文豪たちがしたためた恋文:ヘミングウェイやヴァージニア・ウルフが恋人に贈った言葉とは

心を揺さぶるラブレター
アーネスト・ヘミングウェイから、マレーネ・ディートリヒ宛(1950年7月13日)
ルードヴィヒ・ヴァン・ベートヴェンから、「不滅の恋人」宛
ヴァージニア・ウルフから、夫のレナード宛
ヴィタ・サックヴィル=ウェストから、ヴァージニア・ウルフ宛
ジャン=ポール・サルトルから、シモーヌ・ド・ボーヴォワール宛
ジョン・キーツから、ファニー・ブローン宛
ジャック・ロンドンから、アンナ・ストルンスキー宛(1901年4月3日)
ナボコフから、ヴェラ・スローニム宛
レナード・コーエンから、マリアンヌ・イーレン宛(コーエンの死の直前)
ジェームズ・ジョイスから、ノラ・バーナクル宛(1909年8月22日)
フランツ・カフカから、ミレナ・イェセンスカー宛(1920年4月)
カフカから、ミレナ宛
フリーダ・カーロから、ホセ・バルトリ宛
フリーダ・カーロから、ディエゴ・リベラ宛
マルティン・ハイデガーから、ハンナ・アーレント宛
ヴィクトル・ユゴーから、ジュリエット・ドルエ宛
マルセル・プルーストから、レイナルド・アーン宛
ジャン・コクトーから、ジャン・マレ宛
フリードリヒ・ニーチェから、コジマ・ワグナー宛
アルベール・カミュから、マリア・カザレス宛
ポール・エリュアールから、ガラ宛
アデーレ・サンドロックから、アルトゥル・シュニツラー宛(1893年4月12日)
シビラ・アレラーモから、ディーノ・カンパーナ宛
ディーノ・カンパーナから、シビラ・アレラーモ宛
イタロ・カルヴィーノから、エルザ・ド・ジョルジ宛
ジョルジュ・サンドから、アルフレッド・ド・ミュッセ宛
ジーノ・ストラーダから、妻のテレサ宛
ボリス・パステルナークから、オルガ・イヴィンスカヤ宛
アマリア・グリエルミネッティから、グイド・ゴッツァーノ宛
ジョヴァンニ・ヴェルガから、ディナ宛
アマデオ・モディリアーニから、アンナ・アフマートヴァ宛
心を揺さぶるラブレター

感情を文字にし、漠然とした思いに形を与え、内奥に秘めた想いを綴る……このような経験はそう多くはないだろう。だが、言葉は内面を映し出すものであり、人と人との関係を変える力を秘めている。昔からラブレターが何度も書かれてきたのもまさにその性質があるからだ。作家や芸術家が書いた、心を揺さぶるラブレターを読んでみよう。

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アーネスト・ヘミングウェイから、マレーネ・ディートリヒ宛(1950年7月13日)

いつもあなたのことはわかっているつもりでした。とはいえ、思い返してみれば、あなたにした質問と言えばどこに住んでいるのかとか電話番号はとか、そんなものだけでしたね。それでも、どんな知り合いよりもあなたのことを強く、長く恋しく思ったのです。

あなたを自分の腕で包み込む時に感じる、家に帰ったようなあの気持ちはとても言い表せません。

ルードヴィヒ・ヴァン・ベートヴェンから、「不滅の恋人」宛

どうか心を穏やかに。私を愛してください。今日も。昨日も。なんというあこがれ。あなたを想うこの涙。そう、あなたです。我が命、我が全て。どうかお元気で。私を愛してください。あなたの恋人L(ルードヴィヒ)の、これ以上なく真摯な心をどうか誤解なさらぬよう。永遠に貴女の、永遠に私の、永遠に我々の。

ヴァージニア・ウルフから、夫のレナード宛

……人生を正面から見つめること。正面からじっと見つめて、ただそれを理解するというそのことだけのために理解すること。人生を愛し、それでいてその人生を放っておくようにすること。人生を普遍的な美しさのままに放っておき、これまでに生きてきた年月や、費やしてきたすべてと共に過ぎ去ってゆくこと。日々、愛、そしてひとつひとつの瞬間、永遠の瞬間へと……私が望んだ、あなたは望まなかった世界で過ごしてください。あなたの笑顔が私の顔から決して消えないように。私にはどうか愛をください。私はあなたを苦しませるかもしれません。

