フランスの人気歌手、アヤ・ナカムラってだれ?:パリ五輪開会式で注目を浴びる
今年の夏、パリで華やかに開催され、世界中の人々を魅了したオリンピック。開会式に登場し、セーヌ川にかかる橋の上でのパフォーマンスで注目を集めた、シンガーソングライターのアヤ・ナカムラをご存じだろうか。
「アヤ・ナカムラ」という名前は日本人を連想させるが、実は日本に縁もゆかりもない。そんな彼女の今までのキャリアや、気になる名前の由来について見ていこう。
アヤ・ナカムラは西アフリカのマリ出身で、現在は29歳。本名は「アヤ・ダニオコ」であり、「アヤ」はマリで一般的な名前だという。
少女時代に両親とパリ郊外に移住し、10代後半から自分の詞に曲をつけるようになったという。『VOGUE JAPAN』によると、アヤの母はグリオと呼ばれる部族の歴史を口頭で伝承する語り部であり、歌手になったのは母の影響を多く受けているそう。
「ナカムラ」という芸名は、大好きだったというアメリカのテレビドラマ『HEROES』で、日本人俳優マシ・オカが演じた超能力者「ヒロ・ナカムラ」にちなんでいるという。
とはいえ、ミュージックビデオには漢字やカタカナがちりばめられており、日本や日本のポップカルチャーを巧みに取り入れているアヤ・ナカムラ。
歌詞にはフランス語のほか、アラビア語やマリのバンバラ語が用いられており、アヤは『VOGUE JAPAN』の中で、「私の音楽には、アフリカの音やカリブの音が全部混ざっていて……私を取り囲むもの、私の身の回りで起こっていることそのものなんです」と語っている。
そんなアヤ・ナカムラの音楽はアフロ・ポップやアフロ・フュージョンなどと呼ばれている。フランスで人気のアフロ・トラップとも親和性が高く、現代的なアフリカンサウンドを取り入れたダンスミュージックは、今最も注目を浴びているジャンルと言える。
デビューのきっかけは、2014年に19歳という若さで公開した1stシングル「Karma」。SNSであっという間に話題となり、続く楽曲も自身のYouTubeチャンネルで何百万もの再生回数を記録した。
2018年にリリースしたセカンドアルバム「NAKAMURA」に収容された「Djadja」は世界中で大ヒットし、YouTubeのミュージッククリップの視聴回数は9.7億回を記録している。
「Djadja」に代表される、男性に媚びない歌詞も彼女の特長だ。その強いメッセージ性は賛同を得ることもあれば、赤裸々すぎると時にはバッシングを受けることも。しかし若き現代女性たちの代弁者として、大いに存在感を示してきた。
そんなアヤ・ナカムラだが、プライベートでは2児の母である。2016年に長女アイシャ、2022年には次女アヴァをもうけている。
世界にフランスの伝統や芸術、文化をアピールする場所でもあるオリンピックの開会式に、アフリカ系移民のアヤが出演することについて、実は社会を二分する論争が巻き起こっていた。
そんな批判をものともせず、パリ五輪開会式では60人の共和国親衛隊音楽隊と36人のフランス陸軍合唱団とともに、自身のヒット曲「Pookie」と「Djadja」をメドレーで披露。
また、アヤ・ナカムラの開会式ファッションにも注目が集まった。コルセットとショートパンツを組み合わせたディオールのアシンメトリードレスには、職人がひとつひとつ手作業で刺繍した金色のフェザーがあしらわれている。