トム・クルーズの体当たり撮影:命を落としかけたスタントシーンの数々
デビューから40年以上にわたり映画界をけん引し続けるスター俳優、トム・クルーズ。そのカリスマ性と魅力的な笑顔、高い才能や脚本に関するセンスを発揮してハリウッドの伝説となった。さらに、危険きわまりないアクションシーンをCGやスタントマンにたよらず自ら演じ切る姿勢も人気の理由のひとつといえるだろう。
クルーズは細部までこだわる完璧主義者であることに加え、自ら危険なアクションシーンをこなすことで有名だ。これまで多くの出演作で危険な演技に挑み、あやうく命を落としかけたこともある。今回はクルーズが危機一髪となった撮影現場を振り返ってみよう。
『トップガン』でマーヴェリック(トム・クルーズ)は墜落しかけた戦闘機から脱出に成功、しかし同乗していたグース(アンソニー・エドワーズ)は死んでしまう。この重要なシーンを撮影していたとき、海面にいたクルーズのパラシュートに水がたまりはじめ海中に引きずり込まれてしまった。
ダイバーが異常事態に気付き、クルーズを救い出して事なきをえたが、そうでなければハリウッドにおけるクルーズのキャリアは海に散っていたかもしれない。
本作でアメリカ最大のストックカーレースNASCARのドライバー、コール・トリックルを演じたクルーズ。ストックカーの操縦は身に付けたが、主要ルールである右折禁止は無視してしまった。
NASCARのドライバーで本作のコンサルタントでもあるHuy Sticklinが『USAトゥデイ』紙に語ったところによると、右折せず左折だけするよう警告されていたクルーズが、それを無視して大事故を起こしてしまった。幸い無傷で済んだが、10万ドルのカメラを壊してしまった。しかも、1990年当時の価格で10万ドルという高級機材だ。
人気シリーズの第1弾で、主役のイーサン・ハントを演じるクルーズが、レストランにおかれた巨大な水槽を爆破するシーンがある。クルーズはこのシーンでもスタントマンに頼らなかった。
水槽を爆破させたときのガラスの飛び散り方を予測することは不可能で、深刻な切り傷を負ったかもしれない。何千リットルもの水がクルーズを襲い、溺れてしまうケースもあっただろう。しかし、ロサンゼルスで行われた映画のプレミアで本人が明かしたとおり、最終的に足首を痛めただけですんだ。
エドワード・ズウィック監督の映画『ラスト サムライ』の撮影では、わずか数ミリの差で命を落とすところだった。相手役の刀がクルーズの首をかすめ、出血多量に陥る可能性もあったのだ。
クルーズは武術の達人、真田広之と格闘シーンのリハーサルをしていた。ふたりは機械仕掛けの馬に乗っていたが、その一頭が思うように反応せずクルーズにぶつかってしまった。その時、真田の刀がクルーズの首をかすめたものの、幸いなことに紙一重で無事だった。
写真:Warner Bros.
マックス・ドローチャーを演じたジェイミー・フォックス。タクシーでアクロバットをするはずが、アクセルを踏みこんでしまった。そのままヴィンセント役だったクルーズのメルセデスに突っ込み、車をセットからはじき出してしまった。
写真:Dreamworks Productions, LLC
ジェイミー・フォックス本人が『トゥデイ』に語ったところによると、深く後悔すると同時に、誰もがフォックスでなくクルーズの元に駆け付けたことから、スターとはどんなものかを思い知ったという。ちなみに、2人とも無傷だった。
写真:Dreamworks Productions, LLC
またしても車で、共演者がクルーズを殺しかけた。よく知られたエピソードで、その共演者とはリタ・ヴラタスキを演じたエミリー・ブラントだ。コナン・オブライアンにこう語っている:「あやうくクルーズを死なせるところだったわ」
ブラントが車を運転するシーンで、後部座席に座っていたクルーズが最初は小声で、ついには大声で止まるよう怒鳴ったが、何の役にもたたずブラントは車を木に激突させてしまう。とはいえ、クルーズは対して気にかけなかったらしい。
写真:Warner Bros. Entertainment Inc.
一般的に人が水中で息を止めることができる時間は平均で30秒。クルーズは水中のシーンでもっと長く息を止めることができるように、6分を目標にトレーニングをした。
だがしかし、クルーズはトレーニング中に何度か失神し、そのうちの何回かは最悪の事態になった可能性もあるという。
写真:Paramount Pictures
イーサン・ハント役のクルーズがオーガスト・ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)を追って、ビルからビルへと屋上を駆け抜ける伝説的なシーンがある。ビルからビルへとジャンプする時、クルーズは着地に失敗し足首を骨折してしまったと『グラハム・ノートン・ショー』で告白した。
「足首が折れたことはすぐにわかりましたが、もう二度とやりたくなかったので、そのまま立ち上がって撮影を続けました。」クルーズは足首を骨折したままテイクを撮り続け、撮影終了とともに病院へ行ったのだ。
クルーズは本作で世界一高いビル、ブルジュ・ハリファの130階からぶら下がり、風にあおられ何度も建物に押し付けられた。そして最後は懸垂下降で自力で降りる羽目になったという。