ヴィタ・サックヴィル=ウェストから、ヴァージニア・ウルフ宛

ヴァージニア、私はただ求めることしかできない存在に成り下がっていました。今晩、寝付けない悪夢的な夜の時間にあなた宛の美しい手紙を書きましたが、それはもうありません。ただただあなたが恋しいという、あまりにも単純な、人間的な、心からの想いがあります。あなたは手紙の中で、こんなに単純な文章は決して書きませんでしたね。こんな想いすら、あなたには縁遠いものなのかもしれません。こんな些細な空虚感など、あなたは寂しいとも思わないのでしょう。美しい言葉でその空隙を飾り、現実感を失わせることができるのですから。ですが、私にはこの虚ろさは手に負えません。あなたがいないと、以前には想像することすらできなかったほどに心が痛みます。このような痛みに耐える心構えなど私にあるはずもありません。ですから、この手紙は苦痛の叫びなのです。

ジャン=ポール・サルトルから、シモーヌ・ド・ボーヴォワール宛

今日、君を想ったこの気持ちは君ですら僕のうちにあるとは知らない気持ちだ。僕は旅で疲れ果てているわけでも、君にそばにいてほしいという思いに包まれているわけでもない。私は君を想う気持ちを完全にコントロールしつつあり、その想いを自己に差し向けることで僕という存在の一部にしている。こういうことは君に打ち明けていたよりももっと頻繁に起きているのだが、君への手紙を書いているときにこうなるのは珍しい。どうか僕のことを理解しようとしてみてほしい。外界の事物へと関心を向けている時、僕は君を愛している。トゥールーズでは意識して君を愛するようにした。今日、ある夏の午後、僕は君を愛している。窓を開けて、君を愛している。君は僕のものであり、事物は僕のものだ。そして僕の愛が周囲の事物を変え、その事物が僕の愛を変えるのだ。

ジョン・キーツから、ファニー・ブローン宛

愛は僕を自己中心的にする。君なしでは息もできない。先が見えない。君は僕を骨抜きにしてしまった。いまこの瞬間、僕は自分が溶け出していくような感覚に包まれている。もうすぐ君に会えるという希望がなければ、僕はこれ以上なく惨めな気持ちになってしまうだろう。君から遠く離れるのを恐れるべきなのだろう。愛しいファニー、君の気持ちはずっとかわらないだろうか? 心変わりするだろうか? いま、僕の愛には果てしがない。

ジャック・ロンドンから、アンナ・ストルンスキー宛(1901年4月3日)

人間は分類可能だと君に言ったことがあっただろうか? もしそう言ったことがあるなら訂正させてほしい。君は分類不可能だ。僕は君を分類できない。君を理解できない。たいていは予想がつくものなんだ。状況にもよるが、十中八九当たる。人がどういう反応をするか予想できる。だが、その残りの十分の一が僕を絶望させるのだ。君は僕の理解を超えている。君はその十分の一だ。

ナボコフから、ヴェラ・スローニム宛

我が喜び、我が黄金の至上幸福よ。私がどれほどあなたのものか、どう説明したら良いのだろうか。我が記憶、我が詩才、我が歓喜、我が内的狂騒を用いれば良いのか? 説明すればいいのだろうか。あなたの声を通して耳で聞くまではたったの一語も書けないということを。どれほどささいな出来事でさえ、あなたと共に過ごせなかったことを深く、深く悔いているのだということを。あまりにも個人的で言い表すことのできない体験も、曲がり道で目にした何の変哲もない夕日でさえもあなたと分かち合いたかった……私が言っていることがお分かりだろうか、我が喜びよ?

