引退を表明したブルース・ウィリス:突然に現れた失語症とは
今月のアカデミー賞授賞式の直後、長年にわたりハリウッドを席巻してきた米俳優ブルース・ウィリスは、突然のそしてきわめて残念なニュースを発表した。
ブルース・ウィリスの娘で女優のルーマー・ウィリスはインスタグラムを通じ、67歳の父が俳優業を引退することを発表した。
ブルース・ウィリスが俳優業に飽きた訳ではなく、引退は健康上の理由によるもの。最近になり、認知能力に影響を及ぼす「失語症」に襲われたというのだ。
ルーマー・ウィリスはインスタグラムを通じ、「ブルース・ウィリスは健康上の問題を抱えています。最近、失語症であると診断され、認知能力に影響をもたらすおそれがあります」と発表。
1980年に『第一の大罪』で映画デビューを果たし、140を超える作品に出演したブルース・ウィリス。42年目にしてその輝かしいキャリアの幕を閉じることになった。
ルーマー・ウィリスの声明によれば、ブルース・ウィリスは熟考の末に「自身にとって大きな意味を持つ俳優業というキャリアから退く」ことを決めたという。
ハリウッドのスターダムを駆け上がり、やがて最小限の出演作で最大限のギャラを獲得することのできる数少ない大物ベテラン俳優の一人となったブルース・ウィリス。映画界の頂点に立つ前後を通じ、自ら選んだキャリアに取り組むハッピーな俳優であり続けた。
最近は "安易な" アクション映画への出演が話題になっていたブルース・ウィリス。最低な映画や演技に贈られるラジー賞ことゴールデンラズベリー賞で、彼のために新たな賞が設定されたばかりだった。この「ブルース・ウィリスが2021年に見せた最低演技」賞には出演作が8本もノミネートされたものの、それにより自尊心が傷つけられることはなかったようだ。
ブルース・ウィリスは80年代、90年代の映画界を牽引した:『ダイ・ハード』(1988年)、『ハドソン・ホーク』(1991年)、『パルプ・フィクション』(1994年)、『アルマゲドン』(1998年、写真)といった不朽の名作の他にも、出演作品は枚挙に暇がない。
映画界を後にするブルース・ウィリスの資産は、2億5千万ドル以上と見積もられている(Celebrity Net Worthより)。今後、最高の専門医による治療を問題なく受けることができるだろう。
ルーマー・ウィリスは「家族にとってきわめて困難な時期にあります」と明らかにした。失語症はかなり深刻な病であるものの、「ファンの皆様にも事実をお知らせすることにしました」、「ブルースが多くの人にとりどれほど大切な存在であるか考えたからです」とつづっている。
この声明文には、現在の妻であるエマ・ヘミング、5人の娘たち、そして元妻のデミ・ムーアも家族として名を連ねている。離婚から20年以上経つが、ブルース・ウィリスとデミ・ムーアはつねに円満な関係を維持してきた。
ブルース・ウィリスは、デミ・ムーアと離婚してから5年後の2005年、元妻と米俳優アシュトン・カッチャーとの結婚式に出席している。さらに互いの誕生日、クリスマスやイースター、米国の独立記念日といったイベントも一緒に過ごしてきた。この大家族は、パンデミックによる自粛期間を一緒に過ごしたことさえあるという。
新たな状況への適応が求められるブルース・ウィリスにとり、元妻デミ・ムーアはひきつづき重要な存在であり続けるだろう。しかし、失語症ではいったいどんなことが起こるのだろう?
失語症は、大脳の言語野が損傷されたことから起きる言語障害だ。
失語症は発話だけではなく、表現力、読む、書く、聞く、といった能力にも影響を与え、嚥下障害を起こす可能性もある。
(写真:Guillaume de Germain / Unsplash)
さまざまな形をとる失語症は、症状によりいくつかのタイプに分類される:運動系失語(言葉をある程度まで理解できるが話せない)、感覚性失語(よく理解できず、正しい表現ができない)、伝導失語(言葉を理解できるが言葉を誤る)、全失語(理解する、話す、読む、書くことができない)。
(写真:Dayan Rodio / Pexels)
失語症の人は意味をなさない発言をしたり、言葉を混同したり、相手の話を理解できなかったり、脈絡のない文章や意味の通じない文章を書いたりすることがある。
失語症は大脳の言語中枢の損傷により起こるとされる。その原因としては脳卒中、脳梗塞や脳内出血などの脳血管障害があるほか、感染症や腫瘍などが引き金になることもある。回復には2年以上かかることも多く、また回復しても後遺症が残ることもある。
(写真:National Cancer Institute / Unsplash)
失語症の治療には専門家によるリハビリテーションが必要があり、時にはほぼゼロから言葉の読み書きや理解力を回復しなければならないこともある。
(写真:Fa Barboza / Unsplash)
こうした言語リハビリテーションを担当するのが言語聴覚士だ。さまざまな言語エクササイズに加え、オンラインエクササイズや日常的な作業でリハビリプロセスの迅速化を図ることもある。
(写真:Annie Spratt / Unsplash)
もちろん、重度の失語症にかかってしまい、機能が低下した言語能力を回復できない人もいる。
(写真:Nik Shuliahin / Unsplash)
今のところ、ルーマー・ウィリスは父ブルース・ウイリスの失語症のレベルについて詳細を明かしていない。
突然のハリウッドからの引退が惜しまれるブルース・ウィリス、原因となった失語症からの早期回復を願うばかりだ。