2023年グラミー賞、ブリット・アワードのへんてこファッション
ポップスターの、音楽ではなく、ファッションにびっくりすることがある。その傾向は、このごろ特に目につくのだ。写真はブリット・アワードに現れたサム・スミス。肩のところがおかしくないか? ヘンな格好のポップスターは今年2023年の音楽イベントに続々と現れた。
グラミー賞とブリット・アワードに現れたポップスターのファッションは十人十色で、インターネットユーザーの格好の餌食になった。こちらの写真はグラミー賞、シャナイア・トゥエインの女子学生風のいでたち。
年齢なんてどこ吹く風。1965年生まれのシャナイア・トゥエインが学生服に身を包んだかと思うと、1958年生まれのマドンナは髪をブレイズ(編み込み)できめ、グラミー賞の装いに若々しさを取り込んだ。批評家たちはマドンナの年齢とファッションが釣り合っていないと腐したが、そのような批評にミソジニー(女性嫌悪)とエイジズム(年齢差別)をかぎとった多くの人は、ポップの女王の肩を持った。たとえば歌手仲間のピンクは『Sunday Mirror』紙にこう語る:「その人がこれまで勝ち取ってきた、受けてとうぜんのリスペクトを認めてしかるべき。あと、もっと広い心を持てるといいわね」
スタイルといえば、ハリー・スタイルズ。イギリスのバンド、ワン・ダイレクションの元メンバーのハリーはグラミー賞とブリット・アワードの年間最優秀アルバム賞を獲得したが、そうとうに凝った衣裳でも我々を驚かせた。
身につけているのは、スワロフスキーがあしらわれたエゴンラブのジャンプスーツ。カメラのフラッシュでころころ色合いが変わる。
すでに一大センセーションを巻き起こしているサム・スミスの「バルーン・スタイル」スーツは、インド出身のデザイナーHarriの手になるもので、ニュースに大きく取り上げられ、ソーシャルメディアで一気に広まった。デザイナーのHarriがBBCに語るには、スーツのシルエットは彼の飼い犬にインスパイアされたものだという。「小さい犬でね。その目から僕を見上げたらこんなふうに見えてるかな、という発想だったんだ」
Harriのスーツのラテックスメーカー「Four D」は、サム・スミスの件について、「みんなそれぞれ好きなことを言う権利がある」とコメントした。良きにつけ悪しきにつけ、自社の商品が人々の話題になることに満足しているようだ。
シャナイア・トウェインは印象的なプリントものを好んで選ぶことで知られ、グラミー賞のセレモニーには、きらきら光る、黒の水玉模様のスーツでやってきた。
なんといっても、のっぽなキノコ型の帽子がすごい。カウボーイというか魔女というか。ソーシャルメディアのコメントでは、ドクター・スースの漫画キャラクターや、クルエラ・ド・ヴィルの名前が挙がった。
ルイス・キャパルディは、花柄の刺繍のジャケットでブリット・アワードに現れた。このジャケットに目を奪われたのがハリー・スタイルズで、その夜4つめの賞を受賞したあとルイス・キャパルディにつかつか歩みより、お口にキスした。その動画はSNSでバズった。
ジェニファー・ロペスはグラミー賞に、贅を凝らしたグッチのドレスで登場した。レザー、ラインストーン、とりわけ堂々たるトレーン(すそ)がプレス関係者や観客を驚かせ、(どこを撮ればいいかわからない)カメラマンには冷や汗をかかせた。
タリア・ストームのおどろきの全貌(イケイケのちっちゃいピンクビキニ)をここでお見せすることができないのが残念だ。それでも、このミニマムないでたちで2月のロンドンの寒さに挑んだことに拍手を送りたい。
タリア・ストームも万全の寒さ対策を講じていたことを、公正を期して付け加えておこう。写真のとおり、ふさふさモフモフの白いコート、ピンクのモフモフブーツ、同じくモフモフの大きな帽子を身につけている。この後ろ姿のほうは、どんなメディアも検閲を気にせずに掲載することができるだろう。
マネスキンはブレることなく、どこへ行くにもアヴァンギャルドなスーツでばっちり決めている。グッチに身を包んだ彼らは、グラミー賞のレッドカーペットでいちばんの注目を集めた。