レナード・コーエンから、マリアンヌ・イーレン宛(コーエンの死の直前)

さて、マリアンヌ。どうやら私たちは体がバラバラになっていくような年になってしまったらしい。君の後に続くまでそう長くはかからなさそうだ。君が手を伸ばせば手が届きそうなほど近くまで来ているんだよ。昔からずっと君の美しさや深い叡智を愛していることは、いまさらくどくど述べたてなくてもわかっているだろう。ただ良い旅を、とだけ願っておこう。じゃあね。いつまでも愛しているよ。また向こうで会おう。

ジェームズ・ジョイスから、ノラ・バーナクル宛(1909年8月22日)

ある種の手紙があります。それは、あえて私の方から書き出そうとは思っていませんが、あなたから届かないかと毎日首を長くして待っているものです。ただ私のためだけの手紙です。あなたの方でそれをお書きになって、私の欲しがる気持ちを鎮めてくださってもよいのですよ。え? 私たちを引き離すことができるですって? 私たちはすでに苦しみ、試されています。われわれふたりの間に降りていた恥と不信の帷はもはやなくなったようです。もはやわれわれを待ち受けているのは互いの目に映る、幸せに次ぐ幸せの時間だけではないのですかね。どうぞ私のために着飾っていただきたい。美しく、幸せで、愛らしく、蠱惑的な姿で。記憶に、欲望に満ちた姿をお見せください

フランツ・カフカから、ミレナ・イェセンスカー宛(1920年4月)

一夜にして、魔法のように捕まえることです。急いで、あえいで、打ちひしがれて、とりつかれたように。捕まえるのです。日々が目を覚まさせようと差し出してきているものを!……私が(あなたにも、すべてにも)深く感謝しているのはこういうわけです。そして、あなたといると絶対的な穏やかさと絶対的な落ち着かなさ、絶対的束縛と絶対的自由を同時に感じるのもそのためです。このことを理解してから、私はもはや人生の他のことなどどうでも良くなりました。私の目を見てください!

カフカから、ミレナ宛

あなたのことが大変好きなのですが、いったいどういうわけかそれがよくわからなくなってしまいます。……これだけ喋ると目も覚めてしまいます。一人きりで、ベッドに戻って夢を見ることもできません……

フリーダ・カーロから、ホセ・バルトリ宛

あなたに一番美しい色彩を差し出したい。あなたにキスしたい……水となってあなたを洗い流したい。光となって輪郭を与えたい。私を作るものが、あなたを作るものとなってほしい。あなたの声が私の喉から出て、内側から愛撫してほしい……あなたが苦しむことがあれば、あなたを優しさで満たして癒してあげたい。私はいつでもあなたのそばにいます。いつでも待っています。私は光になりたい。あなたが一人でいたい時にも包み込めるように。

フリーダ・カーロから、ディエゴ・リベラ宛

いまどこにいますか? どこにいますか? あなたのいない夜に溺れてしまいそうです。我が夜はあなたを呼ぼうとしているのですが、声がないのです。それでも私はあなたを呼びたい。あなたを見つけたい。そしてあなたを抱きしめて、この苛烈な時のことを忘れてしまいたい。私の体はこのことが理解できないのです。私の体は心と同じくらいあなたを求めています。きっと、奥深くではあなたと私はひとつなのでしょう。体があなたを求めています。この夜は、肉の感覚がなくなるほど深く染み入ってきて、物質的存在を失うほどにその感覚はひたすらに強く、鋭くなっていきます。夜はあなたへの想いで焦がれるようです。

マルティン・ハイデガーから、ハンナ・アーレント宛

いま私に何ができるのだろう? どうかあなたの内面でなにものも壊されないように。あなたの抱える過去の、辛く苦しい面が清められるように。あなたが耐え忍んできた外界の物事などがすべて平穏になるように。

ヴィクトル・ユゴーから、ジュリエット・ドルエ宛

我が愛しい天使よ、愛している。君も知っているだろう。それでも書きたいのだ。君は正しい。人は愛し合わないといけない。そしてその気持ちを口に出し、文字に書き、お互いの唇に、目に、あらゆる箇所にキスせねばならない。君は私の愛するジュリエットだ。私は悲しい時、君のことを考える。冬に太陽のことを想うように。幸せな時も君のことを考える。煌々と照らされている時に日陰のことを想うように。わかるだろう、ジュリエット、君のことを全身全霊で愛している。君は子供のように天真爛漫で、母親のように賢い。そんな君のすべてを、私の持てるすべての愛で包み込もう。

