクション映画。マーゴットとラッキー・チャップが製作にも関わっている。
写真:『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』の一場面
だが今作はほかのDC映画ほどの成功とはならなかった。アクション映画というジャンルでキャストを女性で固めると厳しい戦いになりがちなのも確かだが、最大の理由は公開タイミングが最悪だったこと。新型コロナウイルス流行によるロックダウン直後の時期だったのだ。
2023年以降もマーゴットの活躍は続く見込みだ。『バビロン』でのブラッド・ピットとの共演は記憶に新しいし、ウェス・アンダーソンの『アステロイド・シティ』にも出演予定。そしてなによりもライアン・ゴズリングと共演の『バービー』の公開が夏に控えている。