人気俳優ダニー・マスターソンに実刑判決:性的暴行で懲役30年
アメリカの人気TVドラマ『ザット'70sショー』で知られる俳優ダニー・マスターソンが、若い女性2人に性的暴行を加えた罪で懲役30年の実刑判決を受けた。今回はマスターソンのきらびやかなキャリアと転落までの過程を追っていこう。
マスターソンは4歳でモデルとしてショービズの世界に足を踏み入れた。後に音楽と演技にも力を入れはじめ、16歳になる頃には多くのTVコマーシャルに出演するようになっていた。映画デビューは『ベートーヴェン2』での小さな役だが、シビル・シェパードとクリスティーン・バランスキー主演のTVシリーズ『Cybill』では2シーズンに渡って出演した。
マスターソンは『ザット'70sショー』でスティーブン・ハイドを演じた。主人公一家のもとに居候する、タフでユーモラスな青年役だ。
『ザット'70sショー』は、1970年代の十代の若者たちが大人へと成長していく様子を8シーズンにわたって描いており、2006年5月に最終回が放送された。
また、2012年から2014年にかけて3シーズン放送された『メン・アット・ワーク』では主役を務めている。
さらに、2016年から2018年にかけて放送されたNetflixの人気シリーズ『The Ranch ザ・ランチ』では、アシュトン・カッチャー、サム・エリオット、エリシャ・カスバートなどと共演した。
ところが2017年3月、3人の女性が2000年代初頭にマスターソンから性的暴行を受けたとして被害届を提出する。その訴えを受け、ロサンゼルス警察が捜査を開始。マスターソンを含め、被害者女性3人も新興宗教サイエントロジーの信者だった。
2017年12月、新たに他の女性が同様の被害を訴えたことで、マスターソンは『The Ranch ザ・ランチ』シーズン3の撮影途中でNetflixから契約を打切られることとなった。その後まもなく所属事務所からも解雇されてしまった。
マスターソンは第2世代のサイエントロジー信者で、教会と密接な関係があったことで知られている。2019年、被害者たちは、マスターソンを性的暴行で訴えた後、教会関係者による脅迫やストーカー行為があったとし、マスターソンに加えてサイエントロジーを相手取る訴訟も起こした。
2020年6月、マスターソンは、2001年、2003年初頭、2003年末に3人の女性に性的暴行を加えたとし正式に起訴された。2021年1月、マスターソンはすべての容疑を否認、無罪を訴えた。
2022年11月、マスターソンは3件の性的暴行の罪で裁判にかけられた。陪審員の意見が対立し無効審理となるが、2023年に再審理が行われることになった。
2023年、『ザット'70sショー』の続編として『ザット'90s ショー』が放送されることになった。新作の舞台は1995年で、前シリーズでお馴染みのキャラクターと場所が登場する。唯一出演を依頼されなかったのがマスターソンだ。ショービズ界が、今後もマスターソンと距離を置き続けるであろうことがうかがえた。
画像:Topher Grace / Instagram
2023年5月、再審が行われ3件の罪状のうち2件で有罪となった。そして2023年9月7日、女性2人に性的暴行を加えた罪でマスターソンに懲役30年から終身刑の判決が言い渡される。再審で被害者たちは、意見陳述する機会を得た。
判決後、マスターソンは拘留されているが、メディアの取材に応じた弁護士のショーン・ホーリーは、マスターソンが有罪判決を不服とし控訴する予定であることを明らかにした。
マスターソンはカリフォルニア州の刑務所に移送され、終身刑に服することになる。収監後は精神的に不安定になる恐れがあるため、刑務所で24時間監視されるという。
マスターソンの友人で、以前テレビで共演したことのあるミラ・クニスとアシュトン・カッチャーが、裁判所にマスターソンを擁護する書類を提出したことで非難を浴びた。その内容が明るみに出ると火に油を注ぐ結果に。二人は、自分たちの行為が性的暴行事件の被害者に苦痛を与えた可能性を認める謝罪声明を動画で発表した。
裁判でマスターソンを支えた妻ビジュー・フィリップスと夫婦の娘は、この判決を受け止めなくてはならないだろう。被害者たちは今も、マスターソンが20年前に植え付けたトラウマに苛まれているのだから。