マルセル・プルーストから、レイナルド・アーン宛

君がいつでもここにいてくれたら。まるで他の人間には見ることのできない神のように。

ジャン・コクトーから、ジャン・マレ宛

私を崇めてほしい。私が君を崇めているように。そして胸元に抱きしめてくれ。私を聖人に、君に相応しい存在にさせてくれ。私は君がいるからこそ、君のためだけに生きているのだ。

フリードリヒ・ニーチェから、コジマ・ワグナー宛

我が王女、愛するアリアドネよ。私が凡俗に過ぎぬというのは偏見だ。だが、その凡俗の中で短くない時間を過ごしてきたのも事実だ。それゆえ、俗人がなにを感じるかは上から下まで知り尽くしている。私はインドにあってはブッダであったし、ギリシャではディオニュシオスだった……そしてヴォルテールでありナポレオンでもあった。リヒャルト・ワグナーでさえあったかもしれぬ……だがいまの私は勝ち誇るディオニュシオスだ。アリアンナ、愛している。君のディオニュシオスより。

アルベール・カミュから、マリア・カザレス宛

愛している。生き直しているようだ。ここで君と生きよう。つらくとも、愛と共に。なによりも君の手紙を待っている。書いてくれ。すぐに。君について、君が過ごした日々について、すべてを書いてほしい。僕も自分ことをすべて書こう。僕を苦しめ、窒息させるこの愛について、僕の優しさ、信じる心を書こう。マリア、ああマリア。これはすべて悪い夢だ。ふたりでこの夢から覚めよう。永遠に。

ポール・エリュアールから、ガラ宛

愛するひと、美しいひと。君がいないと死んでしまいそうだ。何もかもが虚ろだ。君の服にキスすることしかできない。君の体が、目が、口が、すべてが恋しい。君は唯一無二の存在だ。永遠に君のことを愛している。これまで被った不幸などなにものでもない。愛しいひとよ、君との愛がすべてを包み込む。君には持てるだけ多くのものを持っていてほしい。世界でも一番美しいものを。一瞬でも早く戻ってきてくれ。いますぐにでも。君がいなければ僕は無だ。ほかの欲望は夢の中で満たそう。君への想いだけは現実で満たしたい。現実を許そう。

アデーレ・サンドロックから、アルトゥル・シュニツラー宛(1893年4月12日)

朝、目を覚ました時、まだあなたの愛という魔術に囚われているような気分がしました。まだあなたに抱かれているような……あなたの口が私の息を吸うのを感じました……私が感じたのは愛や幸せといった言葉ではありませんでした。追い求められすぎて死に絶えた、一度口にすれば吐き気を催してたちまち戯画と化してしまうそんな言葉では。むしろ、それとは違った何か、復活するような、まったく新しい世界がその素晴らしさを明らかにしてきたような、身体と精神が合一し無限の欲求が満ちていくような、そんなものでした。

シビラ・アレラーモから、ディーノ・カンパーナ宛

ゆっくりお休みください。私はあなたを想って焦がれるあまり、もはや眠ることもできませんが、それでも幸せです。あなたはもっと美しくなると約束してくれましたね、綺麗なブロンドの野獣さん。私の青いスカーフをつけて、どんな日々を、夜を過ごしていますか……お休みなさい、お休みなさい。私たちには奇跡が相応しい。ふたりでそれを生きましょう。

ディーノ・カンパーナから、シビラ・アレラーモ宛

僕たちの愛を糧にして君のうちに芽生えた小さな詩句は、それは必要としている人に分け与えてくれ。もうこれ以上君にいうべきことが見つからない。(たとえ君のためでも詩人になろうとしない僕を許してほしい)もう沈黙は僕に何も語ってはくれない。僕のこの必死な気持ちは伝わるだろう。君のことを僕の栄光と喜びの記憶として抱えている。君も、苦しい時には、君のことを無限に愛していたもののことを思い出してほしい。

イタロ・カルヴィーノから、エルザ・ド・ジョルジ宛

書くことで君を愛したい。書くことで君を連れ出したい。それ以上ではないんだ。君を押し留めているのは苦しむことを恐れる気持ちだろうか? 私は自分が君を想うのと同じ気持ちで君に想われたい。君の腕に包まれていたい。そうすればかつてなく幸せになれる。

