クエンティン・タランティーノ作品にまつわるトリビア:いくつ知ってた?
世界的に有名な監督となったクエンティン・タランティーノ。独特なストーリーテリングやブラックなユーモアが人気を博すタランティーノ監督の作品にまつわる、意外なトリビアをチェックしてみよう。
『キル・ビル Vol.1』(2003)の撮影は主演のユマ・サーマンが妊娠したため大幅に遅らされている。主役の「ザ・ブライド」はユマ・サーマンだけをイメージした当て書きだったため、監督はキャストの変更をしなかったのだ。
タランティーノ監督にとって、映画に使う音楽は非常に重要な意味を持つ。『レザボア・ドッグス』(1992)撮影時にはスティーラーズ・ホイールの「スタック・イン・ザ・ミドル・ウィズ・ユー」を使うことにこだわって、音楽関連の予算1万3,000ドルをすべてこの曲のためだけに費やした。だが、映画には他の曲も使われている。その予算はどこから出たのだろうか? BBCによると、サウンドトラックのアルバム製作を企画し、レーベルから前払金をもらうことでまかなったのだという。
じつは、『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)の主演は当初ウィル・スミスを起用する予定だった。だが、ウィル・スミス側から断られたため、プロデューサーは他の候補を探した。デンゼル・ワシントンやイドリス・エルバ、タイリース・ギブソン、テレンス・ハワード、クリス・タッカー、マイケル・K・ウィリアムズなどが検討されたが、結局はジェイミー・フォックスに落ち着いたのはご存知の通り。
ユマ・サーマンの胸にアドレナリン注射をする場面は『パルプ・フィクション』(1994)の中でももっとも緊張感に満ちたシーンだが、じつはこのシーン、逆回しで撮られている。つまり、ヴィンセント(ジョン・トラヴォルタ)がミア(ユマ・サーマン)に注射を刺しているように見えたのは、現実では逆に抜いていたのだ。そうして撮っておいて、編集過程で逆回しにして映画本編に利用された。
画像:Miramax
『キル・ビル Vol.1』に登場した「プッシー・ワゴン」のペイントが印象的な黄色い車はなんと監督の私物。自分で運転することもあれば、他の人に貸すこともある。レディ・ガガがビヨンセをフィーチャーした「Telephone」(2010)のMVにも登場しており、2人が運転する様子をみることができる。
タランティーノ監督の映画はたいてい時系列がばらばらにされている。話が前後して核心が徐々に明らかになることでサスペンスが作り出されるのだ。監督のもっとも顕著な特徴のひとつだろう。
もうひとつ欠かすことができない特徴が、「ファック」などの汚い言葉の乱発だ。映画情報サイト「Indiewire」によると、『パルプ・フィクション』ではなんと431回もその手の言葉が放たれているらしい。
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『キル・ビル』でユマ・サーマン演じるザ・ブライドが身につけていたアイコニックな衣装、黄色に黒のストライプが入ったジャージは『死亡遊戯』(1979)のブルース・リーへのオマージュだ。
『レザボア・ドッグス』でミスター・ブルーを演じたエドワード・バンカーはかつて実際に収監されていたことがある。その罪状は窃盗や暴行、看守への刺突、銀行強盗と、まさに役柄にうってつけの経歴だった。
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『Uncut』誌でのインタビューで、タランティーノ監督は『デス・プルーフ in グラインドハウス』という題名はショーン・ペンとバーで飲んでいた時に思いついたと語っている。タランティーノ監督が新しい車を買おうと思っていると話したところ、ショーン・ペンは車を「デス・プルーフ(耐死仕様)」にするためにスタントマンを雇ったらどうかと言ったというのだ。その瞬間から、この言葉が監督の頭から離れなくなったらしい。
『キル・ビル』シリーズには大量の出血シーンが存在する。同作のメイキャップを担当したクリストファー・アラン・ネルソンによると、撮影には450ガロン(約2000リットル)の血糊が必要だったという。『タイム』誌上で語っている。
画像:Miramax
『キル・ビル』でのクレイジー88との戦闘シーンはとりわけ血の描写が多い。このシーンは日本やヨーロッパの一部ではフルカラーで上映されたが、アメリカでは年齢制限を避けるために白黒にして公開された。
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『ヘイトフル・エイト』(2015)の脚本が流出するという事件があって以来、タランティーノ監督は脚本をかなり厳重に管理するようになった。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)の撮影時には脚本を1冊しか作っておらず、ブラッド・ピットとレオナルド・ディカプリオだけは脚本を読むことを許可されたものの、監督の家までやってきて交代で読まねばならなかったのだという。『エスクァイア』誌で監督が語っている。
Image: Sony Pictures
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の撮影に際して、シャロン・テートを演じたマーゴット・ロビーはシャロンの妹が実際に所有していたアクセサリーを身につけている。ロビーは『Today』誌で、シャロン・テートとのつながりを感じられたと語っている。
『キル・ビル』でザ・ブライドがヴァニータ・グリーンとコーヒーを飲むシーンで、ザ・ブライドは「ミルクと砂糖入りで」と言うが、これはじつは『パルプ・フィクション』でザ・ウルフが言ったのとまったくおなじセリフ。ただの偶然と思われるかもしれないが、飲んだコップまで一緒だと言えばどうだろうか。
画像:Miramax
小道具を介したつながりは他にもある。『キル・ビル Vol.2』でザ・ブライドが履いていたブーツや、生き埋めにされた時に使っていたナイフはどちらも『レザボア・ドッグス』でマイケル・マドセンが使っていたものだ。
画像:『レザボア・ドッグス』 Miramax
『パルプ・フィクション』でジョン・トラヴォルタが運転していた65年式の赤いシボレーはまたしても監督の私物。しかも、なんとその車は映画の撮影中に盗まれてしまったのだが、17年後に発見されて戻ってきたという。
『イングロリアス・バスターズ』(2009)の原題は「Inglourious Basterds」なのだが、ふつう「イングロリアス」は「Inglorious」と綴る。この表記の理由について問われた監督は『ガーディアン』紙上でこう語っている:「はっきり言っておこう。説明するつもりはない。なにか芸術的な意図のあることをやったあとにあれはこういう意味で……なんて説明するのは野暮の極みだし、せっかくやったことを台無しにしてしまう」
『キル・ビル』の殺陣を担当したのは香港の映画監督ユエン・ウーピンだ。あのジャッキー・チェンにも武術指導を行ったユエン・シャオティエンを父に持ち、自身も多くの映画にかかわったベテランだ。
『キル・ビル』の撮影中、ユマ・サーマンは車の運転を強要され、事故を起こして負傷していた。このことは長い間隠蔽されていたのだが、後年、タランティーノ監督の方から当時の映像が渡された。ユマ・サーマンはそれをインスタグラムで公開し、ハーヴェイ・ワインスタインなど3人のプロデューサーが証拠の隠滅などの隠蔽工作に責任があると非難している。
画像:Miramax
『レザボア・ドッグス』の有名なシーンでマイケル・マドセン演じるミスター・ブロンドがみせるダンスはほとんどぶっつけ本番で行われたものだという。マドセンいわく、どうすればいいかわからなくて途方に暮れていたためリハーサルもなかったのだという。映画情報サイト「CinemaBlend」で語っている。