「ユーロビジョン」でウクライナ代表が優勝!:カールシュ・オーケストラ
「ユーロビジョン」2022で、ウクライナ出身のフォーク・ラップグループ「カールシュ・オーケストラ」が優勝。ロシアによるウクライナ侵攻を世界中が固唾をのんで見守る中、大活躍で母国を勇気づけた。
「あらゆる道がダメになっても、私はかならず帰路を見つけるだろう」これはユーロビジョンのウクライナ代表、カールシュ・オーケストラの曲「ステファニア」の一節だが、現在も続くウクライナ侵攻で新たな意味を帯びることとなった。
ロシア軍による侵攻以前に書かれたこの歌詞は「カールシュ・オーケストラ」のリーダー、オレフ・プシュークが母親に捧げたものだった。しかし、この曲は現在のウクライナにおいて、侵攻を受ける母国を讃える歌となったのだ。
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今回は、2019年に結成されたこのヒップホップグループがウクライナのシンボルになり、ユーロビジョン・ソング・コンテスト2022で大人気を博すようなった経緯を見てゆこう。そもそも、カールシュ・オーケストラとは何者なのだろう?
写真:Instagram-@ kalush.official
ユーロビジョンがスタートして以来、ずっと優勝候補リストのトップに立っていたウクライナ代表。
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カールシュ・オーケストラを結成したリーダー、オレフ・プシューク。トレードマークはピンクの帽子だ。
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2019年、オレフは故郷の街の名を冠したヒップホップグループ「カールシュ」を結成。
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ジェイ・Zやビースティ・ボーイズも所属する世界的レーベル「Def Jam Recordings」がカールシュと契約。たちまち国際的な成功を手にすることに。
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2021年2月、ファーストアルバム『Hotin』をリリース。5か月後にはラッパー「スコフカ」とのコラボで、セカンドアルバム『Yo-Yo』を発表した。
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精力的な活動を行っていた2021年、ロシアによるクリミア併合を受け、カールシュのメンバー4人は自らのルーツと向き合うプロジェクト「カールシュ・オーケストラ」を始動させた。
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新メンバー2人を迎えたカールシュ・オーケストラは、ヒップホップにウクライナのフォーク音楽の要素を組み合わせ、次世代に母国の文化を伝えることにしたのだ。
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ライブパフォーマンスに特化した新体制で「カールシュ・オーケストラ」はステージの主役となった。
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音楽的なルーツはもちろん、伝統を意識した衣装や装飾品も身にまとってステージに上がるカールシュ・オーケストラ。実際、ユーロビジョンでは100年以上前の衣装で登場した。
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ウクライナ語話者でなければ「ステファニア」の歌詞はわからない。しかし、心地よいリズムにリフレイン、フルートのメロディーは抜群にキャッチー。ユーロビジョンで人気を博すのも頷ける。
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ユーロビジョンで優勝候補トップを走る「カールシュ・オーケストラ」だが、実はウクライナ代表に落選している。
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ウクライナの場合、ユーロビジョン代表を選ぶコンテストは、2022年2月に放映された『Vidbir 2022』というテレビ番組だった。その結果、視聴者たちはカールシュ・オーケストラに投票したが、プロの審査員たちはミュージックコンテスト番組『The X Factor Ukraine』で注目を浴びたラッパー、アリーナ・パッシュを選出。
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審査員の選択が優先されたため、ユーロビジョンのウクライナ代表はアリーナ・パッシュに決定。これに怒ったオレフ・プシュークは組織を訴えると息巻いた。
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数日後、ウクライナ国民の大部分はクリミア訪問を禁じられているにもかかわらず、アリーナ・パッシュが不定期で同地を訪れていたことが発覚。これによってアリーナはユーロビジョン出場を辞退。「カールシュ・オーケストラ」が代わりに出場することになった。
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アリーナの出場辞退でユーロビジョン参加資格を手にしたカールシュ・オーケストラだが、混迷を極める情勢の中で出場準備も容易ではなかった。
メンバーはシングルのリリースとライブ開催を目的としたヨーロッパツアーを行うため、特別に出国許可を取得。さらに、数度にわたるリハーサルもバラバラに行わざるを得なかったという。
また、ユーロビジョンが終わり次第ウクライナに帰国し、オレフ・プシューク率いる20人あまりのボランティアグループを結成して、避難民の出国や医療物資の配布を援助するとしている。
しかし、困難に立ち向かう姿が感動を呼び、カールシュ・オーケストラは世界中のファンから支持を集めるようになった。
すでに2度のユーロビジョン優勝歴を持つウクライナ代表。最近では、2016年に歌手ジャマラがスターリン政権下のクリミア・タタール人追放をテーマとした「1944」でトップに立ったのが記憶に新しい。そして今回、カールシュ・オーケストラの優勝でウクライナは3度目のトロフィーを手にすることとなった。
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