ジョルジュ・サンドから、アルフレッド・ド・ミュッセ宛

どうか私の思い出があなたの人生の喜びを汚しませんように。ですが、その喜びに私の思い出を壊されたくないとも思います。お幸せに、愛されてください。あなたなら当然そうなるでしょうけど。それでも、私の心のうちの秘密の一角から、時々は私の方を見てください。つらい時にはそこに来て、ゆっくりと一息ついてください。そして愛してください。アルフレッド、できる限りでいいですから。

いまだ愛を知らない若いお方を愛しておあげなさい。どうかその方をお大事に。苦しませないように。

ジーノ・ストラーダから、妻のテレサ宛

テレサ、僕は君に怒っているよ。とても、とてもね。確かに君はそろそろ行くと言った。でも僕はきっと心変わりしてやめてくれるだろうと思っていた。それなのに君は行ってしまった。穏やかな笑顔で。僕は怒っている。君が勝手に行ってしまったせいで、君から受け取った40年ぶんもの静かで大きな愛に少しだけでもお返しする機会が永遠に失われてしまったのだから。たしかに、君にもらったものすべてに見合うお返しができると思ったことはない。それでも、今日も、明日も、これからも、君に小さな愛を贈りたかった。「ねえ、ちょっと……ならもっと早くやっといてよ」君の声が聞こえる。ああ、君はいつも正しいことを言う。

ボリス・パステルナークから、オルガ・イヴィンスカヤ宛

私はあなたと深く結びついています。ふたりを結びつけるのは人生、窓の向こうで輝く太陽、つらく悲しい気持ち、罪の意識(おっと、あなたの目の前にいるときではなく、他の人の前にいるときのことですよ)、私の弱さの自覚、これまで私が成してきたことの卑小さ、そして、友を裏切らず、見せかけだけの人間にならないためには莫大な努力を行い山をも動かすことが必要なのだという確信です。私の周りにいる人たちは私たちよりも優れた人ばかりです。その人たちに心を尽くせば尽くすほど、愛しくなってくるのです。そしてあなたへの愛もより一層深く、深くなるのです……あなたをきつく抱きしめます。その優しさにほとんど恋に落ちたようです。泣き出してしまいそうです。

アマリア・グリエルミネッティから、グイド・ゴッツァーノ宛

グイド、私のそばを離れないで。あなたには遠くから他人のようについてきてほしくない。いつか、私の髪がいまのように茶色くなく、老いさらばえて目も濁った時に、遠くから眺めてほしくない。あなたを「あなた」と呼びたい。伴侶として。二人の間の、あの冷たい言葉を感じないように。いまや私はあなたの伴侶、魂のパートナー。その事実に震えることも慄くこともなくなった。初めて見た日からあなたのために存在していた。あなたに満足したことも、うんざりしたことも、まして虐げられたことも一度もない。

ジョヴァンニ・ヴェルガから、ディナ宛

心に渦巻き雲をなしているあれやこれやを伝えたいのに、文字にすると冷たく馬鹿げて聞こえてしまう。それでもこれだけは言おう。いまでも、一日中、君を目の前に見ているような気持ちだ。まるで自分の中の最良最愛の部分を失ったような気がする。君のせいでこうなったのだろうか? 君と共に歩いた道を一人で歩き直すのはとても悲しかった。ふたりで見たあの場所、あの石が目に入って僕を苦しめる。交わした言葉、やったこと、声のトーン。君が口にしなかった言葉、僕があえて伝えなかった言葉。

アマデオ・モディリアーニから、アンナ・アフマートヴァ宛

君はノートに書き留めたスケッチの情熱そのものであり、色彩の高揚、愛を裏切るキスへの偏愛だ。だからいま僕はこうして君に書いている。またしても。君の顔が懐かしいからだ。詩人である君は僕の探し求めていたものを求めた。食欲がない。雨に満ちた朝の空のように視界が暗い。それでも心は君を覚えている。僕たちはどれくらい輝かしいだろうか? 覚えている? 愛しいアンナ。

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