キム・ペトラスはフード付きのシックな黒のドレス姿でブリット・アワードに現れたが、どうしても気になるのは目元のクモの巣のようなメイクだった。
おっと、住宅小売業のサービスマンかな? いや、フリースタイル・スキーヤーのガス・ケンワージーが、ダンガリーのオーバーオール(プラダ)を着ているだけだ。夜会服としてはユニークである。
アメリカの歌手、リゾはものすごいレッドドレスで出現した。デザインを手がけたのはドルチェ&ガッバーナで、頭のてっぺんから爪のさきまで、花の飾りであしらわれている。
同じくドキっとするのは、アメリカの歌手アッシュニコの、ほとんどこの世のものならぬファッションだ。ラテックス製のスーツの背中からは「卵」が飛び出しており、レッドカーペットの上でもネット上でも、見る者を不安に陥れた。
レッドカーペットを赤い服で歩くのは、かねてより避けたほうが無難とされている。だが、キム・ペトラスとサム・スミスのペアはしっくり調和していた。キム・ペトラスはボリュームのあるスカートを履いてベールをまとい、サム・スミスはヴァレンティノのケープをひっかけ、それに合わせて帽子とステッキを見繕った。
アメリカのリアリティ番組スター、モデルでダンサーのブラック・チャイナは、羽毛をあしらった人目をひく黒のボディースーツでグラミー賞にあらわれた。どこかカラスに似ていなくもない。オンラインメディア『インサイダー』はこう言っている:「グラミー賞というよりも、コスプレ・パーティーに着ていったほうが良さそうだ」
レッドカーペットにやってきたレイ・アン・ピノックは、リトル・ミックスのメンバーと一緒ではなかった。少し前にグループは活動休止していたのである。そういった背景から、ダイアナ元妃の「リベンジ・ドレス」の影をこのドレスに見てもいいかもしれない。今回のドレスは旬のオレンジカラーを使い、深い襟ぐりが印象的。ヘアスタイルも手が込んでいる。
アメリカのカントリー歌手、ケイシー・マスグレイヴスはピンクのジャンプスーツ、それから同色のケープ(ヴァレンティノ)で、きっちり存在感を演出した。
『The Mail Online』によると、彼女はキム・カーダシアンが『サタデー・ナイト・ライブ』の後夜祭(2021年)に着用した、バービー人形のようなホットピンク・ドレスを真似たという。どちらかといえば、ケイシー・マスグレイヴスのバージョンに軍配をあげたい。
リアリティ番組のスター、カントリー歌手のミーガン・マッケナは、ブリット・アワードの舞台に挑発的なカウボーイルックでのりこんだ。レザー生地のミニスカートにはスリットが2本入り、股ぐらに伸びている。ダイアモンドをあしらった十字架がアクセントを添え、足元はもちろん、黒いカウボーイブーツ。
デザイナーRachel Burkeの一作、巨大なチュールが肩に載っかる、カラフルなマキシ丈のドレスによって、女優アリーシャ・ギャディスは「ベスト・ドレッサー」に選ばれたり「ワースト・ドレッサー」に選ばれたりした。
妊娠しているぽっこりお腹をこんなふうに見せつけた例は、ショービズ界でもまれである。ブリット・アワードに登場したジェシー・Jを見て、敵も味方も脳天をぽかりとやられた。テーマカラーはイブニングドレスに定番の明るい赤で、レースのレギンス、レースのトップス、レースの手袋、これでもかと「ひだ」をとったオーバーサイズのコートを合わせた。赤づくめの服に囲まれて、むきだしのおなかのふくらみがフィーチャーされている。
グラミー賞最優秀新人賞にノミネートされたドミ&JD・ベックは、レッドカーペットでも存在感をアピールしようと意気込んだ。レトロで遊び心があるファッションだったが、いくぶん山出しの感があり(とくにJD・ベック)、会場の雰囲気にそぐわなかった。
『セサミストリート』のエルモに似ているなどと言う不届きな輩もいたが、おおかたの人は、スーパーボウルのハーフタイムショーに出演したリアーナのファッションを見て、おごそかな気持ちにうたれた。明るい赤のジャンプスーツはロエベのデザイン、腰のところまでジッパーがおろされ、その下に着たキャットスーツがのぞいている。おめでたいことに、リアーナは2人目の子どもを妊娠していた。