ペネロペ・クルスとハビエル・バルデム:スクリーンをめぐる愛と運命の物語
ペネロペ・クルスとハビエル・バルデムは夫婦そろってアカデミー賞に4度目のノミネートされ、ともにキャリア最高の瞬間を迎えている(ペネロペ・クルスは『パラレル・マザーズ』で、ハビエル・バルデムは『愛すべき夫妻の秘密』で)。30年前にビガス・ルナ監督の映画『ハモン ハモン』の共演した二人の出会いと成功は運命だったのだろう。
アーロン・ソーキン監督・脚本の『愛すべき夫妻の秘密』で4度目のノミネートを果たしたハビエル・バルデム。しかも、パートナーのペネロペがアルモドバル監督の『パラレル・マザーズ』で同時にノミネートされたため、喜びもひとしおだ。バルデムいわく「ペネロペは( 『パラレル・マザーズ』で)素晴らしい演技を見せた。一緒にノミネートされて本当にうれしいよ。自分のノミネートにも満足しているけれど、ペネロペが一緒じゃなければ意味がないからね」
すでに4度のノミネート歴を持つペネロペ・クルスだが、今回は一番評判が高い。アカデミー賞に初めてノミネートされたのは2006年の『ボルベール〈帰郷〉』。2009年と2010年には、それぞれ『それでも恋するバルセロナ』(受賞)と『NINE』で最優秀助演女優賞にノミネート。一方、ハビエル・バルデムは2001年に『夜になるまえに』で最優秀主演男優賞にノミネートされたほか、2007年に『ノーカントリー』で最優秀助演男優賞を獲得、2010年には『Biutiful ビューティフル』で最優秀主演男優賞にノミネートされている。
夫婦そろってノミネートされたペネロ・ペクルスとハビエル・バルデム。しかし、前例がないわけではない。アルフレッド・ラントとリン・フォンタン、ヴィヴィアン・リーとローレンス・オリヴィエ、レイチェル・ロバーツとレックス・ハリソン、エリザベス・テイラーとリチャード・バートンといった伝説的スター夫妻が名を連ねているのだ。
お互いに理解し合い、私生活でも仕事の面でもうまくいっているペネロペ・クルスとハビエル・バルデム。写真はヴェネツィア国際映画祭にて『パラレル・マザーズ』で女優賞の初獲得を決めたペネロペを祝福するハビエル・バルデム。
二人が初めて共演したのはビガス・ルナ監督の映画『ハモン ハモン』(1992年)だ。「オズボーンの雄牛」(酒造会社の広告看板)を背景とした有名なシーンは、スペインらしい情熱を秀逸に表現している。ただし、二人の間に愛情が芽生えたのはずっと後のことだ。
スペイン映画で成功を収めた二人はともにハリウッドに挑戦。写真は2005年のパーティーの様子。オルセン姉妹やサルマ・ハエックといったセレブたちの姿が見える。
二人が再び共演することになったのは、生粋のニューヨーカー、ウディ・アレン監督の『それでも恋するバルセロナ』(2008年)だった。後になってペネロペが語ったところによれば、以前はハビエルのことを気にしたこともなかったという。
この映画でハビエル・バルデムが演じるのは、不安定な元妻のマリア・エレナ(ペネロペ・クルス)と、スペインで休暇を過ごすアメリカ人観光客、クリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)の板挟みになる画家、フアン・アントニオだ。
二人が付き合っているという噂は『それでも恋するバルセロナ』撮影中からあったものの、当の本人たちははぐらかし続けていた。しかし、2008年にハビエル・バルデムが『ノーカントリー』で初のアカデミー賞を獲得したとき、ついに明るみにでることになった:バルデムの母、ピラールとともにペネロペが授賞式に現れたのだ。
『それでも恋するバルセロナ』でペネロペが迫真の演技を見せたため、ハビエル・バルデムは実生活でもこんなことになってしまうのではと危惧したという。「ペネロペはパワフルなんだ。『それでも恋するバルセロナ』では、手あたり次第お皿を投げるシーンがあるんだけど、実際にこんなことになったらどうしようと思ったよ。ペネロペにはあらゆる物事に対する情熱があふれているのさ」ハビエルは2017年に行われた『GQ』誌のインタビューにこう答えた。
『それでも恋するバルセロナ』のマリア・エレナ役で2009年に助演女優賞を初めて手にしたペネロペ・クルス。さらに、英国アカデミー賞を1度、ゴヤ賞を3度、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞を1度、ヨーロッパ映画賞を1度、CEC賞を1度、フォトグラマス・デ・プラータを5度、スペイン俳優女優組合賞を4度、ガウディ賞を1度、カンヌ国際映画祭女優賞を1度、ヴェネツィア国際映画祭女優賞を1度、ハリウッド映画祭の最優秀女優賞を1度、ドノスティア賞を1度獲得している。
一方、ハビエル・バルデムも輝かしい受賞歴を誇る:アカデミー賞助演男優賞を1度、ゴールデングローブ賞を1度、ゴヤ賞を6度、英国アカデミー賞を1度、全米俳優組合賞を2度、サテライト賞を1度、ヨーロッパ映画賞を1度、CEC賞を5度、フォトグラマス・デ・プラータを7度、スペイン俳優女優組合賞を3度、インディペンデント・スピリット賞を1度、ヴェネツィア国際映画祭男優賞を2度、パルム・ドールを1度、銀貝賞を1度獲得しているのだ。
夫婦そろって輝かしいキャリアを誇る二人だが、本人たちが述べている通り競い合っているわけではない。互いにパートナーの成功を讃え合っているのだ。
さらに二人はフェルナンド・レオン・デ・アラノア監督の『ラビング・パブロ』(2017)をはじめ、数々の映画で共演を実現。息の合った演技で作品を成功に導いてきた。
コロンビアの麻薬王、パブロ・エスコバルの愛人だったビルヒニア・バジェホの回想録『Loving Pablo, Hating Escobar』を映画化するにあたり、バルデムはエスコバル役、ペネロペはジャーナリストで愛人のバジェホ役を好演した。
2018年には、イランのアスガル・ファルハーディ監督作品『誰もがそれを知っている』で再び共演。ただし、映画の中でペネロペの夫役を務めたのはリカルド・ダリンであり、バルデムは元パートナーのパコを演じた。
2010年に結婚した二人。『パイレーツ・オブ・カリビアン』での共演以来、親交を深めていたジョニー・デップ所有のプライベート・アイランドでこっそり式を挙げた。
ハビエル・バルデムもペネロペ・クルスもプライバシーに関してはきわめて慎重で、私生活については口を閉ざし続けている。ただし、 2010年にバルデムがカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したときには、あたたかい言葉で妻に謝意を表した:「ペネロペには大いに助けてもらった。愛しているよ」
押しも押されもせぬ映画スターとなったペネロペ・クルスとハビエル・バルデムだが、レッド・カーペットに登場するときを除くと、息子レオ(2011年生まれ)や娘ルナ(2013年生まれ)とともにごく普通の生活を送っている。バルデムは、妻と子供がいないと2週間で限界が来てしまうと何度かコメントしている:「2週間以上、家に帰れないともうダメ。身体の調子まで悪くなるよ」2017年に『エスクァイア』が行ったインタビューでバルデムはそう打ち明けた。