デンマークのクリスチャン王子、いじめ問題が発覚したエリート寄宿学校をはなれる
デンマークのクリスチャン・ヴァルデマー・アンリ・ジョン王子は昨年18歳になった。父に次いで王位継承権の第2位にあり、次世代を担うヨーロッパ王族の仲間入りを果たしつつある王子だが、彼はいったいどういう人物なのだろう?
クリスチャン王子は2005年10月15日にコペンハーゲン大学病院で生まれた。デンマーク新国王フレデリク10世夫妻の長子である。退位したデンマーク女王、マルグレーテ2世は祖母にあたる。
王子には妹イサベラ王女(2007年4月21日生まれ)と、双子の弟妹のヴィンセント王子とヨセフィーネ王女(2011年1月8日)がいる。
クリスチャン王子はコペンハーゲン郊外のハールスホルム寄宿学校に通っていた。この学校は「貴族、その他の信頼に足る人物の子息」のための寄宿学校として1565年に開校したものであるが、つい最近ショッキングな事実が明らかになり、王子は学校から呼び戻されることになった。
寄宿学校の暗い内幕をデンマークのメディアも大きく取り上げている。いじめや性的暴行をはじめ、その他の名もなき暴力が学園の風土になっていたと50人以上の元生徒が証言したのである。
クリスチャン王子の両親である、国王フレデリクと王妃メアリーは王室のウェブサイトにて短い声明を発表し、ハールスホルム寄宿学校をめぐる以上のような報道を受けて深く動揺していると述べた。
声明はさらに、「当学校に子どもを通わせている保護者として、学園は今後、その到底受け入れられない現状を正すためにしかるべき行動をとることを期待します」と続いている。
2022年6月、デンマーク王室はクリスチャン王子がその名門寄宿学校を去ることに決めた。「私たち家族にとってそう簡単ではない決断でしたが、事態を総合的に鑑み、また王太子夫妻という特別な立場を考慮にいれて、次のように決定しました。すなわち、クリスチャン王子はハールスホルム寄宿学校を退学し、イサベラ王女は夏休み明けに同校の9年生として入学しません」
クリスチャン王子は「Ordup」ギムナジウムに転校することになった。こちらの学校は伝統では劣るかわりに、生徒一人一人の好奇心を伸ばし、誰かと力を合わせることや他者を尊重することを重んじる進歩的な教育メソッドを採用している。国王夫妻によると、この決断は子どもたちと話し合ってなされたという。
この決断はおそらく正解だったのだろう。2023年10月、デンマークの宮殿で催されたロイヤル・ガラで、クリスチャン王子は花開いていた。それは王子の18歳の誕生日を祝う場でもあり、王子は他者への思いやりと敬意にあふれる心を見せていたのだ。
祝賀会のスピーチをクリスチャン王子は次のような言葉で結んでいる。「僕は自分の道を見つけなくてはなりません。その道が見覚えのある場所に続いているとしても。僕は世界のたくさんの場所にルーツをもっており、旅を楽しんでもいます。けれど、帰る場所はここ以外にはありません。僕はこの国を本当に愛しているんです」
ロイヤル・ガラのゲスト名簿を覗いてみれば、ヨーロッパ各国の未来の王たちがそれ以上はまず望むべくもないほどずらりと並んでいるのがわかるだろう。スウェーデンのエステル王女、ノルウェーのイングリッド・アレクサンドラ王女、オランダのアマリア王女、ベルギーのエリザベート王女、そしてデンマークのクリスチャン王子である。
デンマーク王室はInstagramの公式アカウントで、「クリスチャン王子殿下の18歳の誕生日を記念して、新しい切手が発行される」と告知した。デンマークでは18歳が成人年齢なのである。
王子はまもなく中等教育を修了する予定で、その後の進路の選択について国民の関心が集まっている。王子はデンマーク軍で訓練を受けるのだろうか? あるいは大学に進学するのだろうか?
王室はInstagramをつうじて次のような声明を発表した。「クリスチャン王子が来年まず第一に優先するのは、後期中等教育を修了することです。ひきつづき王室はクリスチャン王子の今後の教育課程について、時期が来ればお伝えいたします」
ところでクリスチャン王子は、成人後に毎年支給される王室手当をしばらくは受け取らず、21歳を迎えたときに再びこのことについて考えると発表している。それまでは自身の学業に専念しようという心づもりだ。いずれは「フルタイム」の王族として公務に携わるであろうクリスチャン王子だが、いざそのときに立派な仕事を果たすためにも、今は自分の時間を自己成長に使おうというのだろう。