ビル・マーレイのセクハラ疑惑とその波紋
不適切行為を告発され、最新主演作『Being Mortal』が制作中断となっている米俳優のビル・マーレイ。「自分では面白いと思っていたが、そう受け取ってもらえなかった」と公の場でコメントした。
CNBCチャンネルのインタビューを受け、ビル・マーレイは「一緒に仕事をしていた女性と意見の相違があった」としたが、ことの詳細について述べることはなかった。
告発から1週間余り沈黙をしていたビル・マーレイは、インタビューで「世の中は私が私が子供だった頃とはまったく違っている」、「これまで面白いとされていたことが、そうではなくなってしまった」とした。
こうした反省についてビル・マーレイ本人は「今回起こったことを理解し、和解をする」ためだとし、本件の調査に伴い中断されているプロジェクトの再開を目指している。
サーチライト社が正式な声明を控えている一方、ビル・マーレイは「お互いに信頼をおくことができなければ一緒に仕事をする意味も、映画を制作する意味もない」としている。彼のいう信頼が何を意味するかは不明だが、一体何が起こったのかを振り返ってみよう。
それは突然の出来事だった。マーレイの「不適切な行為」により、映画『BeingMortal』の撮影が無期限に中断されてしまったのだ。
マーレイに対する苦情を受け、内部調査の開始という思い切った決断を下したサーチライト・ピクチャーズ。ただ、それ以上の詳細は明らかにしていない。
「状況を検討した結果、当面の間は制作活動を継続できないと判断しました」という声明が制作関係者に送られたのだ。
今後の制作活動およびビル・マーレイの出演の行方が検討される一方、『PageSix』誌は彼の「不適切な行動」について詳細を明らかにした。
『PageSix』誌によれば、複数の女性スタッフやキャストが、71歳の俳優による嫌がらせや合意のない身体的接触があったとしているという。
『PageSix』誌によれば、マーレイは「きわどい部分には触れなかったが、女性に腕をまわしたり、髪に触れたりポニーテールを引張ったりした」
「線引きが難しい問題です。みなビルに好意を持っており、彼のとった行動が違法であるとはいえません。とはいえ一部の女性はそれを不快に感じ、許容できる範囲を超えたと考えたのです」と制作関係者はメディアに語る。
同じ人物が『PageSix』誌に語ったところでは、ビル・マーレーは「女性が大好きで、女性の気を引くのも大好き。詩作や恋愛を楽しみ、ユーモア交じりに口説くことも多い。ただし一定の範囲を超えているならそれを明らかにすべきだろう」
『Being Mortal』に関する決定を待つ間、ビル・マーレイは沈黙を守っていたが、批判の高まりを受けてCNBCのインタビューを受けることにしたようだ。
実際、マーレイが沈黙を続ける間に彼に関するさまざまな噂や批判が広がった。米女優ルーシー・リューとの過去の出来事までが取り沙汰されたのだ。
ルーシー・リューが告白したのは、事件から20年以上経つ2021年7月の『ロサンゼルス・タイムズ』紙上だった。『チャーリーズ・エンジェル』(2000年)の撮影中、ビル・マーレイに断りなくあるシーンに変更が加えられ、彼が気分を害したことが事の発端となったという。
ルーシー・リューは、「(気分を害したビル・マーレイが)私に対し侮辱的な言葉を浴びせたので、自分を擁護するために立ち向かったのです。そのときのことは後悔していません」と語った。
今回、新作『Being Mortal』の制作は中断されたままだ。
監督、脚本、製作、出演を務めるアジズ・アンサリにとり、大物俳優セス・ローゲンやビル・マーレイが参加する本作は映画監督デビュー作となる。
本作は2023年頃の公開が予定されていたが、ビル・マーレイの件で公開が翌年に持ち込まれる可能性もある。すべては宙に浮いたままだ。
興味深いことに、『ヴァニティ・フェア』誌によればアジズ・アンサリも2018年にデートした女性からハラスメントで告発されている。
ただし、『ヴァニティ・フェア』によれば、それはハラスメントというよりはデートの失敗であり、両者合意の上での交際における気まずい瞬間にあたる、と告発者自身が証言しているという。
ビル・マーレイとは異なり、アジズ・アンサリは釈明をしたほか、Netflixで配信されている一人芝居『アジズ・アンサリの”今”をブッタ斬り!』で謝罪を述べている。また、「ビル・マーレイが批判されるような道をすすむとは思えない」としている。