ジョコビッチに続く、ワクチン接種拒否で選手生命が危ういアスリートたち
パンデミックから2年、ワクチン未接種のアスリートはどんどん少なくなってきている。しかし、有名選手がワクチン接種を拒んで世界的なニュースになることもある。なかでも話題になったのは、ATP世界ランキング一位のジョコビッチのケースだろう。このセルビア人テニスプレーヤーはオーストラリア当局に入国を拒否され、今年最初のグランドスラムでプレーすることができなくなってしまったのだ。
ノレ(ジョコビッチの愛称)にとって悩みの種は、この措置が繰り返される恐れがあるということだ。5月にパリで開幕する全仏オープンも、ワクチン未接種のプレーヤーの参加を認めないことをすでに発表しているのだ。
NBAプレーヤーの96%以上がワクチン接種を受けるなか、ブルックリン・ネッツの大黒柱であり、リーグを代表するスター選手でもあるカイリー・アービングはワクチン接種拒否の意思を曲げようとしない。これによって、彼は数か月間チームに参加できなくなっていた。
しかし、チームに休場者が続出したためアーヴィングは1月6日にプレーを再開した。ただし、ニューヨーク州の条例により、ホームでの試合に参加することはできない。
数か月間、ワクチン接種を拒否し続けていたバイエルンの有望選手、ヨシュア・キミッヒ。 しかし、2021年11月に新型コロナウイルスに感染したため、FCバイエルンは彼をチームから隔離、給与の支払いも停止した。
ミッドフィールダーは肺に後遺症が残ったものの、以前のようにプレーできるとのことだ。もちろん、年末にワクチン接種を済ませ、復帰に備えている。
グリーンベイ・パッカーズのスター選手、アーロン・ロジャースはワクチンの成分にアレルギーがあると主張して、代替の免疫治療を受けることを選んだ。しかし、NFLはこれを認めず、彼をワクチン未接種であると見なした。
2021年11月、ロジャースが新型コロナウイルスに感染すると、チームは彼に30万ドルの罰金を科した。その上、Prevea Health社の後援まで失うはめに。
ゴールデンステート・ウォリアーズに所属するアンドリュー・ウィギンズはワクチン接種に反対の立場だった。ところが、シーズン開幕数日前に『サンフランシスコ・クロニクル』紙が、ワクチン接種の進むNBAでいまだに拒否を続けている数少ない選手の一人として彼の名を暴露。
これを受け、所属チームはウィギンズがワクチン接種を受けない限りゲームには出場させないと明言した。しかし、彼にとって一試合出場を逃すのは35万ドルの損失を意味する。結局、やむなくワクチン接種を受け入れたウィギンズはSNSでこうコメントしている:「ワクチン接種かプレー復帰をあきらめるか、二つに一つだった」
史上最高のサーファーで11回の優勝経験を誇るケリー・スレーターだが、彼は反ワクチンの姿勢を隠したことはない。そして、ジョコビッチの件が明るみに出ると、まっさきにSNSにコメントを発表して擁護に回った。
「コロナウイルスに罹るのが怖いのか?それとも、ワクチン接種させられてイライラしているのかい?この件に関しては洗脳といがみ合いがはびこり過ぎている」スレーターは自身のインスタグラムで、ジョコビッチの件を伝える『ニューヨーク・タイムズ』の投稿に反駁してこうコメントした。
メディアの注目は前出のアービングに集まっていたため、ワシントン・ウィザーズのスター選手、ブラッドリー・ビールは大きな話題になるのを免れていた。とはいえ、彼もワクチン未接種のNBA選手として目立つ存在だった。
しかし、ウィザーズのシューティングガードは、新型コロナウイルス陽性でオリンピック出場を逃したことで反ワクチンの立場を転換。2021年もあとわずかというところでワクチン接種を受けた。
ヴォルフスブルクのオランダ人フォワード、ボウト・ベグホルストはワクチン接種を公然と拒否している。しかし、ブンデスリーガは選手に接種を強制していないため、ドイツでのプレーに支障は出ていない。
彼はドイツの大手放送局ZDFのインタビューに対し「検査が必要なほど致死的な病気に、義務付けが必要なほど安全なワクチンだって?そんなものあるわけない」とコメントした。
テニーズ・サンドグレンもまた、ワクチン接種拒否の立場上、全豪オープン欠場を早々に受け入れていた。
ジョコビッチの件については、皮肉っぽいツイートで彼を擁護する立場を示したサンドグレン。いわく「ノレはワクチン接種歴を公表すべきだね。病歴も、口座番号も、先週の朝食も、全部公表すればみんな満足するんじゃないか?」
アトレティコ・マドリードに所属するレナン・ロディはワクチン接種拒否がもとで、ブラジル代表の選抜から漏れてしまった。チッチ監督いわく「彼が選考から漏れたのはワクチン接種を受けていなかったためだ」
チッチ監督は「ワクチン接種は社会的責任」であるという立場をとっており、2022年に開催されるカタールW杯の予選ラウンドでも厳格に適用したのだった。
ダブルスで活躍するフランスのテニスプレーヤー、ピーエル=ユーグ・エルベールもワクチン接種拒否を選択。ただし、ジョコビッチとは違って、全豪オープン参加を最初から放棄していた。
そして、France infoのインタビューに対しては、「ワクチン接種反対というわけではないけれど、踏ん切りがつかない。決断を尊重してほしい」とコメントした。
チャンピオンズ・リーグで優勝したチェルシーのキープレーヤー、エンゴロ・カンテ(MF)は、イングリッシュ・フットボールリーグによるとプレミアリーグで25%を占めるワクチン未接種選手の一人だという。
ワクチン未接種のため今シーズンは大事な試合に出場できなかったエンゴロ・カンテだが、トーマス・トゥヘル監督は選手が望まない限り接種の強制はしないと明言している。
キックボクシング世界チャンピオンを3度制覇したシニストラ。断固ワクチン接種に反対していたが、2021年11月26日、呼吸器系の疾患で入院することに。ところが1ヶ月後、彼は自主退院してしまったのだ。
リング上では「アンダーテイカー」の異名を取った彼だが、自主退院の2日後に自宅で逝去。享年41歳。退院の際には「ちっぽけなウイルスにやられてたまるか」と豪語していたが、ウイルスに打ち勝つことはできなかった。